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ヒアリング・提案・戦略立案に使える:営業フレームワーク10選

営業研修講師の海老原です。

筆者の1000件の商談経験から現場で使える営業フレームワーク10選を解説します。ヒアリング、提案、戦略立案、それぞれの場面で使える営業フレームワークを厳選して紹介します。

0.営業フレームワーク10選

ヒアリング3つ、提案2つ、戦略立案5つ。合計10個の営業フレームワークを紹介します。法人営業の成功に複雑なテクニックは不要。この10個のオーソドックスな営業フレームワークだけしっかりマスターしましょう。
ヒアリングの営業フレームワーク

ヒアリングの営業フレームワークのおすすめは、「BANT」「DMUマップ」「3C分析」です。

情報収集フェーズで「何を聞くか」の営業フレームワークがBANT。DMUマップと3Cは、商談全体を通して、「どこから情報を得るべきか」「どの視点で解釈するか」を考えるための営業フレームワークとして利用できます。

BANT(バント):Budget,Authority,Needs,Time frameの頭文字をとった略語。
「予算」「決裁権」「ニーズ」「導入時期」の4つの質問の切り口を示す営業フレームワーク
DMU:Decision Making Unitの頭文字を取った略語。
顧客の意思決定単位=顧客の意思決定者、または意思決定関与者を構造的に把握するための営業フレームワーク
3C分析:Customer(市場・顧客) Competitor(競合) Company(自社)の3つの視点で業界環境分析を行うフレームワーク

提案の営業フレームワーク

提案の営業フレームワーク おすすめは「FABE分析」「ピラミッドストラクチャー」です。

FABE分析は、ヒアリング後「何を提案するか」の整理に最適なフレームワークです。

FABE分析(ファベ):FABEとは、Feature、Advantage、Benefit、Evidenceの頭文字をとった略語。
FABE分析は、提案のコンセプトや訴求方法の分析に使える営業フレームワーク

一方、ピラミッドストラクチャーは、伝えるべきことを整理するためロジカルシンキングフレームワークです。提案書はもちろん、口頭での説明、メール文章など様々な営業提案場面に使えるフレームワークです。
戦略立案の営業フレームワーク

戦略立案の営業フレームワーク の全体像を次に示します。全体像は、マーケティング戦略策定のフレームワーク群と同じと考えて良いでしょう。マーケティング戦略のうち営業施策に重点を置いたものが営業戦略です。
営業戦略フレームワーク
営業・マーケティング戦略フレームワーク全体像

戦略の基本構造:診断→基本方針→実行計画
PEST分析:マクロ環境分析のフレームワーク
3C分析:業界環境分析のフレームワーク
STP分析:誰に何を売るかを決めるフレームワーク
4P分析:実行手段を分析するフレームワーク

1.BANT: ヒアリングの営業フレームワーク①

営業活動は、大きく「情報収集(ヒアリング)」と「提案」に分けられます。BANTは営業ヒアリングのフレームワークです。
Budget(予算)のヒアリング

ヒアリングの営業フレームワーク BANTの1つ目は、Budget=予算です。

どの程度の購買予算金額を想定しているか?
予算確保の目処はあるのか?
予算金額確保目処の確からしさはどの程度か?

「予算ヒアリングくらい営業の基本だろう」と思うかもしれません。しかし、BANTの予算は、営業質問スキル次第で得られる情報の質が大きく変わります。
Authority(決裁権限)のヒアリング

ヒアリングの営業フレームワーク BANTの2つ目は、Authority=決裁権限です。BANTの決済権は、商談での次の状況を確認します。

今回の商談金額で、最終決裁者は誰か?
最終決裁者の判断基準は何か? 普段の基準は?今回は?
承認過程で、方針に影響を与えたり、最終決裁者に上がる前に止める人物はいないか? いるとしたら、どんな影響を与えるか?

Needs(必要性)のヒアリング

ヒアリングの営業フレームワーク BANT情報の3つ目は、Needs=顧客ニーズです。今回の商談において、次の内容を把握します。

何に対するニーズか?
誰にとってのニーズか?
ニーズは確かにあるか?
ニーズは強いか?

