西風がみせた夢 ー風信子荘便りー [短歌連作]
山陰の夜の車窓が映すのは僕ばかりだな君がいないな
この喉が発した咳が洋館の天井たかく巡る旅の地
重力に逆らうことは生きること人も柱もいつか崩れる
鳴くことをやめぬこほろぎ黒々と冬のさなかにノートが埋まる
ふたりでは寝られぬ幅の寝台を描けば君の髪は遠のく
鋳鉄の把手を下げて踏み入れた己の夢に吹き抜ける風
水平の窓は装置だ個の場から広間へのびる生きるよすがだ
西向きの小窓開ければ忍び込む匂いを持たぬむすめの気配
繰り返し見てもいいかなこんな夢ゼピュロスの息受けるまでまだ
ヒアシンス、風を信じるいつだって向きを変えればそれは追い風
詩人と近代日本をテーマにした漫画『月に吠えらんねえ』(清家雪子作)、こちらの二次創作アンソロジー『いつかの街で逢いましょう』発刊一周年を記念して、寄稿させていただいた連作を公開します。
『月吠』の登場人物のひとり、ミッチー(立原道造作品)からイメージを広げ、更に立原の建築家としての一面を知ることのできる「ヒアシンスハウス」を訪ねたときの印象を詠んでみました。
久しぶりに店の焼鳥が食べたいです!!サポートしてください!