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秒殺の挑戦者〜パラ・パワーリフティングについて書きました〜
※2019.10.31 記事タイトルを若干変更し、オススメ書籍を追記しました。
2019年10月25日(金)
北海道新聞社1階DO-BOXで開催された、
こちらの催しに参加させていただきました。
題して、
どうしん☆スポーツサロン
「数秒にかける力自慢のアスリート」
~パラ・パワーリフティングの魅力~
知らなかったのですが第24回となっている通り、定期的に長く続いている催しのようで、2018年4月に開催された第15回以降の模様は「東京2020参画プログラム」のサイトでご覧いただけます。車いすフェンシング、パラスキーからeスポーツまで幅広い内容です。
(参考URLはこちら)
北海道新聞の広告欄で偶然見かけて行ってみようかな、と申し込んだのは、ただただシンプルに『パラ・パワーリフティングってどんなことするんだろ?」と思ったからなのですが、結果行ってみて正解でした…!
①知らなかった…!選手がカッコいい ←いつものですね笑
②知らなかった…!競技ルールがめっちゃ面白い
③いろいろ覚えた…!東京パラリンピックの予習にもなった
主にこの3つの点でとても有意義な1時間だったと感じましたので、見聞きしてきたものをシェアさせていただこうと思います。
少しでも興味を持っていただけると嬉しいです!
↑会場でいただいた資料より。
オリンピック競技は「ウェイトリフティング」、パラリンピック競技は「パワーリフティング」です。
ちなみに、オリンピック競技においてのパワーリフティングとウェイトリフティングは協会自体も異なり、パワーリフティングは国体競技、ウェイトリフティングは五輪競技なのだそうです。そして新聞表記で「重量挙げ」とされるのはウェイトリフティングなんですって。
登壇者のご紹介
★橘 典人(たちなばまさと)さん
ウェイトリフティング 96年アトランタオリンピック出場のオリンピアン
北海道士別市出身 札幌琴似工業高校教諭ウェイトリフティング部顧問
ウェイトリフティングを始める前はサッカープレイヤー、しかもゴールキーパーだっというキャプテン翼世代。イベント冒頭の自己紹介の際には教師という職業柄「立ったほうが笑(やりやすい)」とにこやかに立ち上がったのが印象的でした。札幌から世界を目指す選手を、という思いを抱いて学生を指導されているそうです。
日本代表ジャージがとてもお似合いのイケメンでした…!!(強調したい)
デモンストレーションでは40キロのバーベルを軽々と持ち上げ、スナッチ、ジャークという競技の相違点をレクチャーしてくださいました。
正直、私も持ち上げられたい。(正直)
生まれて初めて間近でリフティングを見て、まさかあんなにカッコいいものだとは思いませんでした。なんてことだ。男らしいを絵に描いたような所作の数々。
結果、見惚れてて写真を取り損ねました。(大惨事)
出来ることなら時間を巻き戻して写真を撮りまくりたいです…。
ちなみに左側の画像、スナッチでバーベルを持ち上げているのは橘さんの娘さんで、札幌琴似工業高校の教え子でもあるそうです。親娘リフター!
しかし橘さんがカッコいいのは見た目だけでは勿論ありません。
オリンピックを経験したオリンピアンとしてのメンタルなどについてものちほど文中でご紹介できたらと思います!
↑会場でいただいた資料より。
96年アトランタオリンピック出場時の北海道新聞夕刊記事。新聞社主催イベントならではのお土産です!ありがたいです!