Timeframe(導入時期)のヒアリング

ヒアリングの営業フレームワーク BANT情報の4つ目は、Timeframe=導入時期です。Timeframeは導入時期と訳されます。しかし、「導入時期」とだけ考えていては、BANTを深く理解することはできません。

「導入時期」はある1点の時間を示しています。例えば9月導入予定などです。一方「Timeframe」は時間の幅があります。商談がスタートしてから終了までの時間の流れがどのように進むのか。これがタイムフレームです。

ヒアリングの営業フレームワーク BANTのタイムフレームでは、今回の商談で次の内容を把握します。

導入時期はいつか?
導入時期から逆算して商談スタートから商談決定全体のスケジュールはどうなるか?
全体スケジュールのうち主要なマイルストーン(クリアしないと次に進めない中間地点)は何か?
それぞれのマイルストーンはいつか?
各マイルストーンでキーとなる顧客メンバーは誰か?
マイルストーンをクリアするために自社はどんなスケジュールで動くべきか?

2.DMUマップ: ヒアリングの営業フレームワーク ②

DMU(Decision Making Unit)はヒアリングの営業フレームワークです。

DMUマップは、顧客の意思決定構造をマップ上に表現したものです。顧客を理解し商談を進める上で「誰から情報収集するか?」「誰に向けて提案するか?」を考えるための地図として活用できます。
DMUマップ活用事例

DMUマップで、顧客の意思決定構造を分析した例を示します。
製造業工場のDMUマップ

こちらは、製造業の工場のDMUマップです。この場合、顧客企業は工場を複数持っています。そして、工場ごとに「生産技術部」「製造部」「購買部」という3つの組織を持っています。
DMUマップの使い方

DMUマップで、「各意思決定関与者の関心事はなにか?」「どのように意思決定に影響を及ぼすか?」「意思決定に及び素影響力はどのくらいか?」「自社に対する態度は?」など、全体像を構造的に把握します。

DMUマップは、視野を広げて関係者の全体像を網羅的にみるために有効です。たとえば、営業研修でDMUマップ作成ワークがあります。ワーク後に「思ったよりお客様のことを分かっていないことがわかった」「本来会うべきなのに会っていない人がいた」といった気づきが生まれます。
DMUマップの作り方

DMUマップの作り方は様々で決まった型はありません。しかし、押さえるべき重要ポイントがあるので、DMUマップ作成のポイントを3つあげます。
組織全体構造を把握

まずは事例のようにシンプルな組織構造を把握します。このとき、DMUマップに記載すべき範囲は、普段会っている組織だけでなく、営業商談で把握すべき組織を幅広く網羅することがポイントです。

意思決定に間接的に影響する部門を把握(事業部門と営業部門、設計部門と生産部門、など)
商談を広げられる可能性がある部門を把握(同じ案件でも複数部門を巻き込むと課題理解と解決策に深みがでる)

組織でなく人で把握

DMUマップは、はじめは部署単位ですが、最終的には部門内の1人1人の氏名・役職まで把握することが重要です。

もちろん全員把握する必要はありませんが、特に購買意思決定に影響しそうな人物は必ず確認します。たとえば、事例では製造部の「班長」は、工場の意思決定に関わるようなので、重要人物として把握します。

組織の意思決定とは、結局1人1人の意思決定の組み合わせです。「●●部が承認した」と「●●部のAさんが承認した」では、顧客理解の深さが大きく違いします。

3.3C分析その1: ヒアリングの営業フレームワーク ③

3C分析はマーケティングで有名なフレームワークです。3C分析は ヒアリングの営業フレームワークとしても有効です。

3C分析では、Customer(市場・顧客) Competitor(競合) Company(自社)の3つの視点で業界環境をもれなく考えます。3Cの3者は営業商談のプレーヤーとも一致します。

Customer:本商談での顧客の状況は? 目的は?予算は?期間は?
Competitor:本商談での競合は誰か? どんな提案をしているか? いくらで提案しているか? 強み・弱みは何か?
Company:自社と顧客の関係は? 競合に比べた強み・弱みは?

