Roots and Routes Vol.2 インタビュー 遠藤玲希央さん(後半) - 将来に悩める若者たちへ!

20200615_遠藤 記事サムネ (1)


はじめに

Roots and Routesプロジェクトは、今を生きる社会人の人生のRoots(ルーツ)を探りることで、これから進路選択をしていく学生のRoutes(道)のヒントを提供したいという思いで始まった、HLABの新プロジェクトです。 “人生選択”に悩まされる私たちの同年代の人たちの一つの道標になるような記事をみなさんにお届けします。


今回のインタビュアーは、HLAB大学生運営委員の森川芹と古谷理彩で、
遠藤玲希央さんにお話を伺います。

遠藤玲希央さん(れっきぃさん)
生まれて初めて話した言葉が「うま」なくらい動物好き。2012年高2でHLABのサマースクールに参加。東京大学獣医学科に入学後も運営委員として活動。その後株式会社parnoviを創業しペットの飼い主向けスマホアプリを開発中。
   


前半では、多様な経験や環境変化の現在へのキャリア及び価値観形成への繋がり、また幸運を引き寄せるためのマインドセットや、遠藤さんがそのために実際に取った行動などもお聞きしました。まだ読んでない方はこちらから
後半となる今回は、成功や失敗との向き合い方や、ご自身が運営する"parnovi"を通して形作りたい理想の社会の姿など、遠藤さんならではの考え方を伺います。

また、みなさんの将来に対する”わからない”に対するヒントを見つけることができる記事にしていくために、こちらのフォームから記事の感想・これから特集してほしい人物を募集しています。Roots and Routesを応援したいと思った方は、記事を読み終わった後に、是非ご回答をよろしくお願いいたします!

うまくいかないことは、解釈を変える。すべてを糧に変える考え方。

- 芹:れっきぃさんがこれまでの人生で挫折や壁にぶつかった経験とかはありましたか?

当時壁だと思っていたことはあって、例えば高校2年生でHLABに参加する前までは、虐められてたわけじゃないんだけど、学校が嫌だった。っていうのも学校でも特待生もらうくらい頑張っている子だったの。でもそれをよく思わない子っているじゃん。

- 芹:高校特有の「あれ」ですね…。

俺が頑張るたびに「ウェーイ特待生〜!」みたいな弄りをしてくる奴らがクラスに5人くらいいて、それがすごい嫌だったのね。特待生とったのは中3とか高1とかだったんだけど、その後「俺どうして頑張ってるんだろう… ?」って思っちゃって、その後すごい成績下がっちゃったの。勉強頑張ることがばかばかしくなっちゃって。
それで学校いる時に自分らしくいられなくなっちゃったんだけど、塾とかHLABとかにはそいつらいないから、めっちゃこんな感じの俺なの。(笑)自分を押し殺して生きなきゃいけなかったのはしんどかった。
あとは1回大学落ちて1年浪人したとかもあるんだけど、それはただ俺が勉強しなくて、自分が悪かっただけなんだけど。

でも、壁だと思うことはあるんですけど、「糧になった」と今は思ってます。っていうのも、結構俺は過去をポジティブにすり替えちゃうタイプで。よく自己分析とかする時にライフチャートを書くじゃないですか。あれ、僕常に生まれた時から今まで右上がりになっちゃう人なんですよ。間違いなくネガティブな経験もあるはずなんですけど、結局全部自分にプラスになっていると解釈しちゃうんです。

「今辛い」ってことはあるけど、振り返って考えた時に「壁だった」と思うことはあんまりなかったなって思っちゃうタイプで。だから言うならばそこって感じですね。

- 芹:じゃあ今でも、「壁にぶち当たってもなんだかんだで次のステップに行けるっしょ」っていう気持ちなんですか?

そうそう、そういう感じ。最悪のケースを何パターンか考えても「死にはしないわ」と考えちゃうので、あんまり思いつめることとかないんですよね。

ちょうど5日くらい前にTwitterで見て確かにと思ったんだけど、「悩むって思考の放棄だよね」っていう。「考える」時は答えが出る前提で考えるけど、「悩む」時は答えが出ない前提でうじうじ悩む。だからよく言われる言葉だけど、結局「正しい道を選ぶ」んじゃなくて「自分の道を正しくする」ことに尽きるというか。

- 芹:なるほどー。

全ての選択が正しいんだから、「人生において俺はこれを選ぶ」と思えればいいんじゃないかなと思っていて。その納得感をどのように醸成するかっていうところができれば、壁にぶち当たった時に「どれがいいか」じゃなくて「将来的にどれを選んだらこれでよかった」って思えるから、あまり壁と思ったことはないですね。

- 芹:面白いなぁ。ありがとうございます。ちょっと戻ってしまうんですけど、じゃあ普段感情的に落ち込むことは少ないですか?