★戸田 雄也(とだゆうや)さん
東京パラリンピックを目指す道庁勤務パラパワーリフター
北海道枝幸町出身
World Para Powerlifting Official World Rankings 2019
Men's Up to 59.00kg 19位
もう書かなくともおわかりかと思いますが戸田選手もカッコいいです。(というか私が足を運ぶのだからそこは絶対に間違いないポイントなのです)
戸田選手もパラ日本代表ジャージで登場されましたが、こちらはオリンピックのものよりスポンサーラベルが少ない印象を受けました。
また、イベント開始前には来場される様々な関係者や担当者の方と上述のおふたりが名刺交換をされるシーンが見られたりと、競技をされている以外のお姿も少し拝見できるので貴重な機会だったのではないかと思います。
さて、メインのおふたり以外にもじつは凄いかたが登壇されていたのですが…。
私の事前調査が甘く気が付いたのが帰宅後だったことが悔やまれます。
司会進行として登壇されていた、北海道新聞パラスポーツアドバイザー
永瀬 充さん
パラアイスホッケーのメダリストでした……(白目)。
事前情報が登壇されるおふたりのお名前だけだったというのもあるのですが、それにしてももっとよくよく調べてから向かうべきだったと猛省しています。
知っていれば突撃して少しお話しさせていただきたかった私はただのアイスホッケーファンです。
その永瀬さん曰く、パラ・パワーリフティングとは「どんなに4年間努力を重ねても3秒で決着がつく競技」。
3秒より早く決着がつく競技というと、他は高飛び込みなのだとか。(イメージしやすいですね)
永瀬さんが一言でパラ・パワーリフティングを言い表した『秒殺の競技』という言葉。これが今回のnoteタイトルのヒントにもなっています。
(ここでひどくどうでもいい余談ですが私が3秒というキーワードで思い出すのは3秒クッキング爆速餃子。ふと思い出して久しぶりに見ても面白かったです)
では話を戻して先に進みましょう!
パラ・パワーリフティングを詳しく知ってみよう
ざっくりまとめると、
①ベンチ台の上にあおむけになり、バーベルをラックから外して一度胸まで下げて静止させた後、肘が伸びるまでバーベルを左右バランスよく平行に押し上げ、再びラックに戻す一連の動作と挙げたバーベルの重さを2分以内で競い合う下肢障がい者を対象とするスポーツである。
②世界では再重量級の選手が約300kgを挙上するなど、障がい者が健常者の記録を上回ることが珍しくはない。
という感じでしょうか。
私が最も「面白いルールだな」と思ったのが、
試技の成功・失敗を判定する4段階、24項目の色別ルール。
中でも紫色の枠内に注目していただきたいのですが、
①【紫】スタート前の体の位置(7つのチェック)とあります。
え、始まる前から7つもルールがあるんですか!?と進行役の永瀬さんも驚いた。(私も驚いた)
具体的にどんなことかと言うと、
画像だと少しわかりにくいのですが、バーベルのシャフトの端からやや内側の部分にラインがあります。これを81センチラインと言うらしい。ルール上、このラインより手幅を広くしてはならないそうです。
ここからもしも人差し指が出てしまった状態で試技すると失敗と判定され赤ランプが灯り、さらにその失敗の理由として赤ランプの下に紫色のランプが灯る、という仕組み。
↓たとえばこんな感じです。(例では紫ではなく緑色のランプが灯っています)
競技の見た目上、「挙がったから成功!」と思われがちなのですがこうした理由で失敗判定となる場合もあり、観戦する側として覚えておくと良いルールです。
戸田選手の横に写っているデモンストレーション用に用意されたベンチプレス台は健常者用のもので、障がい者用の台はこれよりも幅の広いサイズのものを使うのですが、
この日はこれを使って実際にリフティングを見せていただけました!
持ち挙げる時の息遣いに注目しながら動画もご覧になってみてください!!
