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一体化するダンゴムシから考えたこと
今年はダンゴムシが大量発生している。そういった話は聞かないから、私の生活圏内だけなのかもしれない。
私の愛犬であったホクト(今年の秋に亡くなった)は、晩年シモがゆるくなり、夜に外に出してうんことおしっこをさせてあげなくてはならなかった。ホクトは、もよおすと必ず伝えてきたし、家の中では絶対にしたくない犬だったので、今年の暑い暑い熱帯夜の中、毎晩外に出した。
犬を飼ったのも犬を介護したのも初めてのことであったが、犬も高齢になると人と同じように背筋が丸くなるということを初めて知った。犬の場合背筋が伸びないと頭が垂れ下がったままになる。そうすると、前進したいのに上手く前進できず、前転しながら目的地に進んでいくという奇妙なことをしだした。さらに、排泄する際は、力を込めなくてはならない。そのため、力が入る瞬間が前転をするときであるのだろう。前転しながらうんこを飛ばしてくる。私は変な転び方をせぬよう、後ろから腰を支えて前転の補助をしながら、時にうんこを踏みながらホクトの介護に励んだ。
その時に、月明かりに照らされて、わらわらと地面を這っていたのが、ダンゴムシである。しかもものすごい数いた。もれなくホクトはダンゴムシが這う中を、ダンゴムシのように丸くなり前転しながら背中で潰していき、その身体にはダンゴムシの体液を浴び、私はホクトの排泄物を浴びていた。そして、ダンゴムシは地面に落下したホクトのうんこに群がっていた。
ダンゴムシとは、スタジオジブリ作品ではなんだか馴染み深い。「風の谷のナウシカ」では、放射能を浴びて巨大化したダンゴムシと思われる王蟲、「かりぐらしのアリエッティ」では、アリエッティが手のひらで丸くなったダンゴムシをボールのようにもてあそんで?いた。私自身も小さい頃は丸くなるのが面白く遊んでいたが、今となっては王蟲のようで気持ち悪い。
今年の晩夏から、実家の庭を畑にする試みに挑み出した。といっても、小さな庭で畑のスペースも狭い。だが、できるだけ広げていきたい。
実家の庭を掘り返すと建築会社が雑だったのか、鉄筋やレンガが出土してきてとても畑に向く土壌であるとはお世辞にもいえない。畑は土が命で土さえよければ放っておいても、命は育つ。だが、土が悪ければそれを良くするには時間がかかる。
だが、思い腰を上げて畑にしようと思ったきっかけは、ふと開いた吉田兼好の徒然草の一節であった。
陰陽師有宗入道、鎌倉より上りて、尋ねまうで来りしが、先づさし入りて、「この庭のいたづらに広きこと、あさましく、あるべからぬ事なり。道を知る者は、植うる事を努む。細道一つ残して、皆、畠に作り給へ」と諫め侍(はんべ)りき。まことに、少しの地もいたづらに置かんことは益(やく)なき事なり。食ふ物・薬種など植ゑ置くべし。(吉田兼好「徒然草」第二百二十四段 岩波文庫より)
要するに、通路一つ残して、庭は全部畑にせよ、と陰陽師が忠告した、というだけの話であるが、今年もまた九州に豪雨が来て、農産物が一時的に不足した。また、台風が来る際は、水が店頭から姿を消した。それもあって、すぐ近くで賄える食を畑が狭くて量はなくても作ろうと思った。
それから鍬で耕し、有機の土(山土と完熟発酵の腐葉土が混ざったもの)と堆肥を投入した。防虫ネットがなくても、元気に育つ畑にしたいので、あえてネットはつけていない。そうすると、ネキリムシや色んな虫に食われても、まだ土の状態がイマイチつかめなくても、元気に生き残って大きくなるものがあることに気が付いた。
それと同時に、今まで私が経験した畑と違う虫が生息して野菜の生育の阻害をしていることにある日気付いてしまった。ここからは、私見になるが、それが、ダンゴムシであった。
ダンゴムシは、何だか食い荒らされ方が、他と違う。ちょっと、説明は難しい。
撒いた種も掘り返されるし、ちょっと齧った葉っぱの上で休んだりもしている。いつの間にか、畝がダンゴムシの住処になってしまっていた。どうしてなのか分からないが、ダンゴムシは、枯れ葉よりも大根や菜の花等のアブラナ科の野菜を好むらしいということが、観察により分かった。
ある日驚いたのが、白菜の種が掘り返されていた。心の中で舌打ちしながら、種に土をかけようとしたら何だか種が変だった。よく見たら、まあるい種にまあるくなったダンゴムシがへばりついていた。ギャーッツと思った私は、無理矢理、種とダンゴムシを引き離そうとしたが、磁石のようにくっついて離れない。指でダンゴムシを少しずつひっぺがしながら、一つづつ剥がしていった。ダンゴムシは、無消毒の種まで食すようだ。
また、こんなこともあった。
大きく広がった大根の葉の下が何だかわしゃわしゃしていたので、移植ゴテでわさわさいじると、すごい量のダンゴムシが出てきた。慌てて空のペットボトルに捕獲してみると、100匹くらい捕獲できた。赤ちゃんと思われる薄く小さいダンゴムシもおり、その中に体長2㎝くらいの巨大なダンゴムシがいた。ダンゴムシの世界も蟻の世界と同じように女王ダンゴなるものが君臨しており、ダンゴムシの社会なるものがあるやも知れぬ。しかし、まだまだ小さい実験中の畑。大根一本でもたべられてはいかん。成長を見守らねば。
ダンゴムシは気持ち悪い。だが、私もいつか年を取って枯れ枝のようになって、まるく、まぁるくなって地面とダンゴムシみたいに一体になって、そして、私の命は次の生命に繋がっていく。それも悪くないな、と思った。
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