うーん、落ち込む、はないかもしれないですね。

- 芹:じゃあ常にハッピーな感じですか?

実は、noteに「うまく行かないことについて悩む必要がなくなる方法」っていう題でまとめてるんですけど、これはメンタルモデルという本の著者の方とのお話をまとめたnoteなんですよね。簡単にまとめると「実際に起きている事象と感情を切り離して考えれば、全てを受け入れられるよね」っていう。
例えば、「試験に落ちたから悲しい」っていうときも、実は「試験に落ちた」という事実と「悲しい」という感情は本当は別物なんだよね。試験に落ちた、という事実には良いも悪いもない事実でしかなくて、それを「悪いこと」と捉えてしまうのは自分の評価、解釈でしかない。事象はタイムマシンでも使わない限り変えられないけど、自分の中で理由づけをしっかりできれば、解釈は変えられる。

さっきの話だったら「試験に落ちたから絶望」とも思えるし、「来年は偏差値が5高い大学に入って人生を変えられるかもしれない」という解釈もできる。「事実と解釈は違う」っていうことに気付けると、あんまり落ち込んだりしないっていうか、「あー、こんなことが起こったなぁ、そうかぁ」としか思わなくなる。「今日はじゃがいもかー(事象)、どうやって料理しようかな(解釈)」っていうノリで。(笑)

- 芹・理彩:(笑)。

人参がきた!じゃがいもがきた!っていう「事実」に対して、料理っていう「解釈」は変えられるので、あんまり事象に左右されないというか。「どう今日は料理しようかな」っていうノリ。

- 芹:じゃあ側から見たら落ち込みそうなことでも、自分で解釈してその事実を受け入れられるっていう。

そうそう、まさにその通り。周りは事実と解釈を切り離せていないから、「試験に落ちた」という事実だけで「かわいそう」と思っちゃうんだけど、「いや、別にかわいそうじゃないぞ?」っていう。(笑)

- 芹:それはめちゃめちゃ面白いです。そういうメンタリティは元々れっきぃさんに備わっていたんですか?

いや、でもこの2年くらいかな。メンタルモデルの話を聞いて、その考え方を体系的に自分で解説できるようになったのは本当にこの1年くらいなんだけど、それまでは落ち込むことも結構あったかな。でもその分「まあしょうがないか。どうにかするしかないし。」と思っていたから立ち直りは早いタイプだった。でもここまで達観して考えられるようになったのは本当にここ1,2年くらいですね。

- 理彩:先ほどライフチャートが今までずっと右肩上がりっていうお話があったと思うんですが、メンタルモデルの考え方を身につけるようになる前は結構波があった感じですか?

いやー、どうだろう。でもHLAB時代にワークショップで描いたライフチャートも右肩あがりだった気がする。(笑)結局、今やりたいことをやっていたら常に今が一番幸せと思える。とりあえず、今と昔を比べてどちらが良いかはわからないけど、悪くなっていないとはいえるというか。(笑)昔と比べて≧(大なりイコール)で、下がってはいないことだけは言えるなって。そうすると真横一直線だとつまらないから、それなりに右肩上がりに上がっていくグラフになっちゃう。絶対に人生は悪くはなっていないな、という感覚かな。

- 理彩:今日の冒頭でも、「今日世界が終わっても満足」っていうお話をされてましたよね。

そうそうそう。特に後悔とかやり残したこととかはなくて、「やりたい時に今やろう」というタイプなので。逆にいうとすごいポジティブでナルシストだと思われちゃうかもしれないんですけど、「別に死んでも後悔はないけれど、今これから社会を変えていく僕が死んだら世界にとって損失だからまだ死なないでおこう」って思っています。ポジティブすぎて申し訳ないんですけど、「今死ぬともったいないから、社会のために生きててあげようかな」っていう感じ。(笑)

- 芹:なるほどー。(笑)本当にそう思います!


これからの目標は、「頑張っている人が報われる社会をシステムとして作る」こと

- 芹:今の自分に満足しているかというところと、逆にキャリアも含めた人生で不満に思っている部分があれば教えていただきたいです

現在向いている方向性としては満足しています。ただ、まだ全然ゴールには程遠いと思っているのでまだまだ自分にできることはあると思っています。やりたいことをやって0→1はできていても、まだ社会にインパクトを与えたり、社会的に価値のある結果を生み出したりすることができていないと思います。「頑張ってるね」って言われるのではなくて、ちゃんと誰かに良い影響を与えたり、世の中を動かしたりっていうところをちゃんとやっていきたいという思いがあります。

- 芹:れっきぃさんが世の中に生み出したい「結果」というのはどのようなものでしょうか?

