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ファンタスティックコント~どうしようもない草野球編~

 

① 完結しない草野球

 打った。走った。転んだ。
 捕った。投げた。届かない。 

② 永久に点の入らぬベースボール

  三塁ランナーがホームにヘッドスライディング。
 ホームベースのずっと手前でストップです。
「ご苦労さん」
 キャッチャーが歩いてきて余裕でタッチ。 

③ ホームランへの道は遠い

 草野球チームの四番は、バッティングセンターのホームラン王でした。
 先のネットにぶら下げたホームランの的に、百発百中でした。
 でも、試合では、一度もヒットを打ったことがありません。
 ある日、試合用に買った新しい眼鏡をつけて、野原の試合に出場しました。
――今度こそ打つぞ。エイッ。
 バットが外野の草むらに消えました。
 ど真ん中のボールでした。
「やっぱり的がないと、ダメなんだよな」
 眼鏡のレンズに、ホームランの的をマジックで書きました。
「これでいつでもホームランだ」
 レンズの的で、ボールが見えません。
「ストライク。バッターアウト」 

④ ど真ん中一筋

  俺はチーム唯一のピッチャー。投げれば全部ど真ん中。直球勝負で四死球無し。今日もヒットが続いて満塁だ。試合が進まず日が暮れた。一度でいいからアウトを取りたいな。初回でコールド負けは、もうこりごり。直球の先に朝日が昇る。 

⑤ 目の悪い素人の審判

 ピッチャーが構えました。
 審判がキャッチャーに耳打ちをしました。
「俺、最近老眼で、ついでに近視に乱視に外斜視……白内障に緑内障なんだ。悪いけど、ボールのコースをちょっと教えて」
 キャッチャーが囁きました。
「外角低めのストライクです」
 キャッチャーが、ピッチャーに、さあ来いとミットを叩いて、外角低めに構えました。
 すかさず、審判の声。
「ストライク。バッターアウト」
 バッターが審判に抗議しました。
「まだ投げてないよ」

 ⑥ 注文の多い大学教授

 大学のゼミ合宿の打ち上げは、いつものとおり野球でした。このゼミの伝統です。
 高齢の大学の名誉教授は、昔からエースで四番のままでした。
 守っているゼミ学生たちが、思いっきり前進しまた。
「先生、下から投げましょうか」
 教授は学生に命じました。
「老眼鏡持ってきてくれ。バット、もっと軽いのないか。最近肩が上がらないんだ。あっ、ピッチャーは、女子に交代。優しい子がいいな。審判、真ん中以外、全部ボールにしなさい。さあ、こい」
 女学生が前に出て、そっと下からボールを投げました。
 教授は空振りして、眼鏡が飛んでいきました。 

⑦ 普遍的な理論は通じません

  大学教授がバッターボックスに立ちました。ヒットを打ちました。なんと、三塁に走っていきます。
 三塁手が尋ねました。
「先生、どうして、ファーストに走らないんですか」
「地球は丸いからね。いかなるところでも、応用できるはずだ。たとえ野球であってもだ」
「アウトですよ」 

⑧ ホームランボールはどこ?

 カキーン。
 草野球の四番バッターが、ついにホームランを打ちました。
 ボールはぐんぐんと飛んで、人工衛星の軌道に乗ってしまいました。
 審判の声。
「はい、ホームラン」
 みんなでロケットに乗って、ボールを回収しに行きました。
 ボールがいっぱい軌道に浮かんでいました。
「最近のボールは飛び過ぎだ。どれが、うちのボールだ」 

⑨ ソフトボールの投げない魔球

 ソフトボールの選手が、軟式の草野球にデビューしました。
 ポジションはピッチャーです。
 マウンドで腕をくるくるとまわしました。
 バッターも目がまわってしまいました。
 バッターはふらふらになって、バットを杖にして立っているのがやっとでした。


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火山竜一  ( ひやま りゅういち )
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