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冷や汁(ごはんなし) 〜 レシピから導き出された40年前のこたえ
19年前、夏が終わりを告げようとする頃、僕は異動することになった。
新しい職場は、立ち上がったばかりの新規事業を推進する部隊で、
それからというもの日本全国を飛び回ることになった。
仕事柄出張はほぼ上司か先輩と2人で行動することが多かった。
宮崎に出張したときのこと、
宮崎出身の上司から誘われて郷土料理を食べることになった。
パッチンエビ、メヒカリのから揚げ、地鶏、そして、冷や汁。。。
たぶんそれが僕と冷や汁との最初の出会いである。
# 宮崎郷土料理
# 自分のB面をA面にひっくり返された貴重なビジネス経験
# hibiyaZOO
その当時帰省したときのこと。
夜中にお腹を空かせた僕は
白いご飯に親父がつくったフリーズドライ味噌汁をのせ、
水をかけて溶かし、その上に氷をのせ、かき混ぜた。
その様子を見ていた父は40年前とは違って
怒りはしなかったけど僕のことを鼻で笑った。
すかさず僕は
「宮崎の郷土料理で冷や汁ってのがあってね、
簡単冷や汁風茶漬けって感じで食べるのもありやろっ?
お父さんも食べてみる?」と応えた。
「いや、いらん。見ただけで十分。
あと、冷や汁は昔っから佐賀でも食べてるぞ。」と返された.。
僕はそこで箸をとめることになり、
子供のころ汁かけごはんを禁止された理由はわからずじまいだった。
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父が妻にリクエストした冷や汁レシピのこと…
6年前の夏に入院した父は正月を越せずに、
妻の冷や汁を食べることができなかった。
昨年の夏から我が家の冷蔵庫を開けると、
大きなガラスの器にはいった冷や汁が鎮座している。
# 冷や汁
# 麦味噌 # 肥前佐嘉角屋
# 三川内焼 # 陽山
“食べたいと言ってくれた人に食べてもらえなかった料理”が
思いがけず思い出に変わることもある。
19年前の病室での出来事や6年前の病室での出来事が繋がり、
そのことは妻の中で思い出になっていた。
そしてその妻の思い出は僕の記憶を呼び起こし、
“父の人生を理解する”という大きな課題解決のヒントになった。
父は妻がつくったレシピを見た瞬間にその料理を食べたくなるって、
“なんて食いしん坊なんだ”と思う反面、言いかえれば
“レシピを見るだけで料理の味を想像できる男”だったんだなと。
今では僕や子供たちは、
お素麺のつけ汁やごはんにかけるだしとしての役割だけでなく、
お茶のかわりに冷や汁を飲みながら、
新たなカタチで父から活力をもらっている…
僕にはレシピをみても料理の味を想像することができない。
ただ、父の一面を知ることができたことで、
そのレシピを何度も何度も見返し、
40年をかけて汁かけごはんと冷や汁に決定的な違いがあることを
知ることもできた。
それと同時に父だけにみえていたはるか遠くの風景が
ぼんやりと僕にもみえてくるようになったのである…
☆使用した肥前佐嘉角屋の調味料「麦味噌」