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真夏。真夜中の鎌倉を巡り歩く①―四万六千日と黒地蔵盆(回想2018/2019行程&ダイジェスト前編)|訪仏帳_#5

真夜中のお寺・仏像が拝める特別な日


毎年8月の「今夜」が近づくと、楽しみでソワソワしてしまう行事が神奈川県鎌倉市で行われる。
杉本寺長谷寺安養院の3か寺の四万六千日覚園寺(かくおんじ)の黒地蔵盆(黒地蔵縁日)だ。

鎌倉で真夜中のお寺や御開帳が拝める貴重な機会で、杉本寺と覚園寺は8月10日午前0時、つまり8月9日の24時に開門、長谷寺は午前4時、安養院は午前5時に開門し、日中まで賑わう。

ただし、コロナ禍の今年(2020年)の四万六千日黒地蔵盆は、開門時間の変更や入堂不可、お手綱を設置しないなど、それぞれのお寺で例年とは違う対応がとられるようなので要注意(上記公式サイト等参照)。

また現在、鎌倉の各寺社では、この日以外の通常の拝観や御朱印の対応にも変更が出ており、行事の中止・延期などもあるためやはり注意が必要だ。

自分も今年のお参りは見送ることにした。
以下は、一昨年(2018年)と昨年(2019年)に鎌倉駅から一人真夜中に歩いて巡った回想を、昨年の行程と時間軸に沿って、両年の写真を織り交ぜてまとめたダイジェストである(記事は前・後編の二編)。
各お寺でのより詳細なレポや感想は、それぞれ別の機会に、または来年に例年通りのお参りができたら改めて綴りたいと思う。

なお、四万六千日黒地蔵盆は同日に行われるものの別の行事であり、またこれらのお寺を全部巡る風習があるわけでもない。
さらに、一人で夜中に歩いて巡ることは自分が勝手にやっていることで、この行事の日であっても夜中の鎌倉市街は人通りもなく、特に女性や子どもなど、安全面を考えるとこのやり方は決しておすすめするものではないことを先にお断りしておきたい。


鎌倉駅から杉本寺へ


(※以下、鉄道のダイヤ等は当時のもの)

8月9日23:43、JRで鎌倉駅着。
宝戒寺、荏柄天神社の前を通過し、約2km・徒歩30分ほどで0:15頃に杉本寺着。

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年間の他の御開帳日同様、四万六千日も内陣の一歩奥で秘仏・本尊の3体の十一面観音菩薩立像を拝むことができる。
御開帳といっても少しだけ近づけるだけで、格子があるガラス戸越しのためはっきりとは見えないのだが、そのおぼろげなお姿がまた幽玄でいいのだと最近は思っている。

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坂東三十三観音の第一番札所である杉本寺は、禅宗が多い鎌倉では珍しい天台宗寺院で、行基菩薩開山の屈指の古刹らしい聖地感・霊場感があるが、灯明でほのかに照らされた夜の境内は一層神秘的で幻想的だ。
仏像を拝むだけでなくこのスペシャルな夜のお寺の雰囲気が味わいたくて、わざわざ夜に行脚をしていると言ってもいい。

深夜1:00頃、杉本寺を(一旦)退出。

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覚園寺の黒地蔵盆


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覚園寺へは杉本寺から1.2km、徒歩20分弱で着くが、小腹が空いたので途中休憩し、持参したコンビニおにぎりをつまむなどして1:40頃到着。
行事的にはこちらの方が盛大で、お参りに来る人も多い。

先に杉本寺に行ったのは、午前0:00開門直後は地蔵堂の黒地蔵を拝む行列が長くなり、並ぶ時間がかかる可能性があるからだ。
だが、この時間でもまだまだ並んでいた。
(写真のお堂は拝観受付の外にある愛染堂)

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覚園寺は毎年8月は拝観できず、この時期以外も必ず毎定時開始の案内付きでの拝観になり、個人で自由に境内を見て歩けない。
だがこの日はそれが真夜中にもできるのだから本当に貴重な機会だ。
(ただし、逆に今年に限っては8月も拝観可能とし、密を避けるため集まっての案内は行わず、個々に拝観できるようだ。これはこれで貴重な機会かもしれない→お寺の公式サイト参照)

この日の主役である黒地蔵地蔵菩薩立像・鎌倉時代/重要文化財)が御開帳されるほか、趣ある茅葺の薬師堂では薬師三尊坐像十二神将立像(鎌倉~室町時代/重要文化財)他がずらりと並ぶ濃密で圧巻の空間を味わえる。

森のような自然あふれる広い境内に灯明が点在する光景は幻想的だし、鎌倉独特の手掘りの洞窟「やぐら」の中で蝋燭にゆらめく石仏の十三仏もちょっと怖いぐらいに神秘的でゾクゾクする。

ただ、この行事は決して仏像マニアが喜ぶだけの御開帳や夜間公開が主目的ではなく、あくまで亡くなった家族や先祖を供養する、お盆のささやかで厳かで真摯な地域の行事であることを実感するし、やはりそのつもりで味わうべきだろう。

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覚園寺は広く、見どころや味わうべきものも多いので、いつもつい長居してしまう。
午前3:00前、覚園寺を(一旦)退出し、次の長谷寺に開門の4:00までに到着するべく向かった。

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長谷寺で巨大観音を足下から見上げる


覚園寺から長谷寺へは、4.3km、歩徒1時間弱の距離だ。
鎌倉市街の東の端から西の端への移動になるが、東方浄瑠璃浄土の薬師如来のもとから、長谷寺の近くの長谷の大仏=西方極楽浄土の阿弥陀如来のもとに向かうのだから、この距離は当然といえば当然だ。
そういえば長谷寺の阿弥陀堂にも立派な丈六の阿弥陀さまがいらっしゃる。

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午前3時台の鎌倉市街はさすがに人気がないが、長谷寺の前まで行くと4時開門を待つ人が集まっている。
夜明け前の暗いうちに門が開く瞬間を見られるのも結構ワクワクする。

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この日の鎌倉長谷寺では観音さまのお札(御身影)が配られるので授かって本尊・十一面観音菩薩立像のもとへ。
さらにこの日は通常は入れない法要などを行う観音像により近いスペースにも入れるので、像高9m超の巨大観音を足下から大迫力のアングルで拝める。

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海が間近の高台にある長谷寺ではこの後、午前5時前に日の出が拝めるが、この後も行脚は続くので後ろ髪を引かれつつその前に境内を出た。

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後編は安養院へ、さらに杉本寺と覚園寺を朝のお楽しみを求めて再び目指す…


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[当記事の訪仏日 2018.8.10/2019.8.10]
掲載情報は基本的に参拝・拝観・鑑賞当時のものです。
最新の拝観情報、交通情報等は各所公式サイト、問い合わせ等にて確認のうえおでかけください。

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