いろんな定義の方法があると思いますが、
ここでは、詩を書いて、詩人としての機能を、
社会に提供していることが、詩人であることの前提です。
詩人が社会に提供する機能、
これはもしかしたら書き手によって違うかもしれませんが、
私にとっては「読者と世界との関係を更新すること」です。
ときどき、私の詩を読んで、
こちらが驚くぐらいの感動を伝えてくれる読者がいますが、
そんな時は私が詩人として、社会に機能している時です。
また、同じ役割について視点を変えると、
私が「スローガンの解体」と呼んでいるものになります。
(いちおう)私の属する「現代詩」と呼ばれる詩のジャンルは、
第二次世界大戦への巨視的な反省を踏まえて誕生しました。
盲信的に集団行動を促すような標語を内側から解体していくのも、
詩人の大切な役割の一つだということです。
そのためには詩人自身が孤独でいる必要があり、
また、本質的に言葉で表せないものを言葉で表そうとするため、
深く追求しようとして、矛盾に陥ってしまうと、
他の芸術にそういうタイプの表現者がいるのと同様に、
ときに書き手は、強い精神的負担を感じることがあります。
そこで虚無に囚われず、他者への愛と信頼を自ら生み出せた者が、
詩人になれるのだといえます。
そんなわけで、偏屈者が多そうな詩人界隈、
私が好んで群れることはあまりないのですが、
付き合ってみると本当にいい人が多い。
私は普段、音楽界隈でも仕事をしていますが、
大物ミュージシャンは本当に知的で優しい人が多いです。
「いい人」であること、これは呆れるくらい簡単なようでいて、
芸術家に限らず、実は得難い、達成のための重要な素養になってきます。