セックス依存症の本当の原因と解決法とは㉑
セックス依存症について、科学の心理学は以下のように述べています。
――単なる性欲が強い・性行為が好きとは違います。行動によって得られる性的な興奮や刺激に溺れることが習慣化し、頭の中が性のことでいっぱいになり、自分の意思で症状をコントロールできなくなっていきます。――
その原因は?
――性依存症の本質は、性欲の問題ではありません。実際はもっと複雑で、さまざまな複合的要因が絡み合った問題といわれています。親子関係の問題や過去のトラウマ、ストレスや不安や焦燥感、現在の置かれている環境、他の依存症なども関連しているようです。――
――性的対象に依存している間は、脳内から快楽物質が放出されます。すると、不安や孤独感などから一時的に逃れることができます。こういう経験が脳に刻み込まれ、アルコールや薬物といった物質依存と似たメカニズムが働いているのではないかといわれています。――(※参考:大船心療内科)
さて、心理哲学はセックス依存症の原因を反抗であるといいます。以前述べた「反抗のセックス」です。すなわち、「この自分」が嫌で、「この自分」をつくった神に反抗するためのセックス。
神というのは、人間の力を超えた何者かという意味であり、特定の宗教の神ではありません。
私たちは「この親」から生まれたいという意思なしに、何者かによって「この親」から生まれることを余儀なくされた。この暗く悩みがちな性格ではなく友だちのAさんのように天真爛漫な性格をもって生まれてもよかったのに、なぜか「この性格」になった。何者かがそうした。それを神と呼んでいます。
科学の心理学がいう「親子関係の問題や過去のトラウマ、ストレスや不安や焦燥感、現在の置かれている環境、他の依存症」もすべて神のしわざです。
親子関係の選べなさは先に指摘したとおりです。
トラウマは親子関係に起因するなんらか不幸なできごとのことであり、これも親子関係という理不尽な非選択的要素が原因と言えるでしょう。ストレスも不安も焦燥感も、おなじ境遇に置かれてもそれらを感じない人がいるのにわたしはなぜ感じるのだろう? これもそのようにあなたの性格をつくった神のしわざです。むろん後天的な要因がありつつも神の要素をまったく抜きには語れないでしょ、ということです。現在置かれている環境だって、100%選択的に選んだというより、ある種「流れ流され」では?
つまり、みずからの内なる神、すなわち永遠に反抗するためにセックスという手段を使う。
性行為中は(科学の心理学の言葉を借りるなら)ドーパミンが放出され気持ちよく、「なんかさみしい」という鬱陶しい気持ちから解放される。だから繰り返しセックスをする。行為が終わると罪悪感がどっと押し寄せる。
セックス依存症を卒業しようと思えば、したがって、永遠を解きほぐしてあげる必要があります。具体的には、自分のペースでいいので、永遠の中に潜むものを少しずつ言語化してあげる。同時に、祖父母の生き様を知る。つまり自分のルーツを知る。そうすることで、少しずつ「この自分」を好きになることができます。
やがてセックスに依存しないでも生きていける自分にあなたは驚くでしょう。「自分のことが好き」とか「嫌い」という気持ち自体が、あなたの心の中で消滅したのです。
※参考
キルケゴール・S『死に至る病』鈴木祐丞訳(講談社)2017
哲学塾カントにおける中島義道先生の通信教育テキスト
哲学塾カントにおける福田肇先生のご講義
ひとみしょう『希望を生みだす方法』(玄文社)2022
ひとみしょう『自分を愛する方法』(玄文社)2020