「ミシンと金魚」読了
今まで読んだことのないタイプの小説だった。
文章は最初から最後まで認知症の進んだ高齢の女性の視点で描かれる。
元々知的障害者の彼女の認知は幼い子供のように素直で、単純。
拙い独り言の中から彼女の壮絶な人生が浮かび上がる。そして、後半になり、実は彼女が家族から愛されていた事も、分かってくる。
すごい文章力だな…。
全部で140ページ足らずだし、使っている文章も平易なんだけれど、昭和初期の貧しさや、その中でも必死で生きてきた人達の人生に想いを馳せることができる。
短編小説なんだけど奥行きが深い。
若い子だと、どれくらい察することが出来るだろう。
日頃から山崎豊子さんや浅田次郎さん、向田邦子さんの本あたり読んでいたらすんなり理解出来そうだけど。
日頃から高齢者と接する機会がない人には向かない本だけれど、そういう人にこそ読んで欲しいと思った。