目には見えないけど存在する空気、世間①
人生で初めて心を病んだときに、今まで、
漠然と感じていた息苦しさについて考えるように
なりました。
単純に、この人苦手だな、嫌いだな、面倒な人
だな、などの、個々人単位だけではなく、
集団レベルで、自分の思っていることや、やりたいと思うこと、言いたいことが制限されるような
感覚。
個人それぞれの考えではなく、集団の意に沿うような言動、行動、態度が求められ、集団の意に
反する、あるいは、求められることができない人に対して、誹謗中傷、仲間はずれ、無視などの制裁が加えられる。
そんな経験をしたり、実害はなくても、苦しい思いをした人も少なくないのではないでしょうか。
そんな、目には見えないけど、確かに存在し、
個人を苦しめるものとして考えられるのは、
①空気と、②世間が挙げられると考えます。
この記事ではまず、空気について書いてみます。
①空気とは
私が中学、高校生くらいのときに、"空気読めよ"、
"KY"などの言葉がよく言われてました。
今でもまだ使われているかもしれませんが、
取り上げるのは、こういう文脈で使われる"空気"のことです。
私が、この空気というものに興味を持ったきっかけは、"「超」入門 空気の研究 日本人の思考と行動を支配する27の見えない圧力"(鈴木博毅 ダイヤモンド社)という本との出会いでした。
この著書は、「空気の研究」という、山本七平氏の著書の入門書となっており、山本氏の著作をもとに、空気とはなにかについて解説がされています。
私の力不足もあり、すべてを記事で網羅することはできないため、空気について、ポイントを3つに
まとめてみたいと思います。
1.空気=ある種の前提
まず、空気とは、「ある種の前提である」、
と定義されています。
・空気が集団を支配している=前提が集団を支配して
いる
・空気を読む=前提がなにか読む
など、空気を前提と言い換えると、目に見えな
かったものが、見えてくるのではないでしょうか。
この空気(前提)というのは、ときに合理的な判断や、科学的な根拠などよりも優先されることで、
不幸な結果をもたらすことにもなりうるのです。
著書の中では、太平洋戦争末期に行われた、
戦艦大和の沖縄への特攻が例として挙げられて
いますが、ほかにも、企業の粉飾決算、データ
改竄や偽装、いじめや、それらにともなって被害を受けた人、あるいは命を落としてしまった人などが出た場合、外から見れば、なぜこんな不合理なことが見過ごされてきたのか、どこかで止められ
なかったのか、と思うようなことがたくさんある
のではないでしょうか。
外から見れば、おかしいと思うことが、
なぜ特定の集団や場ではよしとされてしまうのか。
それは、「同調圧力」が働くからではないでしょうか。
2.空気(前提)から生まれるもの=同調圧力
同調圧力自体はよく耳にする言葉だと思いますが、
なぜこのような力が働くのか、について、
よくわかりませんでした。
同調圧力は、特定の集団内で空気という前提が
できたあとに、前提からはずれるような者に
対して行われる、嫌がらせ、攻撃、弾圧のことを
指します。
たとえば、表向き、みんなが豊かになるために事業をやろうといいながら、集団内の特定の個人、
あるいは、ごく一部のグループだけが得をするように利益を誘導するような前提を作る。
その後、他の構成員が事実に気付いたとしても、
集団内の特定の個人やグループの不正がただされるわけではなく、逆にその事実に気づいた側が集団内で叩かれ、見せしめに処分される。
結果、集団は腐敗し、世間に明るみになったとき
には、行き着くところまでいってしまった。
日本の企業や組織、団体で起こる不祥事や事件で
耳にするようなことではないでしょうか。
それならば、前提をなんとかできないのか、
と思うかもしれません。
しかし、前提となる空気が、容易に消えないのは、「感情」と結びつくからだというのです。
3.空気(前提)を強化するもの=感情
前提となる空気が、感情が結びつくことで、
大きな力を得るようになることの解説のなかで、「臨在感」と「臨在感的把握」という、聞きなれ
ない言葉が出てきます。
それぞれ以下のように定義されています。
著書では、カドミウムが例として挙げられて
います。
カドミウムと聞くと、公害のイタイイタイ病を思い浮かべる方もいると思います。
カドミウムについて取材に来た記者に、カドミウムとはどんなものだと質問された研究者が、カドミウムの金属棒を差し出すと、記者はのけぞり、研究者はさらに、金属棒をなめてみせたそうです。
イタイイタイ病について取材していた記者たちは、取材先で公害に苦しむ人々を見て、苦しみの原因がカドミウムにあるらしいと、因果関係がわかる
(臨在感)と、そこから、カドミウム=怖いもの、
という対象と感情を結びつけて理解(臨在感的把握)
する。
カドミウムの例でいけば、怖いものと感情で理解
しているひとにとっては、危ないから排除すべき、ということが前提になり、カドミウムの性質を理解している研究者などは、扱い方を間違えなければ
問題ない、ということが前提になるでしょうか。
こうした、対象と感情を結び付けて理解したとき、時として、事実に基づいた判断ではなく、
被害者がかわいそうだから、態度が気に入らない
から、気持ち悪いから、などの感情によって集団が作られ、世論を形成し、対象を叩く、ということが起きるのではないでしょうか。
芸能人や著名人のスキャンダルがことさら話題に
なるのも、事例の一つだと思います。
もちろん、いい場合に働くときもありますが、
前提となる感情が、誰かによって意図的に作られたものである場合もあるので、感情だけではなく、
本当にそうだろうか?、と思うことも大切なのでは
ないでしょうか。
以上、空気とはなにか、なぜ空気は息苦しさを感じさせ、目に見えなくても存在し続けるのかに
ついて書きました。
私の力不足もあり、わかりづらい部分、説明が足りないところが多々あったと思いますが、ここまで
読んでいただいた皆さんには、お礼を申し上げ
ます。
日々暮らしていて、息苦しさを感じている方たちにとって、その正体を知るためのきっかけになればと思います。
次は、空気と関係のある、世間について書いて
みたいと考えています。