ノンフィクション履歴書
<プロローグ>
講談社文庫で「小説履歴書」というキャンペーンがありました。
今まで読んだ三つの小説を選んで、自分なりに紹介するというものです。
これを「ノンフィクション」の書物でやってみました。
1. 田中角栄研究 全記録
立花隆の1974年の著書。
客観的事実の積み重ねから問題の核心に迫る手法を学びました。
氏は諸々の媒体で、田中角栄に関わったことを悔やんでいると言っていましたが、本当は彼に魅了されていたのではないかと思っています。
本書は、社会人三年目の1983年に読みました。
2. 宇宙からの帰還
同じく立花隆の1983年の著書。
インタビューで物事の本質に迫る手法を学びました。
良いインタビューをするためには、好奇心とその分野の勉強が何よりも大切であることも学びました。
氏は「この人だったら話してもいい亅と思ってもらえるように準備しているとも書いていました。
また、宇宙飛行士が「今まで、誰かに話したかったことを聞いてくれた」と答えていたのが印象的でした。
帰還後、NASAの聴取にはない精神内面的な質問内容だったのでしょう。
前掲の「田中角栄研究 全記録」を読み、立花隆の著書に興味を持ち読んだ一冊でした。
本書は、今までで一番知的興奮を覚えた書物でした。
3. 一瞬の夏
沢木耕太郎の1983年の著書。
客観的な事実の取材でもなく、インタビューによる取材でもなく、物事の当事者としてのノンフィクションの手法は衝撃的でした。
仕事があるのに徹夜して、得も言えぬ幸せな気持ちで読了。今まで経験したことのない読後感に浸ったことを覚えています。
<エピローグ>
このエッセイを書いていて、1983年は自分にとってノンフィクションの当たり年だったことに気がつきました。
また、私の研究論文が初めて専門誌に掲載された年でもありました。
人生の良い時に良書に出会っていました。
<了>