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課題はたくさんあるとしても幸せな家族
コロナ禍が続くと、家族仲が悪くなる気がする。最近は、ニュースで家族間の事件を頻繁に耳にするようになった。
なんだか、みんなイライラしているような気がする。
その私も持っているイライラを、いつか家族に思いっきりぶちこんで、壊してしまうのではないかと思うときがある。
家族仲が壊れるのは、コロナ禍のせいだろうか。それは、きっと違う。
コロナ禍が引き金になってマグマが噴出することが仮にあったとしても、元々の原因は地層のように積み重なった我慢のその奥底に、怒りが溜まってしまったからだと思う。
坂口安吾は『堕落論』で、人は徹底的に堕ち抜くには弱すぎると言った。
だけれども、『人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要なのだ。堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない。』と言う。
徹底的に堕ちきることのできない弱い私は、ある程度堕ちてどこかに引っ掛かっているところで、また、心を入れ替えたり、気付いたりしなくてはいけない。
そんなときは、家族愛がある人の話を読みたくなる。その家族に、解決すべき問題はたくさんあったとしても、だ。
岸田奈美さんの『もうあかんわ日記』を読んだ。
本書は、大動脈解離で車椅子の生活となった奈美さんのお母さんが感染症心内膜炎で入院さたため、家族の生活を支えるためご実家に戻られた奈美さんが、やらねばいけないことは分かってるから、とにかく話を聞いて笑い飛ばして欲しいと書かれた日記である。
痴呆症のおばあさん、ダウン症の弟さんとの間に起きた奇想天外な出来事の数々がコミカルに描かれていて、たまにホロリとする。
日記の最後は、お母さんが無事退院し回復されて弟さんと東京オリンピックの聖火リレーを走るところまでで終わっている。
こんなにいっぺんに色んな問題を抱えることは滅多にないとは思うけれど、それでも奈美さんご家族には、圧倒的に愛があって幸せなのだ。
多くの家族は、どんなに仲が良かったとしても、いずれドロドロとした問題を抱えるものだと思う。
だけど、奈美さんのところは、そんなことが起きそうにないように思える。
ユーモアがあって家族のために頑張るお母さんがいて、几帳面で純粋で愛のある可愛い弟さんと、脳が誤作動して家庭で色々な事件を起こしたとしても、その根底には孫への愛があるおばあさんがいて、こんなに圧倒的幸せな家族ってきっといない。
障がいとか、痴呆とかって言うけれど、でも、病名がついててもついてなくてもみんな人それぞれ特徴や個性があって、なに不自由なく障害物なく生きてる人なんて誰一人いやしない。
結局、ここって、色んな人が混じって、面白おかしい世界なんだ。
自分のために、じゃなく相手への愛情を持って、正しいか判断しながらやることやって、苦しければ誰かに助けてもらって、そうやって世界は周り続けるんだ。
そして勇気をもらった私は、堕ちて留まっていたところから、のそのそと這い上がり、また歩き出す。
この本を読み終わった翌朝、車の運転中にラジオからミスチルの『名もなき詩』が流れてきた。
なんだか、奈美さんとそのご家族の詩みたいで、またなんだか涙が出そうになった。
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