伝えたい選手こそ、書いてほしい
先日、取材でお世話になった、ファンマーケティング事業を手がけるBOKURAの宍戸さんから大盤振る舞いすぎる資料をTwitterを通じていただいた。
これがとても面白くて、「そうだよな」とか「そうなんだ!」とかぶつぶつ呟きながら、怪しい人になりながら読みました。貴重な資料をありがとうございました。宍戸さんの資料には、ファンに自分のことを知ってもらい、応援したいと思える選手になるための方法が書かれていました。多くの選手は人気者になりたいし、活躍したいと思っていることでしょう。宍戸さんの提案は、SNSでコミュニケーションをとることだったり、日々の振る舞いだったり、シンプルでわかりやすいことなのですが、実行できている選手は少ないのかなと感じています。
■マスコミって案外、使える
SNSはもちろんですが、新聞、雑誌、テレビ、ウェブメディアなど、アピール手段はたくさんあります。しかし、選手がうまく使ってくれないのが取材現場。私も記者として取材をこなす中で「もったいない!」と思う瞬間が多くありました。しゃべればニュースにしてくれる、こんな楽なアピール場所をなぜ使わないのか!?とわたしは常々思っているのですが、試合後の記者会見は特に、マスコミに詰問される場の様に捉えている選手もいるようで…。確かに、試合内容によっては厳しい質問が飛ぶこともあるのですが、これは両者にとってとても損な話なのです。誰も幸せになれない!!
スポーツ取材は、政治とか事件事故の様に深刻なものじゃない「エンタメ」なので、記者やディレクターたちも着地点が「ほー」とか「面白いな」とか思えれば、おおよそオッケーなのです。真面目に話す時は正面から質問に答え、時には自分を売り込む場としてキャラクターを出して行けば双方、win-win。あざとくて何が悪いの?です。マスコミを上手く使ってやるか、ぐらいのマインドでいいんだと思います。
「でもさー、会見でうまく話せないんだよ!!」
そんな選手は多いと思います。やっとここで本題です。そういう選手こそ、文章を書きましょう、書いて下さい。これが今日の本題です。
なんで、そんなに書いてほしいとわたし思うのか。それは、予想以上に話していると「話が面白いな」「思いがある」「言葉に力があるな」と感じた選手が多かったからです。そんな選手に「書いてみたら?」と過去にお伝えしたこともあるのですが、予想以上に文章への苦手意識が強いのか「いやいやいや…」と言われ終わってしまいます。それをずっと、ずっと、怨霊の様に残念に思い続けてきて、行き場のなかった思い(笑)を #BOKURAのファン創り #アスリートのファン創り に対するわたしの感想代わりに文章でお伝えしようと思います。今は現場から離れてしまって選手の皆さんに直接お伝えすることもできないので、多くの方に伝われば嬉しいです。
■行間にあるエピソードと秘密の共有
さて。書くにしても何を書くのか。長い文章を書くのが苦手な人はTwitterで呟くのもいいし、どこかのサイトを使って長文を書くのもいい。とりあえず、自分はどんな人間なのか、名刺代わりになる文章を書いて、SNSに投げてみるのがいいと思います。わたしは以前、バスケ北海道で選手コラムの編集を担当していたのですが、その時に一番最初にオーダーしたのが「人となり」、「自己紹介がわり」になるコラムでした。誰にでも書けるテーマなので、最初に書くものとしておすすめです。
ブースターの皆さんにとって「推し」の経歴は折り込み済みなので、そこから深掘りした、なぜ、その大学やチームを選んだのか、その選択の裏には、周囲の後押しなど、どんな出来事があったのか。「経歴の行間にあるエピソード」を知りたいのです。そういうエピソードこそその選手の人柄が窺えるもので、ファンも選手の意外な側面が見れると、もっと好きになったり、応援したくなる。わたしはジャニーズが好きで、推しというか「自担」がいるのですが、会員向けサイトのコラムはとても好きです。あの時あんなことを考えていたのか、とか、ファンに向けて明かされる本音は応援する側からしたらたまらないものがあります。(ちなみに、わたしは昨日(5月25日)にそんなコラムを読んでぐっときたことをお伝えします)。話は戻りますが、担当したバスケ北海道の選手コラムは好評で、本音はやはり惹きつけるものがあると確信しました。秘密の共有は、ファンと選手の距離を密にするものなのです。
■すべきことは…
でも、書くってなると難しいですよね。わかります。書きたくても、書こうとすると、雪原に取り残されたような不安で孤独な気分になります。「そんな大それた話はないよ」と言うかもしれませんが、大好きな選手が話してくれたというだけでファンは嬉しいものです。拙くても、気持ちがあればというのは嘘ではなく、それ以上のものはありません。
書くうえで大切なことは「物語」、ストーリーがあることですが、エピソード集めは実はそんなに難しいことではありません。以下の4つのステップを踏んでみてください。
①自分の経歴を整理する
②大きな選択をしたなと思うエピソードを思い出す
③なぜ、その選択をしたのか、どんなきっかけがあったのか洗い出す
④その選択の評価と今につながっていることがあるか考える
以上を整理すれば、自然と材料は集まるはずです。
■書けば競技力向上?
では、パソコンに向かいましょう。もちろん、スマホのメモ帳でも、ペンを持って原稿用紙に書いてもいいです。文章を書き始めましょう。文章の基本は「起承転結」。起承転結って美味しいの?という方はこちらのサイトがわかりやすかったのでご参考に…
でも、そんな気にしなくていいです。上記の4点を洗い出せていたなら、あら、なんと!!この順番に書くだけでも、コラムを書くことはできるはずです。
自己紹介、今はどんなことをしているのか、なぜここに辿り着いたのか、今までの道のりを振り返って思うこと、そしてこれから…。
読者を惹きつけるためには、最初に印象的なエピソードを持ってくるとか工夫の仕方は無限大ですが、まず書いてみることが大切だと思います。
そして、書くと思った以上にいいことがあります。ある選手は、気になったことや振り返りをノートに書き残すことで、気づきを得ていると話していました。国際大会でメダルを獲得した選手も日記をルーティンにしていたり。書くことでファンとの繋がりが強固になり、競技力も向上するきっかけになるのが文章なのだというのがわたしの結論です。
■最初はテンプレでいい
今回は選手向けにと書きましたが、そうではない方もこの手順で「私」という自分を振り返るコラムが書けると思います。振り返れば、試験に作文のある新聞社を受けまくっていた大学生の頃、わたしもこのタイトルで勝負作文を用意していました。つまりは「なぜ新聞社に入りたいのか」というのを力説する文章なのですが、自分はどんな人間なのかを考えるいいきっかけになったのを覚えています。ちなみに、わたしはめちゃくちゃ文章を書くのが苦手でしたし、今も文章には自信がありません。それでも、伝えたいという思い先行で書いています。書きたいから書く、それだけです。
記者の先輩にもよく言われたのですが、文章にはテンプレートがあるのです。型を覚えればかけてしまう。自己紹介コラムも先ほど紹介した素材集めができれば、7割は終わったも同然。最初はテンプレ通りでも、単純な構成でも、書いているうちにこなれて、オリジナリティーが出てきます。要は為せばなる。
最初は友達に今日あった出来事を話すような感覚で、話ことばを文字に落としていく感覚で。サラッとでいい。気張らず、とりあえず、書いてほしい。
あの選手、この選手、顔を思い浮かべながら書いた、この思いが伝わりますように。