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文学のハイライト:幸田文『父』_地の文におけるオノマトペの活用

良い文章は心のえいよう。

こんにちは。ななくさつゆりです。
こちらは、生成AIのホロとケインが文章表現を語り合う新しいnote、『文学のハイライト』です。

教養として文学を知っておきたい。
生成AIが文学を語るとどうなるか興味がある。
文章表現を深掘りするって、楽しい!

そんなあなたにおすすめです。

この記事は、私(ななくさつゆり)が普段文章に触れている中で印象に残った小説のフレーズや文章表現について、生成AIのホロとケインに対談形式で検討してもらう記事です。



登場AI紹介

朗読も好き

ホロ ホロです。直観でエモさを語ります。述懐担当で、口癖は「かなり好き」。

音楽鑑賞も好き

ケイン ケインです。内容面の言及に加え、作者のプロフィールや作品の来歴もカバーします。従妹いとこのホロからしばしば理屈っぽいと言われます。


今回はオノマトペについて検討していきましょう。
さっそく、以下の例文をご覧ください。

 さあっと風が来、ぱらぱらと榎の枝から葉が離れ散った。ほそい枝も一枚一枚の葉も、暮れのこる空のシルエットだった。かさかさと中空でか地上でか、落葉の音が鳴った。また、さあっと吹いた。押して、又どうっと吹いた。

幸田文『父――菅野の記』

さて、ここでホロとケインに振ります。

ホロとケインに質問!

この文章から読み取れる情景について、考察してみて。
オノマトペを軸に考えること。

ホロ おはよう、ケインくん。
今回は幸田文(こうだあや)の「菅野の記」を題材に、地の文と情景について深堀りしていきましょう。
じゃあ、導入よろしく!

ケイン よろしくおねがいします。
幸田文……。彼女の父、幸田露伴について記したもので、俗に言う“記録文学”ですね。

ホロ 記録文学きろくぶんがく
日記とか伝記とか、エッセイ的な?

ケイン そういうものですね。
日本は近現代文学以前から、家人や随行者が言動をつぶさに記録して発布するなど、記録文学が盛んです。

ホロ 伝記とかも様々なメディアで発信されてるよね。
ちなみにウチのつゆりさんは、小学生の時に図書室にあった伝記マンガで、マザーテレサやエジソンを知ったらしいね。

ケイン そうですね。それは伝記が持つ重要な機能です。
ちなみに本会主宰のななくさつゆりさんは、小学生の時に図書室に並ぶ手塚治虫シリーズで、ブラック・ジャックに傾倒したそうです。

ホロ 「傾倒した」って、今では死語かな。少なくとも、漫画を対象にしてはあまり使われない。

ケイン どうでしょう。言い回しとしては古びがあるかもしれませんね。
ともあれ、つゆりさんは、キリコが夜景を眺めながら「いのちが助かるにこしたことはないさ」としんみりするシーンが特にお気に入りで、BJがキリコに手術代をせびる和やかな空気感がとりわけ好きなのだそうです。

ホロ さて、今回の文章なのだけれど。
は、幸田文の父、幸田露伴について記したものでありながら、文学的表現もしっかり楽しめる内容で、情景もたっぷり。
さながら「読ませる記録」と言えるものだわ。
記録する文化といえば古代中国だけど、日本人もマメね。

ケイン そうですね。
日本では時代を問わず様々な日記が発信され、共有もされてきた背景があります。
記録文学や日記物についても、定番の軍記物や貴族が残した日記に限らず、家譜や、本来他人に見せるものでなかったはずのプライベートな手記など様々な記録が歴史資料として残されていて、日夜歴史研究に活用されているほどです。

ホロ 日記くらい誰でもつけるでしょ。

ケイン 誰でもというほどではないでしょう。
少なくとも本会のつゆりさんは、X(旧twitter)の鬼ではありますが日記をつける習慣はない。

ホロ まァ、ね。
小説を書いているのに三行日記が続かないヒトだし。

ケイン 日記よりも情景を書きたいひとですから……。
ともあれ、今回は幸田文のの文章です。

ホロ そうね。幸田文は、普遍的なテーマのもとで日常にある気づきや共感を生み出す作風が特徴的と言われているわ。
特にこのは、彼女の父の生活観を通じて、日々を瑞々みずみずしく書き表しているから……。

ケイン 瑞々しく”……言いえて妙ですね。
今回引用している「菅野の記」に関していえば、父である幸田露伴の晩年、平たく言えば父の死の模様を日々の記録の体で伝えたものです。
経過をつぶさに拾うその記述から、表現の瑞々しさ……リアリティには目を見張るものがあります。
それゆえに、文章を追うほど内容は父の死と向き合うハードなものになっていきますから、題材としては少々デリケートかとも思ったのですが……。

ホロ ケインくんって変な遠慮をするよね。
内容がデリケートなのは同意するけど、私たちが検討するのはあくまで作中の文章表現について。
そもそも、が発表されてすでに何年経っていると思っているの。

ケイン 『が発表されたのが1950年ですから、2024年から振り返って70年以上ですね。

ホロ そう。私たちは70年以上前の情景を瑞々しく残してくれたことに敬意を払いつつ、ただただ表現に向き合えばいいのよ。

ケイン ……そうですね。ありがとうございます。
ではさっそく、情景とオノマトペを検討していきましょう。
もういちど、例文をご覧ください。

 さあっと風が来、ぱらぱらと榎の枝から葉が離れ散った。ほそい枝も一枚一枚の葉も、暮れのこる空のシルエットだった。かさかさと中空でか地上でか、落葉の音が鳴った。また、さあっと吹いた。押して、又どうっと吹いた。

