芦別の炭鉱の時代を鮮やかに描く一冊が新聞社学芸文化賞受賞|札幌・寿郎社
主要新聞社・通信社の文化部長で構成された選考委員会が選考する、出版梓会新聞社学芸文化賞。
11月1日付で、札幌の出版社である寿郎社がこの賞を受賞したとのことです!
審査対象には、寿郎社出版『芦別――炭鉱〈ヤマ〉とマチの社会史』が入っています。
『芦別――炭鉱〈ヤマ〉とマチの社会史』は、主に社会学者たちが中心となって編んだ大作で、芦別の炭鉱に関する研究がまとめられています。
芦別炭鉱の歴史をはじめ、当時の生活、炭鉱夫たちの労働、女性の社会活動や学校・子供について、炭鉱産業が衰えるまでの流れといった、今まで描かれてこなかった炭鉱の時代の諸相が綿密に記されています。
当時の記録を辿ることで、北の産業革命とも呼ばれる100年間における芦別をリアルに想像することができます。
本書、そして芦別の歴史を語るのに忘れてはならないのが、長谷山隆博さんです。
長谷山さんは芦別市出身で、父親が炭鉱の鉱員でした。
長谷山さんは、芦別の炭鉱に関する研究に力を注いだ功労者で、その豊富な知識から「芦別の生き字引」と呼ばれる存在でした。
芦別市の星の降る里百年記念館の開館準備に学芸員として携わり、2012年からは館長を務めました。
惜しくも今年2月に亡くなられましたが、彼が長年にわたり研究した成果が、本書に結集されたと言っても過言ではありません。
本書は全340ページに及ぶ大書で、貴重な写真資料も豊富に収録されています。
芦別や炭鉱、炭鉄港、北海道における近代産業に関心を向ける方にぜひ一読をおすすめしたい一冊です。
去年出版された本書ですが、今回の受賞であらためて注目が集まることが期待されています。
■今回おすすめした書籍
『芦別――炭鉱〈ヤマ〉とマチの社会史』
寿郎社 出版
嶋﨑尚子・西城戸誠・長谷山隆博 編著
2023年12月刊