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私の願い ~正直者はバカをみない

菩薩はもともと「正義感」が強かった。保険のセールスマン時代は、お客様の利益と自分の利益の間で悩んだが、リーマンショックを乗り越えたことで、「正直は報われる」という確信を得る。売り手と買い手が対等な立場で、同じ目標に向かって歩むこと、それが菩薩の願い。         


▶菩薩のこども時代

こども時代、菩薩は「恥ずかしがりや」でした。どのくらい恥ずかしがりやだったかのを知るエピソードがあります。幼稚園の学芸会で、クラスで楽器を演奏することになりました。菩薩は大太鼓の係です。当日、舞台に上がると、太鼓をたたくバチがないことに気づきました。普通の子なら、「先生、バチがありません」というところですが、私は恥ずかしくて言えません。結局、一曲を演奏している間、私は大太鼓の後ろにずっと立ったままでした。
 
恥ずかしがりやに加えて、「心配性」でもありました。ほぼ毎日こわい夢を見ていました。いまでいえば、「自己肯定感が低い」こどもだったと思います。
 
その一方で、なぜか「正義感が強い」こどもでした。幼稚園や小学校で、上級生が下級生の女の子をいじめているときは、一人で向かっていきました(殴り合いのけんかはしなかったと思います)。「弱いものいじめ」は、めちゃくちゃ嫌いでした。
 
「三つ子の魂百まで」というように、菩薩は還暦を過ぎたいまでも、「恥ずかしがりや」で「心配性」、そして「正義感が強い」です(笑)

▶保険業界に入った理由

そんな私が32歳のときに、生命保険のセールスマンになりました。保険業界に入る人の多くは、「お金を稼ぎたい」という理由で、セールスマンになります。私もお金に興味はありますが、それが保険業界に入った理由ではありません。私が保険業界に入った理由は、2つあります。
 
ひとつめの理由は「前職の上司がバカだったから」です(菩薩にあるまじき言葉づかいですが)。当時勤務していた会社の上司は、前例踏襲型で、チャレンジしない人物でした。会社にはチャレンジを尊重する風土があり、だからこそ私も入社したのですが、期待は裏切られました。そろそろ会社を替わろうと思ったときに、保険業界から誘いがありました。セールスの仕事は大変そうだけど、「自分の行動を自分で決められる」ことが魅力でした。

ふたつめの理由は「生命保険業界への不信感」です。当時、私は生命保険によい印象をもっていませんでした。保険会社に都合のよい商品をお客様に販売するということが、日常的に行われていました。しょうもない業界だと思っていました(再び、あるまじき言葉づかい)。それでも、その保険会社の人の話は、意外にも「まともな話」でした。生命保険会社の都合で、間違った保険に入っている人のために、自分が役立てるのではないかと思い、保険会社への入社を決めました。

▶糸井重里さんの言葉

実際に保険のセールスを始めると、なかなか思い通りにはいきません。報酬は完全歩合(フルコミッション)なので、売り上げが上がらなければ、お給料はありません。もちろん「お客様のため」という気持ちはあるのですが、同時に「この保険を売れば〇〇円になる」という考えも頭に浮かびます。お客様の利益と会社(自分)の利益を両立させる、といった理想がよく語られますが、私の経験上、実現させるのはなかなか難しいと感じます。
 
「正義感」が強い自分は、その問題に悩まされました。特に悪いことをしている訳ではなく、ただ生命保険を売っているだけなのですが、「お客様に嘘をついて、自分の稼ぎにしている」といった罪悪感はなかなかぬぐえません。
 
辞めたいと思ったことは、何度もあります。それでも何とか続けていると、少し見えてくるものがありました。そのときに私の励みになった言葉があります。
 
「正直者はバカをみない」
 
「ほぼ日刊イトイ新聞」の糸井重里さんの言葉だったと思います(たぶん)。糸井さんが「ほぼ日」を始めるときに、よりどころとした言葉だと聞いています。そもそもは、北海道大学の教授をされていた山岸俊男先生のお言葉です。山岸先生は、信頼について研究をされていて、「正直」であることが信頼につながることを、実験で示されました。山岸先生の「安心社会から信頼社会」は名著です。
 
