40代からの睡眠不足が招く病気の危険性と対策
はじめまして、健康美容コンサルタント(薬剤師)の宮本(@holistic_ph_919)です。
多くの方は睡眠が取れているとご自身では感じていると思います。
しかし、寝ていれば十分とは言えないのが睡眠の難しいところでもあります。
この記事では、睡眠不足が招く病気の危険性と対策をお伝えする記事になっております。
この記事を読むことで、得られるメリットは以下になります。
ここで紹介した内容以外にも、皆さんが有益だった健康や美容の内容がございましたら、noteやX(Twitter)、Youtubeのコメント欄でご意見をいただけるとうれしいです。
健康・美容全般について知りたい方は、是非コメントやスキを押していただけると続編を書かせていただきます。
01|睡眠不足で起きる生活習慣病とその理由
睡眠の研究はまだ歴史が浅いところがあるため、これからますますいろんなことが解明されてくると思います。
そのため、ここでは今のところわかっている睡眠不足で起きる可能性が報告されている疾患についてお伝えしていきます。
このメカニズムを知ることで、皆さんの日々の生活習慣を改善する手助けになりますし、睡眠を変えることで悪い習慣が自然に減らせることも叶うはずです。
それでは睡眠不足に関連する疾患を見ていきましょう。
◼︎肥満
睡眠と肥満には密接な関係があることが報告されています。
2002年にサンディエゴ大学が行った約100万人を対象にした研究報告によれば、睡眠時間が短くなると食欲が亢進し、肥満傾向になることが分かっています。
短時間睡眠の人や10時間以上寝る女性は、肥満を表すBMIが高く、7〜8時間睡眠で最もBMIが低くなることが報告されています。
これは男性にも起こることですが、特に女性に顕著となりました。
BMIのみならず、皮下脂肪、内臓脂肪においても同様の結果が得られた研究もあります。
他にも、睡眠時間が短いほど、食欲が抑制するホルモンのレプチンが減り、食欲を亢進させるホルモンであるグレリンが増加することが報告されています。
このように短時間睡眠により、レプチンが減少しグレリンが増加することで食欲が増し、摂食量が増えて肥満につながる可能性が考えられます。
最近では、肥満は脳や全身の炎症でもあるという考え方も知られています。
炎症は腫れや痛みのイメージが強いですが、炎症に関連する物質による変化はさまざまです。
睡眠不足によって軽度の炎症が起こり、情報を伝えるサイトカインと呼ばれる物質が脂肪細胞から分泌されます。
これによって周囲の細胞に炎症が広がり、サイトカインの影響で摂食行動や代謝にも影響を与えて肥満につながるとされています。
◼︎糖尿病
睡眠不足によってレプチンとグレリンのホルモン分泌異常が生じ、過食や肥満から糖尿病などにつながると考えられています。
また、肥満で見られる炎症は、サイトカインの影響によって血糖値を下げるインスリンの機能が低下して、2型糖尿病などの原因になります。
肥満のリスクと同様に、短時間睡眠や長時間睡眠でも糖尿病のリスクが高まると言われており、7〜8時間睡眠で最もリスクが低い報告があります。
◼︎高血圧
高血圧のリスクは、短時間睡眠にのみ報告されています。
通常、睡眠時は副交感神経が活発になり、交感神経の活動は抑えられます。
しかし、短時間睡眠では交感神経が活動し、興奮した状態が続きます。
睡眠中には副交感神経によって血圧は低下しますが、短時間睡眠では交感神経活動が高い状態が続き、血圧低下機能が十分に働かずに高血圧になると考えられています。
また、通常は深いノンレム睡眠時の血圧が低下しますが、高血圧の人にこの低下が起きなかったり、より一層高血圧になったりするケースが見られます。
高血圧が進行すると、動脈の壁にコレステロールなどが沈着し血管が硬くなり、血液の通り道が狭くなってしまう動脈硬化といった病気になります。
これによって将来的に脳の血管が詰まる脳梗塞や脳出血といった脳血管疾患のほか、心臓に栄養を送る血管が詰まる心筋梗塞や狭心症といった心血管疾患のリスクを高めます。
◼︎脳血管疾患
睡眠不足によって高血圧のリスクが高まり、脳血管疾患の要因にもなります。