やっぱり1番今の延長にあるのは、社会のビジネスと倫理観が両立する社会というか、頑張っている人が報われる社会をシステムとして作りたいという思いがあります。自分の領域は動物なので、まずは動物から理不尽なことで嫌な思いをする人がいなくなって、正直者が日の目を浴びる世界を作りたいです。
それこそ高校生の時に頑張っているのにも関わらず、からかわれた経験が原点にあると思います。あと、小4くらいの時に毎日4〜5時間くらいソーラン節を自宅で練習して、運動会の練習でキレキレに踊っていたら「うますぎて目立っているから、そんなに頑張らなくていいよ」と言われたことがあるんです。「なんで俺が頑張ってるのに、手を抜かなければいけないんだ!おかしくない、それ?」と憤りました。出る杭が打たれる社会ってこういうことか、と小学生ながらに思って、理不尽な社会に対しての違和感を感じました。

- 芹:聞いていて、世の潮流の能力主義、成果主義というよりも、頑張っているのに報われていない人に対して光を当てるということをれっきぃさんはやっていきたいと考えてらっしゃるのかなと感じました。

まさにそうで、現在のサービスでも悪徳業者を潰すというよりも、地方の小さくて地理的にも行きづらいお店でも、良いビジョンを持っていて頑張っていれば、有名になれるようなシステムを作れれば素敵だなと思っています。

- 理彩:先ほどから「倫理とビジネスの両立」というキーワードがれっきぃさんのお話や、事前に拝読したnoteの方でも使われていたかと思います。近年「ソーシャルビジネス※1」や「エシカル※2」という言葉が流行っていると思うのですが、あえてレッキーさんが「倫理とビジネスの両立」という言葉を使ってらっしゃるのには何か意図があるのでしょうか?

【※1 貧困、差別をはじめとした社会問題解決を目的とした事業のこと。】
【※2 Ethicial。直訳すると「倫理的な」という意味。ここでは、「環境や社会に配慮している」という形容詞として使われている。】

あんまり考えたことはなかったけど、ペットの飼い主さんたちは横文字が苦手なので、「意識高い」と思われないようにするためかな。(笑)飼い主さんたちはそういう言葉に疎いので、「エシカル」や「ソーシャルビジネス」といった言葉がピンと来ないことも多い。

結局、伝えたい言葉は伝えたい人に合わせて使わないと伝わらない。そういう界隈の人には、ソーシャルビジネスという文脈で話すこともあるんだけど、普段parnoviのことを説明する時はあんまり使わないことが多いですね。

- 理彩:なるべく多くの人に分かってもらえるようにということですか?

そうそうそう。あとうちはあえてソーシャル色を出さないようにしてて。保護犬とかの活動をしている団体さんもたくさんあると思うんですけど、それはその文脈でやっていて良いと思うんです。でもparnoviの活動でソーシャル色を出してしまうと、「あ、また愛護活動ね。」と思われかねない。新宿駅前とかで募金活動をしている動物愛護団体を見ても、「ああ、またやっているよ」とあまり良い印象を持たない人も多いでしょ?

だからparnoviは「ただ便利で楽しいアプリ」と見せるように心がけています。
メルカリも似ていて、便利だから使った結果循環型社会に繋がる、という社会問題の解決に寄与していて。その考え方はとても素敵だなと思っています。メルカリは別に「メルカリでいらなくなったものを売れば、ゴミが減って地球温暖化防止に繋がります!」なんてアピールしていない。でもみんな便利だから使う。そういうシステムをparnoviでも作りたいと思っているから、俺個人で発信する時はソーシャルなことについてもいうけど、parnoviではソーシャル色を出さないようにしています。

- 理彩:便利なアプリを使っていたら、気付いたら社会が良くなっていた、と。

そう。「気付けば社会が良くなっていた」という形でいいと思っていて。っていうのもそうじゃないと当事者意識のない人にアプローチできないと思うんです。意識の高い人は社会貢献になると知ったら行動を起こしてくれるけど、社会貢献をしようと普段から思っていない層は「ふーん」としか思わない。社会貢献に関心がない人に対して、「そんなあなたにもメリットだよ!」という見せ方をしたいです。

