安西水丸さんってモテただろうな。早稲田大学国際文学館村上春樹ライブラリーにて
この絵を描いたイラストレーターの安西水丸さんをご存知でしょうか。
安西水丸さん(1942-2014)は村上春樹さんの著作の装丁や挿絵のお仕事をたくさんされています。
その700点あまりの原画から約100点の作品が選ばれた展示が今、早稲田大学の敷地内にある早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)にて開催されています。
12月にたまたま、この「安西水丸展」のチラシをみつけたのですが、早稲田大学国際文学館にもいつか行ってみたいと思っていたので思わず大喜びしてしまいました。
しかも無料です。これはすぐに行かなくてはと次の週末に訪問を決行しました。
会場の早稲田大学国際文学館は、地図で見ると都電の早稲田駅からすごく近い場所にあることがわかりました。
東京都に唯一残る都電荒川線は(「東京さくらトラム」という愛称で親しまれています。)大塚駅や王子駅をほぼ中間点として三ノ輪駅~早稲田駅間を運行しています。
久しぶりに都電に乗りました。
早稲田大学国際文学館は建築家の隈研吾氏(早稲田大学特命教授・東京大学教授)によるリノベーションにより2021年4月に開館しました。また、同校卒業生でもある柳井正氏(株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長)が、この建物の改築費用の全額(約12億円)を寄付されたというのは有名な話です。
ここには村上春樹氏の著作や関連書が所蔵され、ギャラリーや閲覧スペースも充実しています。
私は以前この本を読んで、香川県のうどんのディープな世界を知りました。そして村上春樹さんがこういう内容の本も書かれていることに驚きました。
オーディオルームという部屋がありました。
村上春樹さんがコレクションされたレコードなどが展示されジャズがながれています。私が部屋に入った時かかっていた曲のレコードは、上記の写真のジャケットのものでした.
たくさんの人がこの部屋で思い思いにくつろいでいました。
このイスはすごい人気で常に満席でした。
受付の女性に「申し訳ありません。順番でお座りください」と言われている男性をみかけ、ああみんな待ってでも座りたいイスなんだと知りました。(並んで待っているということはありませんでした)
座るところが広くとられていて、靴を脱いで座っている方もいました。周りはかなり高く囲まれているため、すっぽりと包まれるような落ちつきが感じられると思われます。
ちょっと周りをウロウロして、空かないかなと待ってみましたが、皆さんまったりと本を読んでいらっしゃる。
また今度挑戦しようとあきらめました。
2階が展覧会会場です
そんなに広くはないのですが、作品はたくさん!色と光にあふれていました。会場に入ってくる若い女性たちが「かわいいー」「きれーい」とニコニコしています。
私は、安西水丸さんの作品が以前から大好きでした。
といっても、最初はパントーン・オーバーレイを使った作品しか知りませんでした。
パントーン・オーバーレイというのはフランスのレトラセット社が生産していた配色のために使うスクリーントーンで、必要な形に切り込んでつかうカラートーンです。
両親が経営していたデザイン会社にこのシートがあったため私も子供の頃使ったことがありました。色が豊富できれいな色ばかりなのです。この素材、私も大好きでした。現在は製造を修了しているそうです。
色も形も線も構図もほどよくゆるくて、
素敵さは完璧です。
それに水丸さんの作品は、どれをみても全然古びていません。
原画はどれも丁寧で美しく、いままで印刷物を見ていた時より、さらに感動しました。
家に帰ってこうやって写真におさめた作品をみていると、ちょっと違うなと言う気がしています。
原画のワクワク感が伝わらないのです。残念。
原画はもっと素敵なんです。
この作品なんて、水丸さんの作品の良さがもうたくさん詰まっています。絶対楽しそうにお仕事してるなあって見ているだけでニコニコしちゃいます。
水丸さんの作品って、よく見るとエッチな絵が多いなっていつも思います。(笑)絶対ふざけてるっていう絵柄も多数あり、お仕事仲間のみなさんと笑いながら批評してああでもないこうでもないと言っていたんだろうな。
水丸さんはきっとモテたと思うんです。
男の人にも女の人にも。
絵を見ていても、そんなお人柄画滲み出ているような気がしてしまいます。
お姉さんが5人いらっしゃって、
すごくかわいがられたそうです。
小さい作品もすごくシャレていて、いいなあ。
透明感がいいなあ。
そして影がね、またいいんですよね。
上の作品の一部を大きくしてみました。パントーン・オーバーレイをこんな風に使っています。
水丸さんの描く線は適当みたいだけど、グッときます。
今回の原画で、色鉛筆の作品もいいなあということに気づきました。
水丸さんの文字も素敵です。
この書籍は、村上春樹さんから「表紙は水丸さんの字でいきたい」とリクエストがあって作った装丁だそうです。
水丸さんのコレクションの一部も飾られていました。スノードームがお好きってことはいろんなところで書かれていたので、知っていました。それ以来私の中では「安西水丸さんといえばスノードーム」というくらい、なんだか強いイメージができあがっています。
お二人が出会ったのは1980年でした。水丸さんは38歳。平凡社を退社された年でした。当時村上春樹さんは千駄ヶ谷でジャズ喫茶「ピーターキャット」を営んでいて、ある編集者がそこへ水丸さんを連れて行ったのだそうです。
安西水丸さんは今はもういないのです。
それを考えるとウソみたいです。一度もお会いしたことないのに、寂しいだなんて言える立場ではないのですが、私のデザイナー時代にはいつも水丸さんの絵は隣にあって、憧れでした。
安西水丸さんは子供の頃絵を描くことが大好きだったそうです。
こんな文章が載っていました。
これを読んで、水丸さんは
楽しんで楽しんで絵を描き続けていたんだなあと思いました。
水丸さんの絵をみているとすごくそれがわかるような気がしました。
早稲田大学国際文学館1Fには「橙子猫-オレンジキャット」というカフェがあります。(余談ではありますが「橙」と言う文字は「だいだい」のことなんですね。恥ずかしながら今回初めて知りました。)
「オレンジキャット」という名前は、 村上ご夫妻が学生時代に経営をはじめたジャズ喫茶「ピーターキャット」の由来にもなっているピーターという 猫がオレンジキャットと言われる種類だったため、それにちなんで命名されたのだそう。 早大生が経営しているのだそうです。
かわいいピンバッジが売っていました。
じつはひそかに真ん中下の色とりどりな飴?のステッカーだといいなと思っていました。そして、ピンバッジは落花生を買おうと考えていたのです。
でも、ステッカーは・・・
それで、なんとなくピンバッジも満足してしまって、買いませんでした。
なんでかな。
ピンバッジはつやつやキラキラしていて、水丸さんのパンテーン作品のときめきを思いださせてくれるから、ステッカーとは全然違うって、わかってはいたのですが。
やっぱり買えばよかった…
期間中に、もう一度行く理由ができました。