見出し画像

1月のおすすめ本『ぼくたちのスープ運動』

『ぼくたちのスープ運動』
ベン・デイヴィス著/渋谷弘子訳
評論社

毎日寒いですね。
寒風吹きすさぶ中で仕事をしているとき、夜中に勉強をしているとき、一杯のスープがあったら、どれだけほっとするでしょうか。
そんな心温まる一冊です。

あらすじ

主人公のジョーダン・マイケル・ターナー(ママは怒るときにフルネームで呼ぶ)は、家族で田舎に引っ越してきた。
姉のアビはそれが気に入らない。都会での暮らしが恋しく、インフルエンサーを目指すという名目(わりと本気)で、ここがどれだけ田舎かインスタライブを行って憂さを晴らしている。
パパは職場が遠くなり、毎日朝早く出かけるようになった。
ママはジョーダンの健康ばかりが気になる日々。

そう、この引っ越しはジョーダンのためだった。
ジョーダンは病気で入退院を繰り返していた。今は良くなったように見えるが、ママは心配で仕方ない。もう必要のないチャイルドシートにくくりつけるほど。それで学校まで送ってくれるものだから、ジョーダンは恥ずかしくて困っている。
そのせいではないが、学校ではなんとなく孤立していた。
そんなとき声をかけてきた目立つ子たち。
いぶかしがりながらもランチを共にすることにしたが、そこでメンバーの一人がホームレスをからかって遊ぶところを目撃する。
心を痛めたジョーダンは、ママから渡されていたランチのスープをこっそりホームレスに渡す(スープジャーごと渡したらスープジャー帰って来ないじゃん!とかいうケチなツッコミをした人は私くらいだろう)。
そこから世界を巻き込むスープ運動が始まっていく……。

おすすめポイント

キャラクターが生き生きしています。
喜怒哀楽に理由があるので読んでいて納得するし、感情移入もしてしまいます。
パパママの愛も感じるし、両親の関心が弟にいってしまって、憎まれ口をたたきながらも本心ではそれを寂しく思っているアビも可愛い。インフルエンサーとして多くの人に認めてもらうことで、そんな気持ちを払拭しようとしているところが健気なんですよ。まさかの行動力もすごい。姉として弟をちょいちょい立てるとこも偉い。
入院中に仲良くなった同室のリオ(小学生は男女同室なのね)が、とにかく良い。はじめは「は?」と思うこともありますが、そのうちそれも全部愛しくなります。
子どもが病気になって家族でそれを支えつつも、それぞれの家族が感じる辛さも表現されていて読んでいてグッときます。
もちろん、病気になった当事者たちの気持ちや行動も存分に描かれているので、その辺も読んでいただきたいですね。
重い展開もありますが読後感も良いです。子どもにぜひ読んで欲しい一冊です(大人ももちろんですよ!)。
ちょっと厚めの本に見えますが、字も大きいし没入感がすごいのであっという間に読めると思います。小さいものでも挿絵がないのが少し珍しいんですが、そのせいで一段と入り込めるかなと。
話の展開も児童書らしく勧善懲悪がくっきりしていて、ついつい応援したくなります。
とくに、校長先生は見ていただきたい。校長室もね!

実は

オックスフォード大学の学生が、自転車にスープを積んでホームレスに配ったという実話がもとになった、一杯のスープのように温かいお話。

評論社公式サイトより

なんと実話を元にされていたんですね。驚きです。
いかにも海外っぽい活動ですよね(良い意味で)。

ミツヴァー?

ミツヴァーというユダヤの教えが話の軸になるんですが、日本でいうところの一日一善みたいな感じ。

ユダヤ教の成人式は男子がバル・ミツバとよばれ13歳、女子がバット・ミツバとよばれ12歳である。ミツバとはユダヤ教の戒律のことであり、戒律を守ることが出来る年齢が成人だとされる。ここでの「成人」という言葉は、結婚可能なとか、生計を立てられるとか、選挙権があるという意味では使われていない。神の前に戒律を守る、すなわち、自分の行為で許されることと許されないことを認識し、自分の行動に責任を持てる年齢に達したという意味での「成人」と考えられるのだ。

公益社団法人日本イスラエル親善協会公式サイトより

成人式のことみたいです。
ジョーダンはミツヴァーのことをリオに教えてもらいます。
「人に良いことをするとされた人も良い気分になって、他の誰かにまた良いことをする、そういう循環が生まれる」という感じだったと思います(本を返してしまったので本文通りの引用ができないでいる)。
それをリオにならってジョーダンも実践していきます。
とっても前向きで、読後に実践しようと思える行動っていいですよね。

ちょっと言いたい

ところで、これは「読書感想画中央コンクール」の中高生用の課題図書でした。
このコンクールは読書の感動を1枚の絵に表すもので、今回で34回目を迎えました。34年も経っているので、学校で聞いたことや応募したことがある人もいるかもしれません。小学生から高校生まで、もちろん特別支援学校も参加することができます。
ただ、何故でしょう?「青少年読書感想文全国コンクール」と違ってちょっとマイナー感は否めません。主催は同じところですが、あちらは全国ですし、今年度でなんと68回目です。夏休みの宿題と被るので、学校側も応募させやすいのかもしれないですね。
一方、感想画は冬のコンクールです。そして全国的なコンクールに見えますが、山口県と九州の8県のみ不参加なんです。独自の感想画を行っているとか?
絵を描くという表現力に加えて、読解力の両立を図る必要があるので難しく思えるかもしれません。それに、絵を描くのは時間がかかりますし。
でも、とても素敵な活動だと思います。
感想を絵を描くなんて、想像力をかきたてられちゃいます。
右脳・左脳をフル活用できるって考えたらなんか面白いですよね。
スープ運動のように広がってくれるといいな。

過去の受賞作品を見ることができるので、ご興味のある方はぜひ公式サイトをご覧ください。素晴らしい作品ばかりで眼福です!
https://www.dokusyokansoubun.jp/kansouga/index.html

今年からがんばる

といった感じで、これから毎月1冊ずつおすすめの本を紹介していこうと思います。
よろしくお願いします。

#推薦図書


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?