Spring
もう春だね。
貴方と出逢って、5年になるんだって。
5年前の春の日。出逢いの季節。
無気力で、怖いもの知らずで、大した夢も希望も持っていなかった私が、いつだってしっかりとしていて、輝きを持った貴方と仲良くなったりだとか、貴方に恋したりするだなんて、
あの頃は思ってもみなかったの。
私とは違って、輪の中心にいる貴方は、とても遠くて届くことのない存在だったのに、小さなきっかけで変わるものだよね。
ある夏の日。
人の少ない教室で、一人ぼっちの昼休み。同じ班だった女の子からのとあるゲームのお誘い。
たまたま正面に座っていた、学級委員の男の子。
毎日、続いたその遊びは、私の楽しみで、貴方と話せた日は、少し幸せだったの。
気付いたら秋になって、その頃にはもうすっかり親しくなっていたね。
席替えで、席が近くなって、そのときにあったある小さな事件(貴方は覚えてないかもしれないけれど)が、今思い返せば、この恋に気づき始めるトリガーだったな。
それから、私は貴方の言動に一喜一憂したんだよ。
きっと気づいてないと思うけど。
貴方はあまりに鈍感で、無自覚で。本当に何も知らないのか、実は分かってるけど知らないふりをしてるのか、気付かせようとすらしてくれないでしょ。
でも、そんな日々はすごい輝いていたなって今でも感じるの。
不意に見せる笑顔。
階段の途中で伝えてくれた「お誕生日おめでとう」という言葉。
一緒に歩いた廊下に、帰り道。
こうやって思い出すと、もう懐かしくなってしまっていることに気付いて、ちょっぴり寂しいのだけれど。
それでも、貴方は私の心の中で今でも大きい存在で。
5年間、ずーっと、心に居座り続けている人なんて貴方くらいだよ。
未だに、私は貴方の記憶を手放せずいるの。
貴方は、私を決して離そうとはしてくれないの。
「勝手に離れないだけだ」なんて言われてしまったらそれまでだけど。
何度も、諦めて捨ててしまおうと思ったこの想いも、そう考える度に貴方が私を強く惚れ込ませて、また振り出しに戻るんだ。
貴方が別の誰かと、なんて想像してみることも時々あるけれど、やっぱり胸が苦しくなって、涙が溢れてきてしまうの。
きっと、そろそろこの恋の話もエピローグがお似合いになるような頃なんだろうけども。
私は、まだ貴方が好きだよ。
貴方よりも素晴らしい人には出逢えないみたいなの。
貴方はいつになったら私に恋をしてくれるのかな。
そんな日が訪れないような、そんな予感もするけれど。
きっと、ずっと。私は貴方が大好きだよ。
書いてみたはいいものの、想いを載せすぎてしまったようで、言葉もちぐはぐなひどい手紙だから流石に貴方に届けることは無理そうだな。
ある、春の日の、春の魔法。
私のもとに届いた、小さな小さな愛の話。