その道で出会う人たち


「いや〜〇〇社長、やっぱり進め方が上手いわ」
職場の所長が言った。
俺のクライアントとの取引間に仕事をお願いしている加工業者さんの提案の話だった。
品質クレームについて悩んでいるところを、修理費を定額制にして、その費用をクライアントと弊社の2社で痛み分けをする方向だ。
これを聞いて、現状での最善、最適解かなと思った。
さらには加工業者さんはクレーム内容には関与しないかつ、仕事を受注もらえる形だ。
自社の利益も獲り、弊社とクライアントの悩みを痛み分けする形でどこかが大きく泣きを見ることない案に唸るほどだった。
頭が悪すぎる俺でもその社長の器量の凄さを肌で感じた。


話は変わって、また別の仕事の話。
代理店業の関連会社で集まる研修があった。
そこで簡単な自己紹介から始まり、意見交換、感想、質疑応答とちょっとしたプレゼン形式で人前で話した。
そのときに、講師の方から色々とご指名されたのだった。
俺が話した言葉をやたら引用して深堀してきた。
俺なんかより遥かに頭がキレるし、経歴からもそれぞれの仕事をしっかりやりきってきたのが話し方で伝わる人だった。
実は、俺は中身が空っぽなくせして外面はある程度良く振る舞うことはできるから、それっぽい話し方をして演じてしまったことを少し後悔もした。
講義は終わり、懇親会でお酒の場に移る。

「質問してくると思ったのに、結局こなくて面白くねーなって思ったよ」
「いいこと言ってたんだよ。だから惜しいなーって印象がついた」

飲みの終わり、帰り際に講師の方は俺にそう言った。
悔しさ半分、嬉しさ半分な気持ちになった。

仕事の面で、弊社は色々と杜撰な面が出てきている。社員も何人も続けて辞められてしまった綻びも見過ごせないほどになってきたし、日本の労働観にも辟易としてて仕事なんかもう辞めたいのだけどね。
それでも、その講師の方ともっと話すためにこのクソみたいな毎日をもう少しだけ続けるべきなのかと気持ちが揺らぐほどだった。

あくまで経験してきた上での話だが、人生って
「進む道の先に自分が追い求めてるものを持った人が必ずいる」
のだと思う。
そして、気持ち次第ではその人に必ず出会うようにできている。

俺は、格上の人に惹かれる。
もっと言うと、自分にはない考えや新しいこと、自分自身の言葉や哲学を持っている人が好きなんだ。
そして、そういう人に認められることで「生」を感じる人間なんだと言語化できた。
だからこそ「惜しいやつ」と良くも悪くも印象残したことに悔しさと嬉しさが入り混じった。


この人生哲学はなんとなく信じて生きていたけど、まさか嫌いな仕事でもそんな気持ちになるとは思わなかったよね。

飲めない酒を飲み、腹一杯中華料理を食べてゲロ吐きそうになりながら新幹線に乗った。
途中、品川駅で謎の営業マンのキャッチをスルーしたら舌打ちされたとさ。


きっと仕事は辞めるだろうけど。


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