本日はこちらへ参加させていただきました。noteにまとめられるようにがんばります💦😭
— おかぴ (@E82450_2) October 25, 2019
まずは知ってもらおう。 pic.twitter.com/hWmuC1iuZu
試技3回のうち、挑戦できるのは同一重量もしくはそれよりも重い重量でのみ。途中で軽くはできません。
よってスタート重量、戦略が大事、と橘さんが仰っていました。(この辺はウェイトリフティングもパラ・パワーリフティングも共通しているんですね)
会場では今年7月にカザフスタンで行われた 2019 World Para Powerlifting Championships 65キロ級に出場した戸田選手の映像を見せていただきました。
上記URLから映像を見ていただけるとわかるのですが、入場した時点からすでに時計は動いていて、制限時間2分はやはりかなり短く感じます。
また、会場の雰囲気や派手な演出にも驚かされます。
会場には舞台や劇場が選択され、場内DJもあり想像以上にショーアップされているんですね。(このお話を聞きふと思い出すのはフェンシング。こちらも会場を劇場に設定して反響を呼んだことは記憶に新しいです)
実際の競技シーンを見るのは初めてだったので新鮮でしたし、自分なりのルーティンや体の位置どりがあったりという細かな部分を戸田選手自らの解説でお聞きできたのは貴重でした。
永瀬さんからの「この時(競技中)は何を考えているのですか?」という質問に対して戸田選手は、「試技1回目は確実に挙がるはずの重量からスタートしているのでミスなくしっかりと挙げることだけを意識している」と答えています。
カザフスタンの大会では試技1回目 、2回目共に赤ランプが灯り記録にならず。
3回の試技のうち、成功した試技の重量が記録となるため、戸田選手は試技3回目で133キロから135キロ にあえて重量を上げて挑戦することを選択します。
が、これも惜しくも赤ランプが灯り、結果この大会の記録は「失格」ということに。
選手の心情的にこの「失格」という言葉の響きが非常に痛いのだとか。
試技に3回挑み、しっかりとバーベルを持ち上げなおかつ24項目の厳しいルールをクリアすることが成功の条件なのですが、そこが理解されないと「カザフスタンまで行って何してるの?」と思われてしまうことも少なくないと言います。
確かにルールに明るくないと印象としてそうなってしまいがちかもしれませんね。
このお話しをお聞きして少しでもこの競技について知っていただく機会になれたら、と思い今このnoteを書いているわけです。
「競技会場以外でこの姿になるのは正直恥ずかしい」と仰っていた競技用の青いスーツ。
これにもキットチェックと呼ばれる規定違反有無のチェックがあるそうです。
反発力のある生地は使用不可など、簡単に言うと使っていい素材と悪い素材があるとのことでした。写真では着用されていませんが、手首を保護するリストバンドなどにも規定があります。
ドーピング問題の深刻化
ここで話題が転じドーピング問題についても少し触れられました。
なかなか興味深かったのでこれについても簡単にまとめておきます。
東京オリンピックでは従来10階級あったものが階級減となり7階級になることもあって、ドーピングしてでも、という国が出てきてもおかしくはない…それほどスタンダードで深刻な問題です。
現に3年前の大会で好成績を残した国(タイ)が、今年大会開催国でありながら不出場になっているなどの事例もあるらしく。
また、ドーピング剤を多量に長期間服用し続け、ちょうどそれが抜けるくらいの頃合いで大会本番に挑むという、国ぐるみ?と考えられても致し方ない現象を実際の現場で感じることもあるとのこと。 本当なら悪質極まりありません。(ただ、そのような疑わしさを他国に感じることがある、と率直に言える日本のアスリート界は素晴らしいと私は今回思いました)
ちょうど客席にはJADA(公益社団法人日本アンチ・ドーピング機構)の鈴木 靖さんがいらしており、最近はドーピング事実を隠蔽するための隠蔽剤を上回る検査器具が発達していることや、10年前の尿からも検査が可能なほど技術が進歩しているというお話も聞かせていただけました。
東京オリンピック・パラリンピックはこういったアンフェアな話題が出ることなく、クリーンでフェアな大会で終えられることを願うばかりです。
鈴木さんもオリンピアン、しかもゴールドメダリストでした…!(豪華)
オリンピアンとオリンピアンを目指す者のメンタリティ
約1時間を予定していた催しも残り時間わずかとなりました。
ここで現在オリンピック出場を目指している戸田選手からかつてオリンピアンだった橘さんへ「現役当時、週何回ほど練習していましたか?」という質問が。
戸田選手は競技の特性上、週3回の練習をし休息もとるという一方、橘さんはスナッチという体の反復を生かす競技の特性上、体が忘れないよう週6回の練習を続けていたそうです。