糸井さんの言葉を聞いて、思いました。
「正直を貫いたら、違う世界が見えるのではないか」
そんなことを思いながら、保険の仕事を続けました。

▶リーマンショックという転機

自分にとっての転機がやってきました。
それは2008年9月のリーマンショックです。

当時の私は「変額保険」という保険商品をメインに扱っていました。リーマンショックにより、世界中の株が暴落、ドルも暴落しました。その結果、株式や外国債券に投資していた人たちは大きなダメージを受けました。「変額保険」に加入しているお客様も、当然ダメージを受けます。
 
しかし、私は以前から思うところがあり、お客様と暴落時の準備をしていました。結果として、暴落の影響を小さくしたどころか、その後の相場上昇の恩恵を得て、お客様の資産は大幅に増加しました。
 
一般的に、生命保険を使って資産運用するのは望ましくないと言われます。私も以前はそう思っていました。けれども、本当にそうかなとずっと考えた結果、最終的に、保険が役立つ場面もあると気づきました。その考えに従って、お客様に変額保険をすすめました。リーマンショックにより、その答え合わせができたのです。私の考えが正しかったことが証明されました。結果として、お客様には本当に感謝されました(このあたりの詳しい経緯は、拙著「預金、やめた」に書いています)。
 
このときに、自分に自信が生まれました。
「お客様の利益と自分の利益は一致する」
「正直はかならず報われる」
そこに気づきました。
 
自分の正義感は満たされました。
そして、やっと自己肯定感が得られたのです。

▶私の願い

「お客さんとは対等な関係でありたい」
 
それが私の願いです。生命保険の世界では、売り手のほうが買い手よりも多くの情報を持っています。売り手側が自分の利益を増やすために、お客様を誘導しようと思えば、それほど難しくはありません。それが私の罪悪感の原因でもありました。
 
そんな「だまし、だまされ」みたいな世界はまっぴらです。売り手と買い手が対等な立場で、買い手の安心を実現するために協力する。それがあるべき姿だと考えています。
 
そのためには、買い手のレベルを引き上げる必要があります。売り手との情報格差を埋めること、それが私の役割です。保険のセールスマン時代から、お客様とはフェアな関係であろうと心がけてきました。しかし、コミッションセールスマンという立場では、100%お客様の側に立つことは不可能です。いまは、フリーの立場になったので、本当にお客様の立場になって発信ができます。noteを書き始めたのも、それが理由です。お客様の「縁の下の力持ち」になって、「安心」を手に入れるお手伝いをしていきたいと思います。
 
お客様がセールスマンと対等の立場になると、何が起きるでしょうか?
お互いをリスペクトして、共通の目的、つまり「お客様の安心」に向かうことができるようになります。それが私のめざす、売り手と買い手の理想的な関係です。
 
サン=テグジュペリは、こう言いました。
「恋愛とは、お互いに見つめあうことではなく、いっしょに同じ方向をみつめることである」

同じ方向をみつめる

保険の売り手と買い手もこのような関係になれるといいですね。そのために、中立的なFPという立場で、買い手を支えていきたいと考えています。

▶最終的にめざすもの

お客様がセールスマンと対等になれば、お客様は「本当の安心」を手に入れることができます。本当に必要な保険に入り、安心感を得ることができます。その保険はいざというときに、あなたや家族を守ってくれます。そのお金は、もともとは保険会社のお金ではなく、保険に入っている、あなたの知らない人のお金です。反対に、あなたが入った保険は、あなたの知らない誰かを守ります。
 
このように保険を通して「助け合い」が行われています。
 
売り手と買い手の間の情報格差がなくなると、「売り手」と「買い手」両方にメリットがあります。売り手も買い手も、正直に、共通の目標(安心)について話をすればよいからです。そして、保険を通して「助け合い」が行われ、困っている人を助ける働きが強化されます。
 
これは「買い手よし、売り手よし、世間よし」という、近江商人の「三方よし」ですね。
 
日本の商人が大事にしていた考え方を、保険を通して実現する。
それが私のめざす最終目標です。
 
いま世界のあちこちで、争いが起きています。日本の中でも、「やさしさ」や「思いやり」が少なくなってきていると感じることもあります。保険を通して、日本人本来のやさしさに気づき、世界の平和に貢献したい。私はまじめに、そう考えています。

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