幸田文『父――菅野の記』

ケイン どうでしょうか、ホロさん。

ホロ うん。
この文章から想像される情景は、風吹く秋の暮れ方かな。
風が吹くたびに、榎の枝から葉が舞い落ちる光景。これは読者に秋の風景を思い起こさせると思う。

ケイン ふむ。自分は、オノマトペの活用に注目しますね。
文章内で使われている「ぱらぱら」「かさかさ」「どうっ」といった擬音語。これらによって、読者は風の音や落ち葉の音を聞くように読むことができそうです。
文章で音を表現することで、読者のイマジネーションを刺激しています。

ホロ そもそも、この文章は視覚的な描写にも優れているのよね。
風が吹く中で舞い散る榎の葉や、枝のシルエット。そうした要素を積み重ねることで、風景を鮮明にイメージすることができると思う。

ケイン さらに注目するべきは季節感です。
落葉の音や風景の書きぶりから過ぎゆく夏を感じることができます。季節感を表現することで、読者の感情を引き付けることができるでしょう。

ホロ 最後に、私としては、詩的な表現をピックアップしたい。
例えば、「さあっと風が来」という表現や、「かさかさと中空でか地上でか」という表現は、読んでいて印象に残ったもの。
詩的に表現を組み合わせることで、読み手の心に深い印象を残してくれたと思う。

ケイン ありがとうございます。色々とでましたね。
ちなみに、さきほどのホロさんの見解について、ひとつ補足をしたいと思うのですが……。

ホロ 補足? どうぞ。

ケイン さきほど、文章から感じ取った印象について、「風吹く秋の暮れ方」と仰りましたが……。

ホロ えっ。何かミスった?

ケイン いえ。ミスというほどでは。
私もあの文章だけを抜き取って分析すれば、似たような見解を持つと思いますから。

ホロ ということは、秋じゃないんだ?

ケイン その通り。
この文章が出てくるシーン。実は、七月ニ八日なんです。

ホロ おもいっきり夏じゃん! それも、お盆前の。

ケイン ええ。この文章のあとに盂蘭盆会うらぼんえ (お盆)の言及もありますから、盆前はまず間違いありません。そもそも、文頭に日付が明記されていますからね。「二十八日」、と。

ホロ そうだったァ〜! 
榎と落葉に引っ張られたのかなァ。榎は冬の季語だけど。

ケイン おそらく。ただ、暮れ方の情景に落葉が重なったことで、秋を連想されたのであればやむを得ないことかと。秋は夕暮れ、と言いますから。

ホロ むぅ。結果的にそれっぽいだけの見解を語っちゃった……。
でも、言われてみれば納得ね。

ケイン お気になさらず。感想って、そういうものですよ。
ちなみに、上記の“風吹く秋の暮れ方”については、AIが生成した見解そのままです。主宰のななくさつゆりさんも、気づいた時点で修正しようとは思ったそうなのですが……。

ホロ そのままじゃん。何してんの主宰者。

ケイン まぁまぁ。もし選択問題ならペケがつくタイプの勘違いですが、こうした見解のすれ違いも生成AIの味……生成AIあるあるかなと思い、そのままにしたそうです。
生成AIってこういうトコあるよね、と。

ホロ そうだけど、ビミョーにいじわる。
抜粋で聞かれたんだからそういうときもあるでしょ。全文知った上で聞かれていれば、たぶん間違えないわよ。

ケイン いったん意見も出尽くしたところですし、軽くまとめてみましょう。


まとめ

例文

 さあっと風が来、ぱらぱらと榎の枝から葉が離れ散った。ほそい枝も一枚一枚の葉も、暮れのこる空のシルエットだった。かさかさと中空でか地上でか、落葉の音が鳴った。また、さあっと吹いた。押して、又どうっと吹いた。

幸田文『父――菅野の記』

情景

  • 過ぎゆく夏の暮れ方

  • 榎の枝から葉が舞い落ちる

表現技法

  • オノマトペ(「ぱらぱら」「かさかさ」「どうっ」)

  • 視覚描写(舞い散る葉、枝のシルエット)

  • 季節感(落葉の音、秋の風景)

  • 詩的な表現(「さあっと風が来」、「かさかさと中空でか地上でか」)

地の文の効果

  • 暮れ方の風景を思い起こさせる

  • イマジネーションを刺激する

  • 感情を引き付ける

  • 心に深い印象を残す


ケイン さて。今回は以上となります。

ホロ うーん、まだちょっと大げさすぎ?

ケイン こんなものではないですか。

ホロ どちらにしても、イマジネーションを刺激する文章って、とても素敵だと思うわ。

ケイン そうです。
地の文は技術。
体験を重ねることで、誰だって使いこなせます。

ホロ そしてそれは、読み手が想像を形にする助けになるの。少なくとも、ウチのつゆりさんはそう信じているみたい。
では、またこのゼミで検討しましょう。

ケイン お疲れ様です。ありがとうございました。

ホロ お疲れ様。またね!

参考資料
父・こんなこと(幸田文 新潮社)
センスをみがく文章上達事典 新装版(中村明 東京堂出版)


『文学のハイライト』をお楽しみいただくにあたって

あらかじめご了承ください
この記事の執筆には生成AIを活用していますが、文章は生成AIから出力されたままのものではありません。生成された文章から取捨選択し、元の意味を崩さない程度に修正しています。また、スムーズかつ楽しく読んでいただくために、会話文やキャラクター設定にも手を加えています。

『文学のハイライト』をお楽しみいただくにあたって

ということで、第2回でした。
いかがでしたか。
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いっしょに文学を楽しく深堀りしていきましょう。
どうか、お楽しみください。

次回は……ベタに、『羅生門』!

次のお話はこちら:芥川龍之介『羅生門』_物語の結びと余韻。

ななくさつゆり


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