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『内藤コレクション 写本 いとも優雅なる中世の小宇宙』@国立西洋美術館について、感想メモなど。
マストドン(羊の時刻(荻サカエ) (@hitsujinojikoku@mstdn.nijist.info) - nijist.info(β))に日記代わりにちょこちょこ書いた感想が貯まってきたので、こっちにもコピペ。ちょっと別の絵の感想や、内藤裕史さんの著書の感想も入ってます。
2024/07/15
曇り空の六本木から土砂降りの上野に移動して、国立西洋美術館の写本展へ。
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嫌そうな顔の人の絵が多かったなあという感想。
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ヘタウマな人の絵には共通点があるのか、是害坊絵巻みたいな画風の謎の生き物も多数。
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食事しているヤヌスを描いた1月のカレンダー。
前と後ろを同時に見る事が出来る、というのがヤヌスのアピールポイントだと思ってたけど、これだと両方ともこっち向いてしまってるような気も。
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たまに普通に綺麗な絵があるとなんだか物足りなく思えてしまった。
2024/07/15
追加料金無しで入れたミニ展示『西洋版画を視る』。
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まあやってるなら入ろうか、と軽い気持ちで入ったら、ルドンがすごく良かった。
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右上を見てる絵はルドンの《キリスト》。
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先日新宿で見たロートレックにも再会。
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2024/07/16
『内藤コレクション 写本──いとも優雅なる中世の小宇宙』展のおみやげのミント缶。
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裏面の説明によると、
「「聖王ルイ伝」の画家(マイエ?)
《セント・オールバンズ大修道院由来の聖書零葉》(部分)
1325-50年 彩色、金、インク/獣皮紙
国立西洋美術館(内藤コレクション)」
中身はフリスクほど刺激が強くなくて美味しい。
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写本展は量が多すぎて、最後の方は完全に脳がオーバーフロー。
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最後の展示室になると、周りの人たちもすっかり疲れた様子になって、消化試合感が漂ってた。
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あれを一度で見るのは無理でしょ...と思ってたら、もともと三回に分けて展示していたとパンフに書いてあった。納得。
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2024/07/16
6月に行ったときミュージアムショップで買ったアルベール・マルケの海の絵の栞。きれい。
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2024/07/16
写本展のあとで常設展も鑑賞。
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ピエール=アルベール・マルケ《ル・サーブル・ドロンヌ》の海の色はいつまでも見ていたくなる。
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それにしても、国立西洋美術館は中を歩いてて全然疲れを感じない。
これがル・コルビュジエのすごさなんだろうか。
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2024/07/16
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そんなスケベはユディトさんが生首にしちゃいますよ。
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2024/07/17
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“彩飾写本に関する限り、掘り出し物など決してなかった。その代わり、首をかしげるようなもの、まして偽物など一点も見かけなかった。美術館に入るような見事なものもなかった代わり、パリの古本屋でなければ手に入らないものがそこにはあった。どんなに安くても安っぽさがないのが彩飾写本である。どんなにささやかでも、それなりに愛すべき世界があるのが彩飾写本である。”
国立西洋美術館で見てきた写本展のコレクションの持ち主の著書を図書館で借りてきて読み進め中。
完本ではなく零葉(本からページをバラしたもの)とは言え、こんなにたくさん中世の写本を買い漁れるなんてお金持ちっていいなあ、羨ましいなあ、ちくしょう...という思いを抱えつつ眺めた写本展だったけど、このエッセイを読んでいるうちに、悔しいけれど妬ましさよりも好感が上回ってきた。こんだけ愛情を持ってる人に買われたのなら零葉たちも本望以上の幸せでしょう。
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「切り取りには興味が無い」と書いてあるのには同感。
文頭だけの切り抜きが展示されてたけど、全然いいと思えなかった(なので写真も撮ってない)。やっぱりページ丸ごとがいい。
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2024/07/18
“自分の金で、自分の趣味と好みで収集をするのには違いあるまい。しかし自らの人生をかけるそのコレクションが、百年後に自分を生み育てた社会にとって、どんな意味をもつべきか、ということが彼らエリートの頭の中には必ずある。集めたあげく最後にはその一切を社会にもどす。アメリカの社会がそのためにどれほど豊かになってきたか、僕はたまたま美術のことについてしか知らないが、計り知れないものがある。”
先日見た写本展のコレクションの「持ち主」の著書だと思ってたら、あれは全部国立西洋美術館に寄贈されたんだそうで、つまり「元・持ち主」である内藤裕史さんがアメリカの美術館について書いたエッセイの中の一節。
このエッセイが書かれた1971年とは今のアメリカのエリートの在り方もたぶん違ってしまってるんだろうけど、少なくとも内藤裕史さんは若い頃の自分が立派だと思ったその頃のアメリカのエリートの在り方を見習ったことになる。
立派だと思うだけなら簡単だけど、自分もやるなんてすごい。
会期中にもう一度見に行こうかな。
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