結局「誰が何かをやるか」という話

- 理彩:今倫理についてのお話があったかと思うんですが、れっきぃさんの領域である動物と関連して、もう1つ質問があります。最近SNSなどで改正動物愛護法についてのニュースを多く見かけるようになり、数値規制に関して反対運動が起こっていることを知りました。その中で動物業界に関わってらっしゃるれっきぃさんはどのようなお考えを思ってらっしゃるかお聞かせ願いたいです。

最近二階堂ふみさんをはじめとしたセレブリティが発信していると思うんですけど、そのことについては、正しいと思うし、賛同しています。結局知識があったり、世の中をよくしたいと考えている人が動かないと、良い方向には動いていかないと思う。ムーブメントを起こすことで、「なんだ、なんだ!Twitterで二階堂ふみが何か言っているぞ!」というように知る人がいる。

結局「誰が何をやるか」という話で、知名度とか発信力とかがある人とか、そういうアプローチをすべき人もいる。俺はそういうアプローチを取らないっていうだけで、獣医っていうポジションから根回しして、仕組みを作ることをしています。それは獣医師に対する発信力のない二階堂ふみにはできないことですよね。ペットのビジネスとしてゼロイチを作ることは俺の方が得意だから、それをparnoviを通じて行っていきたいと思っています。

俺はTwitterでは啓蒙感を出さないっていうスタンスを持っているから、二階堂ふみと同じような発信はしないけど、向かっている方向は一緒。ターゲットが違えばやり方も違うから、アプローチは違っていいと思ってる。啓蒙する人によって動かされる人たちもいるけど、俺は意識すらない人々をシステムで動かしたいと思っています。

- 芹:向いている方向は同じでも、立場は違う、という。

そうそう。

- 芹:納得しました。そこのゼロイチの部分をやることで、社会の働きかけるというスタンスを貫いてらっしゃるのがかっこいいなぁと思いました。

- 芹:計画的偶発性のお話や、事実と感情の解釈を分けるというお話、またparnoviに対する思いまで、たくさん語っていただいて、感銘を受けました。今日は本当に興味深く、面白いお話をありがとうございました。


まとめ


2回に分けてお届けしたれっきぃさんへのインタビューは、これまでの多様な経験から、その中で培ったマインドセットまで、盛り沢山の内容でしたね。現在話題になっている改正動物愛護法改正について、れっきぃさんの立ち位置を伺えたのもとても興味深かったです。れっきぃさんの「失敗」の捉え方や、幸運の引き寄せ方などを参考にして、読者の皆さんがこれからの人生やキャリアをポジティブに歩んでいけることを願っています。
インタビューでも登場した、「頑張っている人が報われる社会」の実現のためにれっきぃさんが現在運営されているアプリparnoviもぜひチェックしてみてくださいね!

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遠藤玲希央さんご経歴

株式会社parnovi 代表取締役。東京大学農学部獣医学課程在学。
95年沖縄生まれ。父親の仕事の関係で幼少期を南米ウルグアイと中米パナマで過ごし、ガラパゴスやアラスカの大自然を目の当たりにして動物の道へ進むことを決意。
高校2年生のときにHLAB2012に参加。
大学入学後には、ブラジルやアフリカの獣医大学を単身で訪問したり、英語スピーチで全国優勝を経験。
HLAB2015~2017で運営委員も務め、2000人のアラムナイコミュニティのマネジメントを担当。
その後獣医学科に所属しながら、様々な経験の中で現在のparnovi(ぱるのび)の構想を得る。
その事業案で大学4年次に東京都の主催するビジネスコンテストTOKYO STARTUP GATEWAY2018にて最優秀賞&オーディエンス賞を受賞。
その後2019年6月に株式会社parnoviを設立。現在はペット社会のビジネスと倫理を両立するべく、ペットの飼い主向けスマホアプリ”parnovi”を開発中。


おわりに


Roots and Routes プロジェクトでは、今を生きる社会人の考え方や過去の経験をお聞きして、若者の進路選択のヒントになる記事を作っています。
また、みなさんの将来に対するヒントを見つけることができる記事にしていくために、こちらのフォームからフィードバック・特集してほしい人物を募集しています。
コロナ禍で先行きが不透明な世の中だからこそ、読者の皆さんに寄り添った記事にしていきたいと思います。これからコンテンツもお楽しみに!

今回のインタビュアー

森川芹
日本の大学4年生。HLABでは東京の実行委員長を務める。最近の趣味は1巻から最新刊までONE PIECEを全て読み直すこと!

古谷理彩
日本の大学1年生。HLABでは広報局でイベント係として奮闘中。最近やっとキャンパスライフが始まり、大学への行き方を覚えるのに苦戦中!


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