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SAP使用経験を条件とする求人に潜む落とし穴 【転職】
最近、SAPトランザクション: MIGO,MIRO処理が夢に出てきて魘されました。
辞めてから暫く経ちますが、激務とプレッシャー環境で処理した経験が染み付いています。
こんな求人要件を目にした事があります。
求める人材
【必須条件】
以下いずれかのご経験
・受発注などの業務のご経験
・営業のご経験(渉外や折衝経験など)
・貿易事務などのご経験
【歓迎条件】
・SAPシステムを扱ったご経験などがある方
仕事の内容
■発注業務
■海外サプライヤー商品の輸入・配達手配
■MIGO(入庫)・MIRO(請求登録)処理
一見何も変哲もない求人例に見えますが、もしここがブラック企業だったらどうなるか?
ブラック企業の求人は自らブラックとは書きません。
このようなMIGO,MIROを含むSAP-MM(購買管理/在庫管理)を業務運用している会社は、経験者からすると警戒要素です。
何が警戒要素なのか、経験談と共に紹介します。
SAP MM(購買管理/在庫管理)
SAPに初めて触れたのは2社目のブラック企業です。
処理方法を教わった時、想定以上に使い辛いシステムで冷や汗をかきました。
SAPは財務会計、人事、製造、配送管理といった企業の多様な業務を、一つの統合されたシステムで管理できるビジネスソフトウェアです。
SAP MM(Material Management)とは、SAP社が提供する情報の一元管理を目的としたソフトウェアであるSAP ERPのうちの在庫管理・購買管理に特化したモジュールのことを指します。
システム処理作業を習得するのは得意な方だと自負していましたが、SAPは異次元です。
直感的な操作ができず、一つ一つの処理を新たな概念として覚えなければならない感覚です。
システムのここを使えばこういう処理が出来るだろうなというカンは全く通用しません。
また、殆ど口頭での引き継ぎだったので、メモを取るのに必死です。
メモを見ずに処理出来るようになるまで数ヶ月掛かりました。
MIGO,MIROとは
SAP MIGOは、物品受領(Material Goods Receipt)のプロセスを管理するためのツールです。MIGOは、企業がサプライヤーから受け取った商品やサービスの受領処理を行うために使用されます。
SAP MIROは、会社がサプライヤー(供給者)からの請求書を処理するためのツールです。例えば、会社が材料やサービスを購入したとき、そのサプライヤーから請求書が送られてきます。このツールを使って、その請求書をシステムに記録する作業です。
つまり、モノを仕入れた時のシステム上の仕入処理です。
操作は非常にシンプルで直感的です。とありますが騙されてはいけません。
sapnaviは難しいですが、こちらのサイトが購買発注プロセス全体を非常に分かりやすく解説されています。
融通が利かない
メモを手放せるようになるまで数ヶ月掛かったのは、システムが融通が利かないので、間違えるわけにはいかなかったからです。
間違えると非常に厄介な事が起きます。
例えば間違った保険料や物流費を入力してしまったとすると、それを簡単にデータ修正が出来る訳ではありません。
削除したい金額を、マイナスの金額でMIRO処理する事で相殺します。
そして正しい金額でMIRO処理をし直します。
※参考動画 (9分あたりにMIRO処理)
面倒なのが、この数字の打ち間違いが出荷処理後に判明した時です。
戻入処理(前職ではそう呼んでいました)という新たな処理も登場してきます。
要するに金額を少し直すのに何工程も踏まなければならず、かなりの時間が取られます。
ブラック企業 x SAP
単に使い辛いシステムなだけと思われるかもしれませんが、ここにブラック企業要素が加わると化学反応が起きます。
SAP残業
MIGO,MIRO処理はタイムリーな対応が必要な時は限定的で、基本的に余力がある時に行います。
当然ブラック企業では余力はありません。
営業関係、為替、貿易実務で日中は手一杯です。
SAP未処理の書類がトレーに積み上がっていきます。
急ぎの仕事を捌いているとあっという間に20時くらいに。
そこから疲れた頭でSAP処理を行う生活です。
再発防止策、ナシ
月次で処理漏れ等との戦いです。
毎月100件程処理していました。
100件正確な処理をするのは結構大変で、漏れがないか、金額が間違ってないかを確認しつつ慎重な登録が求められます。
登録作業は個々人の能力任せです。絶対に間違えるな、処理を漏らすなとプレッシャーで締め上げます。
再発防止策、運用で防ぐ方法を考える事は一切せず、ミスった社員を全員の前で締め上げる方式でした。
査定から引いておくと言われる同僚を見ました。
マニュアル、ナシ
SAP処理はMIGO,MIRO以外にも勿論あり、一通り習得するのに時間が掛かるにも関わらずマニュアルはありませんでした。
そして社員のSAP習熟にもムラがあり、この処理はAさんに、この処理はBさんにと、イレギュラー処理が発生した時に誰が知っているかは内容によります。
このイレギュラーはこの人じゃないと分からない、とブラックボックス化していました。
標準化の概念が浸透していなく、SAPマニュアルが無い事に疑問に思う人は殆どいません。
ここに入る後任者の苦しみを少しでも緩和できればと、私の知りうるSAP処理は全てマニュアル化して退職しました。
私の代わりとなった後任者へのせめてもの贖罪です。
転職前に知っておきたかった事
SAPを知らない人は、厄介な基幹システムだと認識しておくべきです。
私はここまで使い辛いシステムとは想像せず、転職してしまいました。
結果、購買発注プロセスを一通り習得するまで大変な思いをしています。
ブラック企業のような標準化されていないSAP業務環境であれば、地獄を見る可能性があります。
高度なシステムを扱うには適切な労働環境が必要です。
SAPを扱う環境が本当に問題なさそうか?転職の際はご一考下さい。
会社によっては基礎知識無しに初日からOJTにブチ込まれます。SAPのプロセス全体を把握したい方は、このような書籍やネットブログ等で基礎知識を補っていくしかありません。
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