人生にスパイスを与える、映画の名言#003これが本当のことなのか、ただ知りたかったんだ
"I just want to know that it's really happening."
これが本当のことなのか、ただ知りたかったんだ
謎の光る物体が空に現れ、街に停電が発生。発電所に勤めるロイ・ニアリー(リチャード・ドレイファス)が修理に向かうと、途中まばゆい光を放つ飛行物体に遭遇。それ以来、家族の前で不思議な山の形をした模型を作り始めるなど奇行に走り、呆れた妻は子供たちを連れ逃げてしまう。
その頃、ジリアン(メリンダ・ディロン)と息子のバリー(ケイリー・ガフィー)も光る物体に遭遇し、バリーはその物体に連れ去られてしまい、誘拐騒動に発展。テレビで取り上げられるほどの大騒ぎに。
世界中で謎の現象が続く中、フランス人のラコーム博士(フランソワ・トリュフォー)と彼のチームは、その物体との交信を試みていた・・・。
1975年に『ジョーズ』を大ヒットさせ、当時勢いに乗っていたスティーブン・スピルバーグ監督は、次作として映画史上に残るSF映画の傑作を作り上げた。それが1977年公開の『未知との遭遇』。
ストーリーは今見ると、なかなか荒唐無稽な部分もある。謎の物体のせいで奇行に走り、家族に見捨てられる行動を取るような父親が主人公だなんて、今では考えられない(これは脚本を書いた、スピルバーグ自身の生い立ち=両親の離婚に重なる部分も多い)。
けれど、その道徳的問題を消し去る、とてつもない冒険と感動が待ち受ける作品として、永遠に語り継がれる作品だ。
この記事では「光る物体」が何なのか?主人公や他の登場人物のつながりは?一体どんな話なの?等、未見の人でも、タイトルをググればすぐ分かる展開(そして映画ファンには当たり前のような知識)を、あえてオブラートに包んで書いている。なのでストーリー説明も半端なものになっていることをお詫びしたい。
『スター・ウォーズ』も公開された1977年、この「Close Encounters of the Third Kind」(『未知との遭遇』の原題=第三種接近遭遇、の意)は、アメリカではクリスマス前に公開。その後も世界中で大ヒットを記録した。複数のバージョンが製作され、特に1980年に公開された「特別編」では、ディズニーの『ピノキオ』を、より感じさせる演出や音楽が増えたものとなっている。
今回の表題は、映画のクライマックスで、その”答え”が分かった時、主人公が言うセリフ。光る物体に遭遇して以来、ずっと頭に残るイメージを自問自答し、もがき苦しみ、家族にも見捨てられ、政府に捕らえられてでも知りたかった”答え”。これは単なるSF映画ではない。自分の人生の答えを見つけるために冒険に出る、大人になった”ピノキオ”。誰にでも当てはまるであろう、一歩踏み出す勇気に関する物語だ。
-未知との遭遇(1977年)
監脚:スティーブン・スピルバーグ
出演:リチャード・ドレイファス、フランソワ・トリュフォー
メリンダ・ディロン
この記事を書いた人
大石盛寛(字幕翻訳家/通訳)
通称"日本字幕翻訳界のマッド・サイエンティスト"。
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