食べること〜取り込む・噛む・飲み込む〜【後編】
前編では、食べることについてどのように考えたらよいかと
食べる機能の発達についてまとめてみました。
後編では、実際に寄せらせたご質問への具体的な対応をまとめてみます。
早食べ・丸飲み
口の動きを観察して、噛んで食べる準備ができていそうでしたら、「噛んで食べる」の成長を意識して援助してみます。
噛む準備はできている、といっても噛む力はまだまだ強くないですので、歯茎で噛み潰せる固さが適当です。目安は肉団子くらいですね😊
早食べ、丸飲みにどのように対応するかいくつかポイントをお伝えします。
⑴食事前に空腹になりすぎないようにする
空腹になりすぎるとがっつきますので、どうしても早食べ、丸飲みをしてしまいがちです。
食事まで時間がありお腹が空いていそうなら、食事に影響が出ない程度に、ちょっと何かを食べてもらいましょう。
その時には、お菓子など甘味のあるものではなく、茹でた野菜のスティックや、ひと口おにぎりなど食事のひとつになるようなものを薄味で。
様子を見ながら、唾液で柔らかくして噛む必要のあるフランスパンなどを一切れ試してみるのもいいかもしれません。
⑵食べ物の大きさを噛み切って食べる大きさにしてみる
食べ物の大きさや固さが、小さすぎる、柔らかすぎる、ということもあるかもしれません。口の中に食べ物をどのくらい一度に入れるかを確認しながら、食べ物の大きさや固さを調整してみます。
もし、大きめの食べ物を噛み切らずに全部いっぺんに入れてしまうようでしたら、途中で止めて「がぶっとして」と噛み切るように助けてあげてみてください。
⑶汁物、水分を少し遠くに置いておく
お子さんによっては、味噌汁やスープ、お茶や牛乳などと一緒に、食べ物をよく噛まずに流しこんでしまっている場合があります。
そんな時は、あらかじめ汁物や水分を遠くに置いておき、求められたり適当なタイミングで声をかけて渡してみましょう。
⑷一緒に食べることを楽しむ
2歳も近くなってくると、そろそろコミュニケーションを取りながら食べることが楽しめる時期に入ってきます。
「今日のおかずは〇〇だよ〜」
「美味しいねえ〜もぐもぐもぐ」
「お母さん、がぶっと食べちゃおう〜」
噛むことを子どもに強要したり、噛まないことを注意するのではなく、一緒に「もぐもぐ」を楽しむ気持ちでみんなでご飯を食べます。
少食・えづく・時間がかかる・偏食・遊び食べ
少ししか食べない
好き嫌いをする
すぐにオエッとなる
食事にものすごい時間がかかる
食べ物で遊ぶ
こんなご相談も大変多く聞かれます。
『子育てベースのお話』でも何度かお伝えしてきました。
これらの記事の中に、対応のコツをまとめてありますので、ぜひご覧ください。
食べない、にまつわるお悩みについてとても大事だな、と私たちが思うのは
「食べさせようと頑張らない」
です。
子どもは今、食べることを練習中なのです。
ちょっとずつ、ちょっとずつでいいのです。
月齢・年齢で「このくらいの食べ物」と見本が出ていますが
それはあくまでも見本。
「うまく飲み込めないな」
「噛めないな」
と感じたら、前編にある食べる機能の発達段階に照らし合わせて
少し前の食べ物に戻しても良いのです。
量も、見本や基準量はあくまでも参考で
子どもがなんなく食べ切れる量で十分です。
食材の種類もそんなに多くなくて大丈夫です。
慣れていて食べる食材から
新しい食材をほんのひとくち
栄養の偏りが・・・
大きくならない・・・
食事のマナーが・・・
おとなの常識から見た視点は一旦脇に置いておき
食べさせよう、と一生懸命頑張らないことです。
”食べる姿勢”を整える
早食べ・丸飲み、少食・偏食、いずれの場合でもぜひ気をつけていただきたいことが「姿勢」です。
座っている姿勢は食べる機能の発達にとても関係しています。
食べ物がちゃんと見渡せるか、手を伸ばしやすい位置か、ずり落ちて座ったり前屈みになったりしていないかを見ます。
また、座ったときに足がぶらぶらせず、足板や床にしっかり足がついていることも大事です。膝が直角に曲がり、足裏がしっかりつくように調整してみてください。
椅子は、子どもにとって座面が広すぎることがままあります。
座面が広いと、子どもの足が全部座面に乗ってしまい
足が伸びたままになったり
”あぐら”のような座り方になります。
今、使っている椅子が子どもにちゃんと合っているかチェックしましょう。
もし座面が広すぎて、子どもの足が全部椅子の座面に乗ってしまっているようなら
膝が直角に曲がるところまで子どもを前に出して座らせ、背中にバスタオルなどを入れて安定させます。
ハイローチェアなどを使っていて、足板や床に足裏がしっかりつかない場合には
雑誌を重ねる
牛乳パックで箱台をつくる
などして、工夫してみてください。
子どもは身体全体を使って成長発達していきます。
「食べる」という行為は、口だけのお話ではないのです。
手・足からもたくさんの感覚刺激を取り入れながら
段々と様々な感覚がまとまりを持って身についていきます。
改めて、食べることとは
子どもにとって「食べる」ことは
全てが新しいことへのチャレンジです。
そして、食べること自体が全身の運動発達と関係しています。
首がしっかりと座り
座位を保てる体幹があり
物をつかんで運べる手
身体を支える足
おとなが「食べさせる」
のではなく
子どもが「食べる」
自分で食べ物を取り込んで、噛んで、飲み込む。
食べるということも一連の運動である
ということを意識すると、少し違った見方ができるかもしれません。