睡眠時間が5時間以下になると脳血管疾患の1つである脳卒中のリスクが高くなるという報告があります。
一方で睡眠時間が長すぎても脳卒中のリスクが高まるという研究結果も報告されています。
中国の研究では、睡眠時間が9時間以上の人たちは7〜8時間の人たちと比較して、脳卒中リスクが23%も高まることが報告されています。
さらに夜間の睡眠時間だけでなく、昼寝の時間が90分以上の人たちは30分未満の人たちと比較して、脳卒中リスクが25%高いという結果になりました。
睡眠関連呼吸障害も脳卒中のリスク因子として知られており、脳卒中患者の半数以上に睡眠関連呼吸障害があるとの報告があります。
例えば、寝ている間に息の通り道が詰まることが原因で起こる閉塞性睡眠時無呼吸症による脳卒中リスクは、高血圧や糖尿病よりも危険度が高いと言われています。
閉塞性睡眠時無呼吸症では、睡眠時に呼吸が止まることで一時的に低酸素状態となり、交感神経の活動が高まります。
この状態では、血管の内側を覆う細胞である内皮細胞に傷がついていき、高血圧のリスクが上昇するとともに、脳卒中の可能性を高める要因となります。
◼︎虚血性心疾患
日本の研究では、4時間以下の短時間睡眠の女性は、虚血性心疾患により死亡リスクが7時間睡眠の女性と比較して、2.32倍高いという結果が報告されています。
これは短時間睡眠によって、高血圧や脳血管疾患のリスクとなるのと同様に血管の動脈硬化が進行し血管がつまりやすくなることや、交感神経の活動が高まることで、心臓の筋肉に十分な血液が送れないことが原因と考えられます。
また、10時間以上の長時間睡眠では7時間睡眠と比較して、男性では1.56倍、女性では1.54倍リスクが高くなりました。
02|睡眠不足で起きる感染症とその理由
続いては、睡眠と感染症の関連性についてお伝えしていきます。
睡眠と免疫の関係を調べた有名な研究として、カルフォルニア大学サンフランシスコ校で行われた実験があります。
風邪ウイルスを健康な被験者の鼻に投与した実験で、164人の被験者の睡眠時間と風邪の発症率を調べました。
すると、睡眠時間が5時間未満の人たちは7時間以上の人に比べて、発症率がおおよそ3倍になることが分かりました。
さらに予防接種した際にも、睡眠時間が少ない場合には、ワクチンによる免疫獲得が満足にできずに、予防接種の効果が十分に発揮できないという報告もありました。
ウイルスが体に入り感染すると、体内の免疫細胞が働きサイトカインを放出します。
このとき、サイトカインは体温を上げ発熱させ、脳に対しては睡眠を促すようにはたらきます。
睡眠を増やし脳や体を休めることで、免疫機能が正常にはたらくように促していると考えられます。
睡眠不足だと、このプロセスが正常にはたらかず、感染症にかかるリスクを上げるだけでなく、回復も遅くさせてしまいます。
03|睡眠不足で起きる精神疾患とその理由
◼︎うつ
不眠と精神疾患、特にうつ病は双方向に影響を与えます。
うつ病の患者は不眠が症状の1つとして現れますが、逆に不眠はうつ病発症の危険性を4倍高めると言われ、不眠がうつ病の因子になる可能性があると考えられます。
20歳以上を対象としたある研究では
睡眠の質の悪さや入眠に時間がかかること
睡眠困難や睡眠薬の使用
日中の眠気などの不眠症状を自覚する人
これらではない人とを比較すると、不眠症状を自覚する人では2年後にうつ病を発症するリスクが高まっていました。
他にも睡眠時間が6時間以下の場合、睡眠時間が短くなるほどうつ症状が悪化するという報告もあります。
逆に睡眠時間が8時間以上でもうつ病発症のリスクが高まりました。
また、65歳以上で寝付きの悪い人は、3年後にうつ症状が生じる確率が非常に高くなるという報告もあります。
不眠があると、うつ病のみならず、不安神経症やアルコール依存、薬物依存のリスクが高くなることが、従来から広く知られています。
◼︎時差ボケによる影響
また、社会的時差ボケが発生すると、精神的健康を阻害する可能性も示唆されています。
社会的時差ボケとは、社会的な時間と個人の体の時間が合わないことです。
具体的な事例としては、海外渡航による時差ボケが挙げられます。
