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抑圧と投影のメカニズム

今回は抑圧と投影のメカニズムについて触れていきたい。私は人の事が気になって仕方がないのですと相談を受けることがある。その内容として、自分は人に悪く言われているのではないか?そう感じてしまうという具合である。

 

統合失調症患者も同じようなことを言う人たちが大勢いる。陽性症状によって幻覚が見えたり、幻聴が聞こえる際に周囲の人間が自分を悪く言っていると感じてしまうのである。これは脳の機能による症状だからまだ仕方がない。投薬治療するほかない。

 

しかし今回は統合失調症による陽性症状の話がしたいのではなく、やはり心の状態について言及したいのである。そもそも人の事を気にしすぎるという傾向のある人はどのような心理が働いて、他人が自分を悪く言っていると感じるようになるのだろうか?

 

抑圧と投影のメカニズムに照らして言うなら、それはおそらく自分自身が他人を悪く思っているということになるだろう。それはどういうことなのか?

 

まず抑圧とは自分の心の中で芽生えた感情を自分が良くないものと認知したとき、心のフレームから追いやることである。平たく言うなら悪いものを無意識の領域に隠す作業である。しかし隠した感情、追いやった感情が失われるのかと言うとそうではない。

 

あくまで隠された感情、追いやられた感情は殺されたわけでもなければ、なかったものになるわけでもない。

 

自分が人を悪く思うという感情はその人にとって悪なのである。自分が他人に悪く思われたくないから、悪く思われることに注意がいく。本来人間は他人を悪く思ったって良いのだが、その人は人を悪く思うこと自体が悪なのである。だから悪く思われたくないという感情と自分は他人に悪く思われているのではないかという感情が紐づくのである。

 

そのうえで他人を悪く思ってしまった感情を抑圧する。すると本来持っても良い感情だから、抑圧した感情は何かしらの要因によって表出してくる。その要因こそ周囲の人間を悪い人と思った時である。

 

そうなると自分自身が人を悪く思っていることを抑圧しないといけないという内的拘束に縛られる。これがとてもつらい。自分自身が人を悪く思っているから、人に悪く思われているのではないかと気にするようになる。

 

それをあえて人に相談と言う形で「自分は他人に悪く思われているのではないかと不安なんです」となるのである。これが投影である。自分が抑圧している感情を人の責任に転嫁する。または人を通じて自分の抑圧した感情を他人のものとして感じてしまうのである。

 

相談してきたということだけに着目すると、本人は苦しんでいてその苦しみを解決したいかの如く錯覚してしまうのが一般的だが、これは誤った見方である。

 

その人は相談して解決したいのなどと思っていない。むしろ怒っているのである。自分が抑圧して苦しい。人に悪く思われているのではないかではなく、むしろ自分は他人に悪く思われていると断定しているのである。何故なら自分が他人を悪く思っているからである。

 

繰り返しになるが自分が他人を悪く思っている。悪く思うことは罪。だから他人を悪く思っちゃいけないと抑圧する。抑圧された感情のエネルギーは負の感情であるからとてつもないエネルギーであるため、ストレッサーが反応する際に表出してくる。すると自分が他人を悪く思っていることを抑圧して無意識に放り込んだから、自分が他人を

悪く思っているのとは一時的に本人が知覚できない。しかしその感情が芽生えようとしてくる。だから他人が自分を悪く思っているのではないかと錯覚してしまう。

 

これが抑圧と投影のメカニズムである。

 

執筆 : 一青 成

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