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勇者ツケメンと僕らのキセキ
~合同誌「STARDUST TALES #1 」より抜粋~
ゲーム終盤にふと訪れてみると、ただの片田舎だったはずの「始まりの村」から、何故だか知らないが魔王討伐に役立つ便利グッズがゴロゴロと転がり出てきたりする。退魔の剣に大賢者のローブ、大魔導士の杖、e.t.c…。
実はこの村は、遥か昔に英雄が骨を埋めて云々、主人公は勇者の血を引いており云々・・・。
ありがちな展開ではあるが、主人公を主人公たらしめるその理由を確かなものにしてくれる、熱いどんでん返しだ。彼ら(彼女ら)は最初から魔王をうち倒すという使命をしてこの特別な家に、村に、世界に、生を受けることを許されていたのだ・・・。
ごくごく平凡な自分にも、何かとんでもない秘密が眠っていて欲しいなんて、誰しも一度は願うことじゃあなかろうか。
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私が地元高知を離れ、東京の大学に進学して早一年が経つ。
あんなに恋い焦がれていた東京だというのに、いざ一人暮らしが始まってみると今度はやたらに故郷が恋しい。くる日も変わらぬもやし炒めを咀嚼しつつ想うのは、やはり故郷の味。
ある時は母の作る芋煮であったり、またある時は祖母の作るお吸い物であったり。そんな、味覚に吹きつける郷愁の風の中にひとつ、とりわけ舌に絡みついては離れてくれない故郷の味がある。
それは、高知は「藏木」の牛モツつけ麺。
濃厚なつけダレの中に滲み出た牛モツの味わいが、自然なとろみとまろやかさを生んでいる。そこに背油のようなしつこさはない。麺は食いでのある極太麵で、つけダレが非常によく絡む。
その極太麺をつけダレの中に十分に浸して・・・器の中でくるりとひと回し。つけダレを抱え込んで膨らんだ麺の塊りを、サッと素早く引きづり出しては、汁気がしたたり落ちないうちにと一気に口の中へすすり込む。
もはやつけダレをすすっているのか麺をすすっているのか分からないほどの濃厚さの中に、モッチリとした歯ごたえを見つけて噛みしめる。・・・美味い。
この「藏木」の牛もつつけ麺、一度でも口にすれば二度三度と定期的に足を運んでしまう魔性のつけ麺であるので、注意されたし。
東京でつけ麺巡りを始めてはや一年。このつけ麺に並ぶものにはいまだ数えるほどしか出会えていない。
始まりの村には財宝が眠る。
~抜粋終わり~
つけ麺たべたい(小並感)。
何を隠そうこの文章、私こと穂高ハジメが生まれて初めて同人誌即売会なるものに(販売者側として)参加した際に執筆したエッセイです。タイトルは「勇者ツケメン」。なんのこっちゃ。
なんかもう、書き口やら言葉選びやらから気合が入りまくってるのがモロ分かりで恥ずかしいですね。キャッ。
古くからの友人である諸星モヨヨ氏(https://note.mu/moyoosanp1899011)と共に、生涯初の同人誌「STARDUST TALES #1 」を発刊したのが、ちょうど一年半前のこと。
まだそんなに時間も経っていないというのに、何故でしょうね。既に懐かしさしか感じません。
ドキをムネムネさせながらこの同人誌を持ち込んだ先は・・・忘れもしない、「コミティア120」。マンガ主体の同人イベントに、何を思ったかこの小説系合同誌(そう、合同誌なんですコレ)をひっさげ無謀な突撃をかました私たちは、当然の如く同人界の洗礼を受けることとなりました。
即ち、「頒布冊数ゼロ」。
帰り道、冗談抜きで泣きそうだったなぁ・・・なつかc。
敗因は単純明快で、
「ジャンルと内容が不透明」
この一言につきました。
・・・いやまあ、他にも色々と問題点はあったのですが。
手に取るどころかブースの前で立ち止まってすらもらえないというのは・・・やはりこれが一番大きかったのだろうなぁ、と。
そう。イベント初参加で右も左も分からない私たちは、この本の詳細・あらすじ等々を記したプレートや垂れ札の類いを何一つ用意せずに(辛うじてホワイトボードは持って行っていましたが・・・)挑んでしまったのです。
いやもうアホかと。
中に何が載ってるかも分からないのに手に取ってくれる人がいるはずもなく、初の同人イベント参加は5時間以上ぼけ~っと座ってるだけで終わってしまいました。
更に言えば、「シラナイヒト コワイ」とばかりにコミュ障を発動させた私・・・たち?(相方のモヨヨ氏はどうか分かりませんが、少なくとも私はそうでした)は両隣ブースとの交流も一切取らぬままであったため、コミティア120にて他人の手に渡った「STARDUST TALES #1 」は、言い訳のしようもないほどに、0冊。ぜろさつ。
いっそ清々しいくらいに、無残な結果となってしまったわけです。
かなc。
・・・とはいえ、参加した甲斐・・・といいますか。
得られたものは多くありました。
例えば、作家の「端くれ」くらいにはなれたのだという感慨だとか。
例えば、周囲の物書きたちのレベルの高さに対する畏怖と挑戦心だとか。
そう。
世間を知ることで自身の立ち位置や目標が見えてくるように、あのイベントを通し、世間一般の”アマチュア作家”というものが一体どんな文章を書いているのかを知ることによってようやく、私の「書きたいもの」が見えてきたように思うのです。
・・・その結果が続刊「STARDUST TALES #2 」にも収められている青春小説「ちんちろちん 辰陵編」――ペニスバン●で少年たちが互いをしばき合う架空スポーツをテーマにした物語なのはご愛嬌。
どこかで道を間違っちゃったんですよね。なんであらすじに伏字が必要な小説が書き上がっちゃったんだろう・・・。
ともかく。
生まれて初めて自分達の手で作ったこの同人誌は、見返すたび、手に取るたびに私に大切なことを思いださせてくれます。
初めて「同人」の舞台に立った時のあの高揚感。
初めて「自分たちの作った本」が自身の手に収まった時のあの喜び。
そして、初めて「自分の書きたいもの」が見えたあの瞬間。
返す返すも、あの時勇気を出してコミティアに参加して良かったなぁ・・・なんて。誘ってくれたモヨヨ氏には本当に感謝してます。
この記念すべき第一冊目である「STARDUST TALES #1 」、1年半が経った今でも、時おり手に取ってみては感慨に浸ったりしています。
これからも、その先も。
いついつまでも、初心を忘れずに行きたいものですね。・・・そしていつの日か、コミティアにリベンジしてやるんだ・・・。
“始まりの村には財宝が眠る”