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君は美しい(完結)

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とあるカリブの国を舞台にした、恋愛小説。 すべて無料です。
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2017年7月の記事一覧

君は美しい(第十四夜)

君は美しい(第十四夜)

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「クレジットカードがないの。あなた、知らない?」

私の質問に、ネスティは一瞬沈黙した。

疑っている気持ちはたぶん伝わっただろう。

しかし、もう引くことはできなかった。
今まで目をそらしていたものが、とうとう現れたのだ。

ここを通らなければ、先には進めない気がした。

「カードが、なくなったの?」

顔を上げたネスティの瞳は、いつもと変わらなかった。
そらすこ

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君は美しい(第十三夜)

君は美しい(第十三夜)

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「僕たちは、結婚できないの?」

ネスティの目の色が、はっきりと変わった。

「どうして?」

みるみると、彼の空気が悲しみに染まっていく。

(しまった)

つまらないウソをついてしまった。
少しだけ彼をいじめたいと思った気持ちが、すぐさま後悔に変わる。

ネスティはこんなにも素直に、私の言葉を聞いてくれるのに。

「ノリコ、もしかして日本に恋人がいるの…?」

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君は美しい(第十二夜)

君は美しい(第十二夜)

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彼の吐息から、きついラムの匂いがする。

彼の舌から私の舌へ、甘くて苦いピリピリとした感触が伝わってゆく。

それは、私が彼に感じている、焦げるような恋の味そのままだった。

(目を覚まして)

ふいにヒロミのメールが頭をかすめる。だが、すぐに意識の彼方へ消えた。

今の私には、ネスティの存在のほうが圧倒的にリアル。

細い指先が、私の太ももの感触を楽しむように撫で

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君は美しい(第十一夜)

君は美しい(第十一夜)

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(誰なの?)

ネスティに親しげに話しかけたその女は、体は成熟しているが明らかに若そうだった。まだ10代かもしれない。

信じられないくらいスタイルが良く、目がクリッとして大きい。
どうがんばっても、例え整形したってあんな風にはなれないだろう。人種が違うのだ。

私の視線に気付いたのは、ネスティだった。

「ノリコ」

こちらに顔を向けて微笑む。

「紹介するよ、エ

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