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手帳沼

私は昔から文房具が好きである。
ノートにペン、消しゴム、そして手帳。
特に手帳の魅力には抗えず、毎年この時期になると「来年の相棒はこれだ!」と意気込んで、買うのが恒例行事だ。
しかし、正直に言うと、今年もその意気込みは、あっさりと挫折した。

新しい手帳を開いて最初のページにペンを走らせる瞬間、あの感覚がたまらない。
しかし、問題はその後である。
1月こそ意気揚々と書き始めたものの、2月の半ばにはペースが落ち、3月には白紙の日々が増えていった。

スケジュール管理自体は、スマホで事足りている。私が手帳に求めているのは、むしろ記録だ。
日々の出来事や気づきを書き留めておきたいのだが、毎日律儀に続けるのは難しく、空白の日が増えると「今年もダメか」と諦めてしまう。

では、なぜ私はこんなに手帳に執着するのだろうか。
それはおそらく「手帳を使いこなせる自分」を夢見ているからだ。
手帳にびっしりと予定や記録が書かれている姿は、それだけで何か達成感や自己管理ができているという安心感を与えてくれる。
毎日が充実しているような気分になり、私もまずまず頑張っているじゃないか、と思える。
新しい手帳を開くときには「今年こそは計画的で、しっかりした自分になれるかも」という希望が詰まっている。

手帳を買うときのワクワク感は、その一年がまだ真っさらで、どんなことも書き込める自由があるという期待感から来るのかもしれない。
新しい目標を立て、やりたいことを考える。
でも、その夢はいつも途中で挫折する。
記録できなかった空白のページが増えていくと、だんだんとその理想が薄れていって、「またダメだった」と自己嫌悪に陥る。
昨年末に描いた高い理想は、リアルな日々に流されて、そのうち消えてゆく。
でも不思議なことに、来年になればまた新しい手帳を手に取ってしまう。
そして毎年、似たような見慣れた目標を立てるのだ。

だから、手帳に執着するのはただの習慣や便利さだけではなくて、その時だけは「新しい自分」に出会える瞬間が好きだからかもしれない。
そして、その自分を毎年夢見て、また手帳を手に取る。そんな繰り返しも、悪くないと思うのだ。
いくつかは実現できていて、多少なりとも前進していることもあるのも事実だから。

今年こそは挫折しないために、私なりに続けるコツを考えてみた。
これがうまくいくかどうかは分からないが、試してみようと思う。

1. 「週記」に切り替える
毎日書こうとするからハードルが上がる。
週に一度、まとめて書けばOK、と考えれば気が楽になるかもしれない。
土曜か日曜の夜に行う。

2. テーマを決めておく
あらかじめ、今週のテーマを用意しておくと、何を書けばいいか悩む時間が減るし、書くこともできる。
断捨離、掃除、感謝、学び、など。

3. ハイライトだけをメモする
その日の「ハイライト」だけをメモ。
「美味しいラーメンを食べた」くらいで十分。
何か一つでも書けば、続けている安心感が得られる。

4. 空白の日も楽しむ
空白をあえて「楽しむ」。
好きなイラストを描いたり、シールでデコレーションしたりして「書けなかった」という罪悪感を消す。
映える手帳はセンスがなく無理だから、最初から期待しないで始める。

5. 朝のルーティンに組み込む
夜に書こうとすると疲れて忘れがちなので、朝食前の数分を手帳タイムに開くことを心がける。
朝の静かな時間に自分と向き合うのも悪くない。

こうしてアイディアを考えたものの、実際にどれだけ続けられるかは未知数だ。

結局、私にとって手帳は「新しい私になれるかも」という希望を感じるためのものなのだろう。
自己コントロール感を持ちたくても、実際はコントロールできずに怠惰に流されていく日々だ。
それでも、来年こそは、なんて思いつつ、また手帳を買い続ける。
いつか、理想の私ではなく、自分にちょうどいい使い方、ちょうどいい生き方を修得する日を夢見ながら。

ちなみに、2025年の手帳はすでに購入済みだ。
今年のものと同じ、ジブン手帳。
来年こそは使いこなしたい。

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