Customer:商談中の顧客

業界を対象に3C分析を行う場合、Customerは市場・顧客の全体です。一方、営業商談でのCostomerは商談相手の顧客1社のことです。

具体的な顧客情報の詳細把握には、BANTなどの営業ヒアリングフレームワークを使うとよいでしょう。

3C分析では、BANTで得た顧客情報と競合・自社情報を比較します。このように営業ヒアリングフレームワークを組み合わせて使うことで視野が広がります。
Competitor:商談を争う競合他社

Competitorは通常は業界全体での競合を想定します。営業商談で3C分析を使う場合は、この商談を争う競合他社に絞って分析します。
競合分析で最初におこなうべきこと

商談の競合分析において、はじめにすべきことは何でしょう。「この商談を争う競合は何社あるか?」「その競合は、どこか?」を顧客からヒアリングすることです。まずは、敵を知る必要があります。

営業商談の3C分析で犯しがちなミスが、提案最終段階になって競合調査を始めることです。提案の最終段階で競合情報がわかっても、手の打ちようがありません。

最もありがちなのが、提案の差別化余地がない状況で競合との争いになり価格競争で疲弊するパターンです。商談の早い段階から3C分析という営業フレームワークを意識し、視野を広げて情報収集します。

4.FABE分析: 提案の営業フレームワーク ①

法人営業プロセスは、大きく「情報収集(ヒアリング)」と「提案」に分けられます。FABE(ファベ)は提案フェーズの営業フレームワークです。FABE分析は、シンプルで使いやすい営業提案フレームワークです。
FABE分析の構造化
FABE分析のFeature:営業提案の特徴

FABEのF、Feature は、提案や商品の特徴、概要説明です。提案概要を一言で説明します。1文、2文くらいの分量で端的にまとめます。
FABE分析のAdvantage:営業提案の優位性

FABEのA、Advantageは、競合(商品)に対する優位性です。「競合に対する」ですから競合を具体的にする必要があります。

例えば、マクドナルドの競合は、ファーストフードというカテゴリでは、モスバーガー、サブウェイなどが考えられます。あるいは、サラリーマンの昼食とすれば、コンビニ弁当なども競合になりえるでしょう。モスバーガーに対する優位性とコンビニ弁当に対する優位性は、表現が異なってくるはずです。
FABE分析のBenefit:営業提案の顧客便益

FABEのB、Benefitは、顧客便益、顧客メリットです。
例えば、「とても小さい」は、商品の特徴ではありますが、直接顧客メリットを表現していません。例えば「(とても小さいので)ズボンのポケットに入ります」は、顧客メリットを表現してます。前アップルCEOの故スティーブ・ジョブズは、iPod発売の伝説的なプレゼンテーションで「スボンのポケットに1000曲入る」という顧客メリットを訴求しました。
FABEのEvidence:営業提案の証拠

FABEのE、Evidenceは、裏付けとなる情報です。AdvantageやBenefitを根拠づける証拠です。
例えば、「政府統計」「科学的な実験データ」「専門家のコメント」などは証拠となります。

営業提案のEvidence(証拠)は2つの使い方があります。Advantage(優位性)に対するEvidenceとBenefit(顧客メリット)に対するEvidenceです。

文章なら次のような表現になります。
「この商品の優位性は、●●の性能が優れいてることです。具体的には、」
「この商品にはこのような顧客メリットがあります。例えば、」

5.ピラミッドストラクチャー: 提案の営業フレームワーク ②

ピラミッドストラクチャーは、その名の通りピラミッド構造で論理構造を整理する枠組みです。最終アウトプットして文章を書くとき、プレゼンテーション作成など、伝えたい主張とその根拠を構造化するロジカルシンキングフレームワークです。

ピラミッドストラクチャーの作り方の体系はピラミッドプリンシパルと言われます。マッキンゼーの社内教育担当だったバーバラ・ミント著の「考える技術・書く技術」で有名になりました。
一般的なピラミッドストラクチャー構造

