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映画『ストップ・メイキング・センス』真実は虚構にすぎない
RYM(https://rateyourmusic.com)という海外の音楽レビューサイトがあり、あらゆる国のあらゆるアーティストの音楽が日々レビューされる。
このサイトは映画のレビューもできる場所があって、やはりあらゆる国のあらゆる映画がレビューされる。
さて、「ストップ・メイキング・センス」をはじめて知ったのはこのサイトの映画のランキングからであった。
上位10位以内には「2001年 宇宙の旅」、「ゴッドファーザー」、「地獄の黙示録」といった必ずオールタイムベストに挙がるような映画が並ぶが、奇妙なのは13位に「ストップ・メイキング・センス」がランクインしていることだ。(2024年2月現在)
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なぜライブ映像がここまで上位にランクインしているのか? なぜ「ウッドストック/愛と平和と音楽の3日間」よりも上なのか? そもそもなぜ今の時代に、A24によってレストアされ全国で上映されるのか? 疑問は尽きないが、トーキング・ヘッズの音楽が好きな人間としては見逃せない映画だ。
感想
結局のところ、泣きたくなるくらいいい映画だった。デヴィッド・バーン、直前の予告編で流れた「オッペンハイマー」のキリアン・マーフィーにすごく似てないか? 隣でちょこちょこと動くティナは可愛らしく、メンバー紹介で一際歓声が大きかった(笑)。
トーキング・ヘッズの音楽性はポスト・パンク/ニュー・ウェーブの流れにあり、ソウルやレゲエをロックに取り入れた点で先を行っていた。実際ステージ上には黒人が4,5名演奏していたり歌ったりしていた。
でもやっぱりデヴィッド・バーンの踊りと歌詞がこのバンドの真骨頂だ。ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスと似た、神経症みたいな踊り、パラノイアに囚われた精神病者のような歌詞、そして最後の演奏は「Crosseyed and Painless」、バロウズ並みの意味不明な文脈で「真実は虚構にすぎない」というフレーズを繰り返し、バンドのリフレインでライブは終わる。
とんでもなく素晴らしい映画だった。ランキングがどうとか関係なく、映画館で見るべき映画。
もっと言えば、みんなで立って踊れればずっと楽しかったのだが。