かつて担任したあの子のこと
2013年のとある日の夕方、
東京でのオリンピック開催決定のニュースが保育園内を駆け巡った。
私は保育中だったと記憶している。
一度アジアで開催されるとしばらくはアジアで開催されないから、他のアジア諸国からの票が入らないだろうなんて言われていたような気がする。
そんな中での開催決定。
結果的には、2008年 夏の北京、2018年 冬の平昌、2020年(2021年) 夏の東京、2022年の冬の北京とアジアが続いている。
そばにいた主任の先生が、
「東京なら見に行ける!!!開会式に行きたい!!」
みたいなことを興奮気味に言っていた。
全然休みの取れない園だったので、
「開会式に行きたいという理由で休めるのかな」
なんてぼんやり思っていた。
オリンピックは他人事だった。
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その後、海外での生活が視野に入り、「帰国したらオリンピック関連でぜひその語学力を」なんて言われたこともあった。
1964年の東京大会を機に日本が発展したというようなことを小中学校の社会科で習った。
だったら発展めざましい東南アジアの国が開催してもよいのでは?開催できるだけの力があるのでは?と思っていた。
オリンピックはなんで東京に決まったんだろう?と思っていた。
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大会が始まって1週間弱。
かつて担任した子と同じ名字の選手を見て、「あの子、どうしてるかな~」と思いを馳せた。
冒頭のワンシーンで、オリンピックが決まった時に担任していた子だ。
保護者の転職に伴い、年度途中で引っ越していった。
翌年、園に届いた年賀状に元気そうな姿が写っていた。
あの子と同じクラスだったのは……とクラスメイトにも思いを馳せている。
オリンピックは、かつて担任した子どものことを思い出すきっかけになった。
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かつて担任した子どもたちのことは、きちんと私の中の記憶の中におさめられている。
日常的に意識して思い出すこともあるけれど、不意にその思い出が飛び出てくることもある。
飛び出るきっかけは、高校野球やインハイ、オリンピック、コンクールなどのニュースで似た名前を耳にすること。
私の場合、耳からの情報に記憶が反応する。
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幼児教育に携わっていると、子どもたちとは長くても小学校に入るまでの関わりとなる。
私のそばから旅立った子どもたちは、その後、どんな小学生になり、どんな科目が得意で、どんな部活に打ち込むのか。
無数の可能性が広がっている。
いつかオリンピックに知っている子が出場したらうれしいなと思う。
おしまい