一般的なピラミッドストラクチャー構造は、次のような図で表されます。

ピラミッドストラクチャーでは、ツリー状に論理構造が示されます。ツリーの上位と下位の階層は論理的につながります。上位が主張、下位が根拠の関係です。

石板を積み上げたピラミッドのような論理構造を作るため「ピラミッドストラクチャー」と呼ばれます。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャー
シンプルなピラミッドストラクチャー

次の図は汎用的なピラミッドストラクチャーを少し修正したものです。先ほどの図で示した「一般的なピラミッドストラクチャー」に比べて遙かにシンプルで簡単に感じないでしょうか。
シンプルピラミッドストラクチャー
シンプルなピラミッドストラクチャー

シンプルピラミッドストラクチャーの特徴は4つです。

「要は」「サブ要は」「例えば」という日常語を使っている
「要は」「サブ要は」「例えば」という3層構造が基本
用語、見た目が、文章アウトプットイメージに近い
書き方がシンプル。テキスト文だけでも構造が作れる

6.戦略の基本構造: 戦略立案の営業フレームワーク ①

著書「良い戦略、悪い戦略」で戦略論の大家リチャード・P・ルメルト教授が提示しているのが、戦略の基本構造です。戦略のカーネルとも言います。

良い戦略は「診断→基本方針→行動計画」の3つの要素を持っている。悪い戦略は、要素が欠けている。
良い戦略、悪い戦略

良い戦略の事例を次に示します。
戦略の基本構造例

戦略の基本構造は営業戦略に限らず広く使える概念です。マーケティング戦略の大枠も「診断→基本方針→行動計画」の流れで示すことができます。

悪い戦略は3つの要素のいくつかが欠けています。例えば、医者が診断もなしに手術という基本方針を決めたら困ります。ただ、戦略と言いながら要素が欠けているものがおおいのです。例えば、「売上100億円」と言った目標だけかかげられるのが典型例です。

7.PEST分析: 戦略立案の営業フレームワーク ②

PEST分析は、業界を取り巻くマクロ環境を網羅的に捉えるフレームワークです。PESTとは、Political(政治)、Economical(経済)、Technical(技術)、Social(社会)の頭文字をとったものです。
PEST分析

8.3C分析: 戦略立案の営業フレームワーク ③

3C分析とは、市場、競合、自社の視点で業界を網羅的に把握するフレームワークです。3Cは、Customer、Company、Competitorの頭文字を取ったものです。
3C分析

9.STP: 戦略立案の営業フレームワーク ④

マーケティング基本戦略は、STPで表されます。STPとは、Segmentation、Targeting、Potioningの3つの頭文字をとったものです。
ターゲティング=分ける+選ぶ

ターゲティングとは、「分けること(Segmentation)」と「選ぶこと(Targeting)」です。
ターゲティング

市場をどのように分けるべきか。基本は似ている顧客群ごとに分けるべきです。「似ている」の基準は同一のニーズを持っていること。
ポジショニング

ターゲットは「どの顧客を狙うか」を決め、ポジショニングでは「顧客脳内での自社の位置づけ」を決めます。
ターゲットとポジショニング

ターゲットは顧客で物理的に存在するもの。一方、ポジショニングは顧客の脳内イメージで、物理的に存在しません。

10.4P 分析: 戦略立案の営業フレームワーク ⑤

戦略の基本3要素のうち「行動計画」にあたるのが、マーケティングミックス(4P)です。
4Pとは

4Pとは、Product、Price、Place、Promotionの頭文字をとったものです。製品、価格、流通、プロモーションの4Pは、行動計画・実現手段を整理するのに最適なマーケティングフレームワークです。
マーケティング・ミックス(4P)

(文責:プロジェクトファシリテーター、ロジカルシンキング講師 海老原一司)

「ロジカルシンキング講師のビジネスナレッジ」サイト

https://project-facilitator.com/btob-sales-frameworks/


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