SaaS組織の - 部分最適という麻薬 - を飲んで見えた未来のカタチ
はじめに
『SaaSビジネス Advent Calendar 2019』のバトンタッチ連載です!
SaaS関連のnoteなので、何を書こうかと迷った結果、今ままで自分がSaaSのビジネスに携わってきて得た、組織とKPIの関係について書こうと思います。
*最初は海外の事業立ち上げについて書こうと思ったのですが、なるべく読んでくれた人に価値を感じていただきやすい内容に変更しました。海外だと共感が少なそう
目次
①ASP時代
②KPIをバトンタッチ形式で考えることが大事(だった)
③生じる問題点 - 部分最適という麻薬 -
④お前のKPIは俺のKPI
⑤緩やかに交わるKPI
⑥全てはカスタマーとプロダクト起点で考える
⑦ここから見えているSaaS企業でのキャリア
①ASP時代
私は新卒の頃からずっとB2B SaaSのビジネスに携わってきました。今年で9年目です。フィールドセールス、マーケティング、インサイドセールス、カスタマーサクセス 、プロダクトマネージャー、プロダクトマーケティングマネージャー、事業責任者というビジネスサイドの組織を経験してきました。
2012年、当時はSaaSではなくASPって呼ばれていました。ASPとは、Application Service Providerのことでアプリケーションをインターネットを通じて売る事業者のことです。SaaSとは指している意味が違いますが当時から言葉の定義があやふやなので日本では同義な使い方がされてしまっています。僕はこの言葉を2012年に覚え、キャリアをスタートさせました。
この頃は、SaaSという言葉が浸透しておらず、2013年頃からSaaSと僕の周りは呼び出したような記憶があります。
クラウドは危ない、クラウドなんてよく分からん。SaaS?また新しい言葉?。当初はそう言われていたような気がします。営業としては苦労しました。
②KPIをバトンタッチ形式で考えることが大事(だった)
2012頃はインサイドセールスやカスタマーサクセスという組織を作る会社もちらほらあり、私も流れにのってインサイドセールスという組織立ち上げを経験しました。
当時の業務プロセスはシンプルで、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、アカウントマネージャーがプロセス毎に役割を切って、役割に沿ってKPIを策定し、策定したKPIを達成するための施策に落としてました。今はほとんどの会社がこのようなプロセスに沿っているのではないかと思うのですが、当時の私の会社はインサイドセールスが持つようなホットリード数という概念がなく、まずは今だと当たり前に存在する例えばホットリード数というKPIを誰が持つかというような議論から始めました。
こんな感じでKPIに合わせて組織を切って行くようなイメージで組織とKPIをすり合わせてました。
*どこかの具体的な企業というわけではなく妄想です。
今でもB2B SaaSの成功事例を見るとだいたいこれに近い組織とKPIになると思います。自分自身も正解に近いと思います。
さらにこのプロセスに受注後のカスタマーサクセスの業務フローをのっけてくと、SaaSビジネスに必要な業務フローが出来上がります。
③生じる問題点 - 部分最適という麻薬 -
このようなKPIに応じた分断された組織を持つことは業務効率化、評価のしやすさのような様々な観点から成果に結びつきやすいと私は思います。ただし、注意しなければならないのが、部分最適と短期思考です。
誰もが経験するSaaS失敗あるある
①商談数がKPIのインサイドセールスが無理やり商談をとって、お客様にもセールスにも迷惑をかけるケース
②課題にFITしてないプロダクトを売ってしまうセールスがお客様にもカスタマーサクセスにも迷惑をかけるケース
これは、部分最適と短期思考、両方に陥ってしまった・・・例だと思ってます。
が、問題はさらに根深く各チームのメンバーはKPIを達成しているからいいじゃん、って心の底で思っていることも。。さらにKPIが達成したから評価いいでしょ?ってなることも。。これは辛い。ここからの挽回が難しいのです、経験上。
一度、KPIを分断して組織を部分最適に向かわせると、麻薬のようにどんどん組織が悪循環に陥ってしまうのです。
という経緯でSaaSの一番の麻薬は部分最適だと刷り込まれてます。w
短期的には結果が出る、長期的に崩壊する。そんな感じです。
④お前のKPIは俺のKPI
解決する手段はいくつかあると考えてます。
数年前に、ある人に「多くの会社では自分のチームは後ろのプロセスを担っているチームのKPIに興味ない。興味あるのは手前」って言われたことがあります。
つまり、セールスはマーケティングチームに案件数と質を求めているので興味があります。いい案件ほしいもの。
反面、受注した後は、はい、よろしくね!ってスタンスなので興味が薄いのです。
全員がそういうことではないと思うのですが、1つの例として納得しました。
うまくやっている会社は、どう解決しているのでしょう。
個人的に好きなのは、お前のKPIは俺のKPI作戦です。
*私がそう呼んでいるだけです
先日、リスボンであったWebSummitに参加した際に、SaaSのセッションでリテンションモデルにおける組織構造の変化というセッションや会話がちらほらありました。とても興味深い内容でした。
どういうものかというとすごくシンプルで、KPIと組織にグラデーションを持たせようという話でした。
例えば、その1つとして、intercomのオンボーディングの話がありました。
SaaSを提供する企業にとって、オンボーディングほど大事なプロセスはないと言っても過言ではないはずです。
では、オンボーディングは誰が担うのが正しいのでしょうか?
