ジル・ドゥルーズ& フェリックス・ガタリ『千のプラトー 資本主義と分裂症』  読書メモ(21)

12 1227年ーー遊牧論あるいは戦争機械②

・クラストル の 記述 に よれ ば、 自分 の 威信 以外 の 制度 的 武器 を もた ず、 説得 以外 の 政治的 手段 を もた ず、 集団 の 欲求 を 予知 する こと 以外 の 規則 を もた ない のが、 首長 の 置か れ た 状態 なの だ。

つまり、首長 とは 権力 者 よりも リーダー や スター に 似 た 存在 で あっ て、 支持 者 に 否認 さ れ 捨て られる という 危険 に 常に 脅かさ れ て いる ので ある。さらに、 クラストル は、 国家 形成 を 妨げる 最も 確実 な メカニズム として原始社会 における 戦争 を 規定 し て いる。

というのも、 戦争 は 諸 集団 の 分散 性 と 切片 性 を 維持 する からで あり、 また、 戦士 は 戦功 を 蓄積 する 過程 に 引きずり込ま れる 結果、 威信 に 満ち た、 しかし 権力 には 無縁 な 孤独 あるいは死に導かれるからである。

・群れ や 徒党 は リゾーム 型 の 集団 で あり、 権力 諸 機関 に 権力 を 集中 さ せる 樹木 状 集団 に 対立 する。 したがって、 一般的 に 言っ て、 徒党 集団 は、 盗賊 や 社交界 の 場合 でさえも、 戦争 機械 の 変身 し た 姿で ある と 言う こと が できる。 戦争 機械 は、 中心 化 さ れ た 社会 を 構造 化 する 国家 装置 ない しそ の 等価 物 とは 形式 が 異なっ て いる からで ある。

規律が軍隊で厳しく要求されるようになるのは国家 が 軍隊 を 所有 する とき なの だ から、 規律 は 戦争 機械 の 本来 の 性質 で ある などと 言う べき では ない。 しかし 戦争 機械 は 規律 以外 の もろもろ の 規則 には したがっているのである。

・しかし、 戦争 機械 は、 その 外部 性 形式 の ゆえ に、 みずから 変身 する こと によって しか 現実 には 存在 し え ない。戦争 機械 は、 産業 上 の 革新 において、 技術 上 の 発明 において、 商業 上 の 販路 において、 また 宗教 上 の 創造 において、 つまり 国家 によって 副次的 にしか 所有 さ れ え ない こうした 流れ や 傾向 において、 現実 に 存在 する のである。

外部 と 内部、 変身 する 戦争 機械 と 自己 同一 的 国家 装置、 徒党 集団 と 王国、 巨大 機械 と 帝国、 これら は 相互 に 独立 し て いる のでは なく、 一つ の たえ ざる 相互作用 の 場 において、 共存 し かつ 競合 し て いる と 考え なくなく ては なら ない。 この 同じ 相互作用 の 場 が 諸 国家 の 内側 に 内部 性 を 画定 し、 他方 では 国家 の 支配 から 逃れ 去る、 あるいは 国家 に 対抗 する もの として 外部 性 を 描き出す の だ。

・遊牧 的 科学 の「 学者」 は あたかも 二つ の 炎 に、 すなわち 彼 を 養い 発想 を 与える 戦争 機械 の 炎 と、 彼 に 理性 の 秩序 を 押しつける 国家 の 炎 に、 挟ま れ て いる かのよう だ。 こうした 立場 を はっきり 示し て いる のは、 両義 的 性格 を もっ た 技師( とりわけ 軍事 に関する エンジニア) という 人物 で ある。

・国家 では 家族 は その 基礎 細胞 で ある の に対し、 戦争 機械 において は 家族 は 群れ の ベクトル で ある ため、ある 家族 が ある 時点 で 有する 最大限 の「 父系 的 連帯」 を 実現 する 能力 に したがっ て、 家系 は ある 家族 から 別 な 家族 へ 移動 する こと が できる。

国家 という 有機体 の なか での 家族 の 位置 を 決める のは その 家族 の 公 の 名声で ある が、 これ と 反対 に、 連帯 を 産み 出す 密か な 力量 ないし 徳 と、 それ に 対応 する 家系 の 移動 性 こそ が、 戦争 団体 における 家族 の 名声 を 決定 する ので ある。

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