が、社会人になると働きながらの両立でどうしても練習量も1日1時間程度に落ちてしまい、大学生の頃のような練習はできないと考え、たとえば「30分しかできなかった…」を「30分もできた!」のように発想をプラスへ転換したと話していました。
他にも(これは冗談交じりでしたが笑)空気椅子の状態でパソコン入力をし隙間時間を利用した筋トレに励むなど笑。
時間管理、プラスの発想への転換にまで至るお話はアスリートではない私にとっても参考になる内容でした。
そんな聡明な橘さん、じつはアトランタオリンピックの前に確実と思われていたバルセロナオリンピック出場を逃した苦い経験があります。その経験の直後は、飛行機がバルセロナ空港へ降り立とうとするも離陸してしまい降りられない夢を何度も見るほどの苦境に。
そんな経験はやがて「死んでもいいと思うくらい努力した」と言わしめるほどの原動力となり、結果、見事出場を果たしたアトランタではもはや「死んでもいいとは思わなかった」と言います。
現在は生徒への指導、若手の育成に全力を注ぐ橘さんは、「共生社会(これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会)を謳う国(日本)であるにも関わらずパラリンピック選手の代表ユニフォームがバラバラだった時代がある」と話し、そんな事実や経験なども含め、東京オリンピック・パラリンピックは子どもたちへと絶好の「伝える機会」であると力強く語りました。
また、ご自身の出場したアトランタオリンピックで当時の大統領だったクリントン氏と握手をしたことは今も授業ネタとして話していると笑顔。
冒頭でご紹介した橘さんの記事内にも「オリンピックに行けたことは本当に大きな経験でしたし、一生の肩書ができました」とある通り、その努力の末手に入れた一生の肩書を通じて、これからの時代を担う世代へ経験やメッセージを伝え続けている姿。それがとても爽やかに印象に残った橘さんでした。
一方、東京パラリンピック出場を目指し世界ランキング8位以内を目指す戸田選手の戦いはこれからもまだまだ続いていきます。
「東京でオリンピックをやるなら出たい、と目指した4年半。何かを犠牲にしてつらいこともたくさんある。なんとか掴み取れるように頑張ります」
最後にそう力強く決意を語ってくださいました。
おふたりのお話から私が感じたのは、オリンピアンという肩書を持てたらその肩書によってやれることが増えたり今以上に実現できることがあるのかもしれない、という可能性の広がりです。
今、目の前のことに全力を注ぎながらもオリンピックのその向こう、オリンピックに出場したあとの世界をおふたりとも見ているのを感じました。
その日その日のトレーニングに打ちこみ、競技ではたった3秒で雌雄を決する勝負の世界に生きている。
でも、人生はトータルでもっともっと長いんですよね。
かつてのオリンピアンと、今それを目指すひと。そのどちらからも生き方に感銘を受けたひとときとなりました。
1時間と言わず、もう少しお話をお聞きしたかった。
ともあれ、有意義な時間と新しいことを知る機会に恵まれましたこと、この場を借りてお礼申し上げます。携わったすべての皆さま、本当にどうもありがとうございました!お疲れさまでした。
この日の模様は北海道新聞に掲載されています。
併せてご覧ください。
蛇足ですが、この日会場に用意されていたイベント連動型の広告とノベルティはNTT東日本の寄附付き電報台紙パンフレットと同広告デザインのウェットティッシュ。
イベントテーマとリンクしたアイテム紹介は違和感がなくて、フィット感が高かったです。
文中にもちらりと出てきた競技会場の件。
東京オリンピックのウェイトリフティング、パラリンピックのパワーリフティング会場は東京国際フォーラムです!どんな演出や雰囲気になるのか私は今から楽しみでしかたありません。
次回どうしん☆スポーツサロンは12月12日、
テーマはデフリンピック(4年に1度、世界規模で行われる聴覚障害者のための総合スポーツ競技大会)になるとのこと。
これ以降も2ヶ月に1度、様々なテーマで開催されるそうなので、ぜひ1度会場に足を運んでみてはいかがでしょうか?
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最後までお付き合いくださりありがとうございました。
個人の拙いメモをまとめたものなので表記や内容に誤りがある場合もあるかと思いますがご容赦ください。お気付きの点はご指摘いただけると助かります。
また、現在求職中のため収入がなく、レポートしたいイベントに向かうまでの交通費としてサポートなども正直申し上げて心からお待ちしております。
よろしくお願いいたします。でも難しいですよね…読みたいと思っていただけるクオリティにはほど遠い。けど自分としては愉しいのでこれからも続けてゆきます笑!
次回のレポートはこれまたスポーツ関連の予定です。
したっけまた!
2019.10.31 追記
図書館でたまたま見つけたこちらの本が、パラスポーツのルールを網羅していてとても良かったのでご紹介として載せておきます!オススメです。
▼清水書院さんHP