ちなみにReproはカスタマーサクセスです。多くの企業でもカスタマーサクセス がオンボーディングを担うことになっていると思います。
カスタマーサクセス がオンボーディングを担うことは、SaaS企業にとって、クライアントにとって、プロダクトにとって、ベストなのでしょうか。
WebSummitの参加者の話の中に「ベストではない」という声がありました。これは自分にとって、新鮮で固定観念に囚われていたなとハっとさせられました。
例えば、Intercomチームはオンボーディングプロセスにセールスやマーケティング、プロダクトチームが関わっているそうです。
オンボーディングチームと書かれていますが、オンボーディングだけに特化したチームを持つということではなく、マーケティングやプロダクトチームにもプロジェクト的にオンボーディングに特化したミッションをシェアするというようなイメージです。
このように、それぞれのプロセスに付随するKPIを特定のチームをアサインするのではなく、KPIをそれぞれのチームでシェアするというのが、*お前のKPIは俺のKPI作戦です。
*私がそう呼んでいるだけです
⑤緩やかに交わるKPI
さらに先日、あるイベントで登壇する機会をいただきパネルディスカッションに参加した際に、ご一緒した先輩のお一人が「リテンションモデルの会社において最近は分業がいいという風潮がありますが、最終的に戻るのは協業だと思う」とおっしゃってました。
まさに、そう思います。
パネルディスカッションでは、KPIのガラス張り、部門間のアライアンスという言葉が出てきてましたが、これも協業に向けた動きではないかと思います。
わかりやすい言葉に、〝Revenue Engine〟があります。パネルディスカションでマルケトの小関さんがご紹介くださいました。
以下の画像のようにプロセスに切って、組織が存在するのではなく、プロセスから滲み出るように組織が存在してます。これも1つの一例ですが、全てをバトンパスをする体制から、組織が並走するプロセスが出てくるとようになると思います。
参考引用:Scaling the Revenue Engine — Chapter 1: Revenue Engine Overview
KPIをシェアする、KPIが交わる、2つ以上の組織が1つのプロセスを並走する。このような表現徐々にSaaSの組織は移り変わるものと考えてます。
これも*お前のKPIは俺のKPI作戦です。
*私がそう呼んでいるだけです
⑥全てはカスタマーかプロダクト起点で考える
先日、三茶の飲み屋で熱いマーケティングの話になった際に、「マーケティングという観点ではなく、カスタマーとプロダクトから物事を考えてるだけ」手段としてマーケティングをやっているだけだと某CMOから言われました。
私:拍手👏
この時思ったのが、KPIが交わる状態というのも、カスタマーを起点に考えているが故にたどり着くチャレンジの1つだと思ってます。
カスタマーにとって、商品に出会ったときから、買って、使って、結果を得るまでは一貫した体験で、細分化してプロセスを切っているのは提供側の都合だということです。
カスタマーにとって、分断されたプロセスによって得る微妙な体験の違い、担当者の変更はどれも最悪のストレスです。
また、プロダクトという観点で考えても、そのように体験を分断させたサービスを提供したいとは誰も思ってないはずです。
カスタマー、プロダクト起点で考えると、プロセスに合わせたKPIと組織の完全な分断は元から違和感があるものだったのかもしれません。
⑦ここから見えているSaaS企業でのキャリア
部分最適が悪というわけではなく、全体最適のない部分最適は組織を短期思考にさせ、麻薬のように組織を蝕む。というのが私の体験から得たノウハウなのですが、キャリアも同じように考えられると思ってます。
ビジネスサイドの人間にとって、たった1つの深掘りで生き残るのは、今後相当難しくなってくるのでは思ってます。カスタマーとプロダクトを起点に考えた時に、ビジネスプロセス全てを見渡し、様々な課題をいくつもの視点で探求し、解決策を導き出さないといけません。これは簡単なことではなく、広く深い知識が必要になってくると思います。プロフェッショナルが多い国ではなく、特に日本の会社の構造上、そうなのかなと感じた所感です。
以上です。
わたしからは、KPIは僕らの都合、カスタマー起点で全体最適してこうぜって話でした。読んでいただきありがとうございました!
今月いっぱいは、たくさんの人がSaaS記事を書いてくださるので、2019年末まで楽しみにしてます!
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