それ以外にもシフトワークでの勤務や平日と休日の睡眠時間の差によっても生じることがあります。
いずれも体内のリズムと活動を要求される時刻との間にずれが起こり、心身に悪影響を与えます。
◼︎情動が不安定になる
それ以外にも睡眠不足だと情動が不安定になるということも、研究によって明らかになっています。
5日間にわたり睡眠不足の状態をつくり出した研究では、脳において情動を司る扁桃体が、ネガティブな情動刺激に対して過剰反応を示すようになりました。
また幸福情動に対する反応に増強は見られませんでした。
ネガティブな刺激に対する過剰反応の要因として、感情が暴走しないようにブレーキをかける脳内の前帯状皮質のはたらきが弱まることが分かっています。
さらに青年期において、不調がある場合や睡眠時間が短い場合、自殺念慮が高いことが報告されています。
また、壮年期では睡眠障害・睡眠維持困難が自殺の危険性を高める因子ともなっています。
04|睡眠不足で起きる認知症とその理由
アミロイドβは脳の老廃物の一種でアルツハイマー型認知症の原因物質の1つです。
アミロイド前駆体は脳内で作られるタンパク質で、細胞の修復などの機能があります。
古いタンパク質は断片化され、排泄されます。
こういった老廃物は質の良い睡眠をとることによって排出処理されていますが、睡眠不足が続くとその処理が間に合わなくなり、脳内に蓄積されます。
アミロイド前駆体の断片の1つであるアミロイドβは特に凝集しやすく、脳内に凝集したアミロイドβは神経細胞に沈着し、神経細胞を殺してしまいます。
神経細胞は情報伝達を担う細胞であり、死んでしまった神経細胞が増え続けると、脳が萎縮して脳機能の低下が起こることによって、アルツハイマー型認知症となります。
40〜60代の男性を対象にした研究では、実験参加者に24時間起き続けてもらったところ、脳脊髄液にアミロイドβ42が増加する結果が確認されました。
アミロイドβ42は、アミロイドβの中でも水に溶けにくく、蓄積しやすいもので、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高めると考えられています。
また、血管性認知症という認知症は、脂質異常症や高血圧など生活習慣病が要因となって発症します。
睡眠不足は生活習慣病のリスクでもあるため、間接的に血管性認知症の発症リスクも上昇させると言えます。
不眠や睡眠不足の人の仮眠のとり方によっても、認知症の発症リスクが変化することが分かっています。
仮眠の理想は30分未満ですが、30分未満の仮眠をとる人は、仮眠をとらない人と比べて認知症の発症リスクが約1/6、30分から1時間未満の仮眠でも約2/5になるといわれています。
逆に1時間以上仮眠をとると、リスクが2倍に上がってしまいます。
仮眠も長く取ればいいというものではないことが分かります。
05|睡眠不足で起きる疾患から見えてくる睡眠対策
睡眠不足によって生じる疾患についてメカニズムも入れてお伝えさせていただきました。
睡眠不足によって生じることをまとめると
これかを解決するために、皆さんがまず最初にできる根本的な解決としてあげるのが、長時間労働を避けることです。
2022年に日本の長時間労働による影響を調べた研究報告では、長時間労働によって食生活の規則性が失われること(朝食欠食・夕食遅延)、睡眠時間が不足していくことが心身のストレス反応に影響していくことが報告されています。
これは、長時間労働が直接的な原因となって心身の不調を招くわけではありません。
仕事をされている方は、残業時間を減らす、そこまで残業がない方も夜更かしをしないようにする工夫をすることで、食事の習慣が固定され、睡眠時間も確保することができます。
また、この研究では睡眠時間と食生活との関連性はあるという報告もされているので、規則正しい食生活をするのも大切です。
まずはここが一番の根幹となります。
他にもいろんなセルフケアの内容がありますが、ここができていないのであれば、対処両方のようなものになってしまいます。
睡眠の質を高めるためのセルフケアの内容を知りたい方は、是非コメントやスキを押していただけると続編を書かせていただきます。
それでは、次の記事でよろしくお願いいたします。