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勇者の証

写真の昆布は、日本の最北端・礼文島香深の利尻昆布です。左側に大きな切れ込みがありますね。ウニが食べたにしてはサックリきれいに切れています。近づいてみてください。

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この昆布は鎌を使って刈りとられています。この切れ目はその時にうっかり切れたものです。鎌を使って漁をするのを鎌苅(かまがり)といいます。利尻・礼文に伝わる漁法ですが、主に竿を使う漁が行われているので、蒲刈をする漁師は少ないのです。
岩に根を張り付かせ海の中でゆらゆら波まかせにたゆとう昆布たちの中から肉厚でいい感じに育ったものを見極め、掴み、鎌で刈る。
いい昆布を採る効率はいいけれど、たくさん採る効率は良くないのです。この昆布を採った山本さんに、鎌を見せてもらいました。

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海の中でこの長い鎌を使うのは大変そうです。

こうして刈った昆布を家族みんなで天日で干します。
乾くまでに8時間。干しきれなければ、翌日また干します。

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それからいったん、むしろと重石にはさんで室(むろ)に置き、そこから別の室に移して熟成させます。

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この箱は長さを揃えて切るためのものです。隙間を埋めるように昆布を入れていきます。素人にはできない熟練の技なのです。

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鎌刈りで採り、天日で乾燥させるのは、昔ながらの味の昆布ができるということ。昔から都や寺で、珍重されてきた味なのかと思います。
でも、生産量は少ない。そのうえ以前は晴れた日に恵まれた北海道の夏は、このところ機嫌が悪くて雨が続いたり時化たり。ずっと南にいたはずの魚が北でとれるようになったり、自然は変わっていて、昆布の量は減っている。
それでも山本さんが鎌で刈るのは、海は今の自分たちのものじゃなくて未来のこどもたちのものだ。彼らに海を受け渡すという強い思いがあるから。
ウニをたくさん採ったら、小さいのは大きくなるまで待とう、と、海にリリースするひとでもあります。

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「昆布の仕事をしていると、昔の昆布漁師と話している気がする」と山本さんは言います。
楽しそうに昆布を触る山本さんのまわりには、昔の漁師たちがいて、色んなことを教えたり、笑ったりしているんじゃないかなぁ。

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製品になった昆布は、お手製の版画の袋に入っています。封を開けると、昆布の甘やかな香りがします。天日で干し、昆布が好きな環境で熟成された香りです。味はしっかりと強く、深みがあって料理の輪郭を際立たせます。


鎌の跡がある昆布。物語を知るとそれは、勇者の証に見えました。


購入はこちらで。

山本さんのHPはこちら。鎌刈の様子が見られます。


こちらは礼文島の昆布と鹿児島の本枯れ節をつなぐDashi Journey、レフェルヴェソンス生江シェフの短編映画の抜粋です。

1000年の時空を超える出汁の旅が心に響く作品。世界各地で上映されています。夏に礼文島で、生江シェフと礼文町のツアーで見られて本当に良かったと思っています。機会があれば、おすすめです。

この旅でご一緒したスープ作家・有賀薫さんの、礼文島の昆布漁や土地のことをレポートがこちら。すばらしいから読んでみてください。















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松田真枝
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