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白いねずみさんとぶどう。
あれ〜?僕、迷っちゃったかなぁ?
白いねずみさんは少し先の冬に向けて、食べものを集めに山の反対側まで来ていました。
ねずみさんは夜行性なので、今夜はまん丸ではないお月さまに尋ねました。
お月さまぁ、僕もしかして迷子?
お月さまは優しく応えます。
いや、道は君の知っている道のはずだよ。
大丈夫さ、半分になっても私は君を照らしているよ。
…うん。
それでも、ねずみさんの心のなかには、
お家に帰れなくなったらどうしよう…
が残っていました。
いやいや、そんな。
僕、大丈夫だもん!
頭(かぶり)を振りました。
そのとき…
…あ…。
お月さまに照らされてキラキラ輝く美味しそうなぶどうのなった木をみつけました。
わぁ…。
僕、こんな立派なぶどう食べたことないよ。
ひと粒いただこう。
……!
美味しい!
ねずみさんは山の中で暮らす仲間を思い出しました。
みんなにも食べさせてあげたいなぁ…
最初の目的を忘れて、木によじ登り、ねずみさんはぶどうを一房とりました。
ん…、しょ。
僕より大きいから、これは大変な帰り道だぞ…
ズルズルとぶどうを引きずり、山の反対側を目指します。
うん…しょ、でもだんだんコツが掴めてきたみたい。
僕、上手に運べてるんだ!
空が白み始めた頃。
ようやくねずみさんはお家に着きました。
ねずみさんが振り返ると、
あれ!!
ひと粒だけになっちゃってる!!
みんなに食べてもらいたかったねずみさんは悲しくなりました。
僕、上手に運べてたから軽く感じたんじゃなくて、粒を落っことしていただけだったんだ…
ひと粒残ったぶどうを持って、親しくしているヤマネさんに会いに行きました。
…ヤマネさん、起きてる?
…ふぁ〜あ、だれ?ああ、ねずみさん。
どうしたの?
ねずみさんは事の顛末を話しました。
ヤマネさんはとてものんびり屋です。
じゃあ…この近くまで落っことしてきたぶどうの実があるんだね。
じゃあ…その実から種が落ちてぶどうが生えたら、みんなでぶどう狩りができるよ。
え!
がっかりしないの?
ひと粒しかなくなっちゃったけどヤマネさんにって僕おもってて…
がっかりなんかしないよ。
ねずみさんがぶどうの木を近くに持ってきてくれたようなものじゃないか。
このひと粒はねずみさんがお食べよ。
ひと晩、ぶどうを引きずってきたねずみさんは確かに腹ぺこでした。
ヤマネさんと別れてわらのベッドに帰ったねずみさん。
ぶどうをひとしきり見つめてから、食べました。
美味しい。
これがこの近くでなるのなら、自分のしたことは間違っていなかったかもと、ねずみさんは嬉しくなりました。