ファンタスティックコント~動物たちは悩んでいるよ編~
① 泣きたいよ
ウグイスが鳴いていました。
カラスが鳴いていました。
セミが鳴いていました。
鈴虫が鳴いていました。
僕も泣いていました。
みんな、もてませんでした。
② 鯉のぼりが休めない日
雄の鯉が雌の鯉を誘いました。
「デートしようよ」
雌の鯉は困った顔をしました。
「予約があるの。整理券をあげるわ」
雌の鯉は整理券に、五月五日と書きました。
雄の鯉は、とっても喜びました。
「どこで、デートしようかなあ」
「あなた、仕事でしょ」
③ 尻が痛い
大きな蛇がいました。
体が大きくなって、どんどん長くなりました。
いつの間にか、地球一周の長さになりました。
お腹がすきました。育ち盛りでした。
目の先に、美味しそうな生き物が見えました。
噛みつきました。尻尾に痛みが走りました。
噛みついたまま、思いっきり引っ張りました。
皮だけが抜けました。抜け殻でした。
尻尾の痛みがなくなりました。すーすー冷たく感じました。
抜け殻の向こうに、また美味しそうな生き物が・・・・・・。
思いっきり、ガブリ。
大きな蛇は少し短くなりました。
④ 蝶々になる方法
蛇は空を飛びたいと思いました。
体を『蝶々結び』にして、羽ばたきました。
飛べませんでした。
結び目を解こうとしました。
結び目がかたくて解けませんでした。
「俺の生きる道は、蝶々しかない」
羽で地面を叩きました。
ジャンプしました。
すぐ着地しました。
何度もジャンプしました。鍛えられて、力が付きました。
ついに、蝶々を超えました。
ついでに、受け身も、うまくなりました。
⑤ 給料の根拠
サーカスで兄弟猿が綱渡りをやっていました。
人気がありませんでした。
兄弟猿は綱の真ん中を切りました。
ブラーんとなって、二匹はターザンになりました。
お互いに飛び移り、二匹のターザン猿は人気者になりました。
団長が一言。
「主役と脇役でギャラが違うんだ。どっちがターザン役なんだい」
二匹はターザンの叫び声を上げました。
「あーああー」
合唱になりました。
⑥ 猿のお見合い
雌猿「何が得意なの」
雄猿「木登り」
雌猿「ほかに得意なの、ないの?」
雄猿「笑顔。キキキ」
雌猿「つまんない。何か芸を見せて。猿真似とか」
雄猿「猿真似って、どうやるの」
⑦ 蛇の見合い
雌の蛇「長さは」
雄の蛇「三十センチです。健康です」
雌の蛇「質問したことだけ答えてよ。身長(太さ)は」
雄の蛇「頭は二センチで、真ん中あたりは三センチで、尻尾は一ミリ」
雌の蛇「平均すると何センチ」
雄の蛇「・・・・・・」
⑧ バッタのお見合い
雌のバッタが質問をしました。
「あなたの得意技は」
雄のバッタが厳かに答えました。
「得意技は『秘伝』ゆえ、見せるわけにはいかぬ」
「『ひでん』って、どういう漢字なの?」
「それも『秘伝』なり」
⑨ 冬眠の目覚まし
洞窟の中で、熊が冬眠しようとしていました。
「あ、いけね。目覚まし、かけとこ」
目覚ましを四月一日、朝八時にセットしました。
「仕事は年度単位だからな」
⑩ 蛸の仲直り
仲の悪い二匹の蛸が、仲直りをすることにしました。
「握手しようぜ」
次々と手をだして、こんがらがってしまいました。
「お前が、たくさん手を出すからだ」
喧嘩が始まりました。
どっちが自分の手なのか、分からなくなりました。
ほどけなくなりました。