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星が見えなくなった日
小学生の冬、理科の授業でオリオン座を見つけてきて描く宿題が出た。
しかし私には星が見えなかった。
私はかなり目が悪い。
小4の頃から段々と視力が落ちていった。
その宿題が出た日、私は宿題をやろうと近くの公園に出かけた。
夕方の時点では雲一つない晴天だったので、星は綺麗に見えるはずだった。
しかし先生に指示された方角の空を見てもそこに星は見当たらなかった。
時間と共に動くと聞いていた私は夜空全体を見渡した。
10分は粘って探したが、私の目に星が映ることはなかった。
きっと夕方以降薄く雲が広がったのだと思い、その日は諦めて家に帰った。
しかし、翌日学校で聞いてみると友達は見えたというのだ。
おかしい!と思いながら、先生に宿題をやっていないと言われるのが怖くて、人生で初めて人の宿題を写させてもらった。
真面目に宿題をやって過ごしてきた私には大きなショックだった。
自分にはどうしようもない何かのせいで、宿題をやりたくてもできないなんてことがあるのかと。
それと同時にもう一つショックだったことがある。
私にはもう星を見ることはできないのだと。
毎年、家族で流星群を見に行っていた。
車で山まで行って、灯りが一つもない中で星を眺める。
星で空が埋め尽くされたその美しい景色が私は大好きだった。
でも、もう見れないのだと悲しくなった。
生きる幸せが一つ消えたようにすら感じた。
その後、母に相談して目が悪くなっていたことに気付いた。
見えなくなった理由はショックに対してあまりにちっぽけだった。
眼鏡を買い、手に入れたその夜。
私は真っ先に空を見に行った。
星が見える。
それがものすごくうれしかった。
都会の空の数える程度の星を見て私は嬉しかったのだ。
それから私は星を見るのが習慣になっている。
あの時から視力は随分落ちて、今では裸眼だと画面から10cm離れると文字が読めない程だ。
もっと悪くなるだろう。
今の眼鏡では足りなくなって、また星が見えなくなるかもしれない。
それでもいつか本当に目が見えなくなるまでは、星を見続けたいなと思う。
これは私と眼鏡と星のくだらないお話。