【毒親と逃亡】
母親は東京の家を出た。
幸いなことに私と姉の手を引いて。
私には、東京の家を出た記憶がないのです。気がついた時には、母の地元の田舎に家が建つからそれまで祖母の家に泊まっていたことしか知らないのです。
よくある「毒親」というものは、その時愛していた別の男とともに夜の暗闇に溶け込むと言ったパターンであるが、母は違った。
素直に「子供を愛していた」といえば、私はとても可愛い娘であったろうに。
ひねくれた私は、依存の対象が父であったため、父につくすことで自分の存在価値を感じていたからだろうと思うのです。
もしも、東京で母が素敵な男性と出会っていたらと考えると、もしかしたら暴力の対象は私になっていたのかもしれないのです。
そう考えると母には頭が上がらない。
また、これは後に聞いた話であるため、私は聞いたこともないし、「そんなことがあったんだ!」と阿保な返答しかできないのですが、ある夜更けに8歳になったばかりの姉が「逃げよ」とそっと言ったそうなんです。
姉、ナイスだ。
母は、この言葉に救われたんでしょう。誰かにずっと「逃げてもいいんだよ」と言ってもらいたかったので。
この発言を愛する愛娘がしたことで、母は逃げる勇気と覚悟ができたようです。
母は「離婚」したいと実の母にも相談はしていたそうです。しかし、祖母はそれを止めたそうです。母は母に愛されたかった。褒められたかった。だからこそ、祖母に従うしかなかったのだと思うのです。
母はかわいそうな人なんです。
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