サウナの話題化を考える。【人刊〇〇 vol.1 マグ万平】
ソーシャル上のエンゲージメントから、特定のジャンルにおいて情報拡散やコミュニティの活性化に寄与する人を月イチで紹介する人刊〇〇。記念すべき最初のコミュニティは「サウナ」です。
年齢問わず親しまれ、逆に激混みイシューまで飛び出すほどに人気の「サウナ」ですが、話題化するまでには、いくつかのフェーズがありました。今回はサウナがどのような文脈で語られてきたのか、またどのように広まっていったのか時系列で解説するとともに、人刊〇〇で取り上げたサウナ大好き芸人・マグ万平さんがサウナコミュニティに与えた影響についてまとめていきます。
5年間で大きく話題化したサウナ
下のグラフは、過去5年間の「サウナ」を含むコンテンツの数とエンゲージメント(※)量を並べたもの。多少の波はありますが右肩上がりになっていることがわかります。
調査概要
・キーワード:「サウナ」を含む記事
・データ取得期間:2016年6月15日〜2021年6月14日
・調査ツール:ソーシャル分析ツール「Buzzsumo」
※エンゲージメント
Twitter・Facebookにおける「いいね」「リツイート」「シェア」「コメント」などの総アクション数。数が多いほど、多くのユーザーに、SNS上で言及されている・注目されていると定義しています。また、この数値はポジティブに語られているもの、ネガティブに語られているもの、両方を含んでいます。
第一の波・コンテンツ化
サウナ入門編ともサウナ好きのバイブルとも称される、漫画家・タナカカツキさんのエッセイ『サ道』の発売が2011年11月。
発売当時ももちろん話題化はしていましたが、日本ではTwitter黎明期だったこともあり、大きなバズりにはつながっていなかった様子。ちなみにサ道について初めて言及された投稿はこちら。写真家の池田さんがつぶやいたもの。(※編集部調べ)
その後、Twitterを中心にSNSで銭湯やサウナの情報を共有し合う文化が、自然発生的に生まれていきます。
「サウナ=整う」を提唱した濡れ頭巾ちゃんのサウナ検証ブログ「湯守日記」もサウナーを中心に人気を集めました。
ちなみに「サウナで整う」を含む初めての投稿はこちら(※編集部調べ)
2015年には、講談社の週刊漫画雑誌『モーニング』にて不定期での連載が開始。2019年の原田泰造さん主演によるテレビドラマ化で大きく話題化。ソーシャル上での本格的なサウナブームに大きな影響を与えたことが伺えます。
サ道、湯守日記ともにこれまで点でしか語られてこなかったサウナの「楽しみ方」がユーザー目線でコンテンツ化されたことで、若年層やサウナに親しみのなかった生活者に新たな娯楽として認識されるようになりました。ここでその後の話題化につながる第一の層が、確立されたのではないでしょうか。
第二の波・情報の集約
少し前後して、コンテンツ化が先行する中で、2018年に全国のサウナ情報が掲載されたサウナ検索サイト「サウナイキタイ」がはじまります。4人のサウナー(※)によってつくられたユーザー参加型のサイトは、オープンから半年で5,000施設が掲載されるほどの盛況ぶり。
※サウナー
サウナ好きの人
サウナイキタイは、多くのサウナーに利用されており、いまのところコミュニティ内で最も利用されている共通プラットフォームとなっています。「サウナ施設の検索」「サウナ活動の記録」はもちろんのこと、後述する「グッズ展開」や「コロナ禍でのサウナ支援プロジェクト」、「サウナにまつわる様々な企画」など、コミュニティを盛り上げるプロジェクトを多角的にコンテンツ化したことが評価されています。
また、ユーザーとともにつくりあげる(=横並びでの検討)サウナイキタイに対して、様々な業界の「プロサウナ―」を審査委員として、水風呂や清潔姓、ホスピタリティなどで評価する「サウナシュラン」も同じく2018年にはじまっています。
サ道からはじまるコンテンツ化と情報の集約化が、SNS上でのサウナ好きの「語りたい」「共有したい」心理をくすぐったことは、一過性のバズりにとどまらない話題化につながった大きな要因になっているのではないでしょうか。
第三の波・〇〇×サウナの多様化、そして…
第一の波、第二の波では、どの施設で/どのように「サウナ」を楽しむにフォーカスが当てられていましたが、2019年頃からはサウナに別のカルチャーをかけ合わせたコンテンツやイベントが多く開催されたことで、ソーシャル上での生活者の反応にも変化が見られました。音楽やファッション、アートなどサウナとは一見距離のあるコミュニティにおいてもサウナが注目されだしたことで、語られ方にも多様性が見られ始めます。
サウナ×フェス
サウナ×ファッション(グッズ)
サウナ×アウトドア
サウナ×ラグジュアリー、ホテル
サウナ×アート
サウナ×企業
一部のサウナ好きにとどまっていた情報が集約されたことで、誰もが語れる・語りたいコンテンツになったサウナ。ファッションやアウトドアなど既に「カルチャー語り部」が多いコミュニティと手を組むことで、サウナコミュニティの多様化はさらに加速していきます。
また、エンタメとしてではなく当初の目的にある意味で立ち返る、マインドフルネスやウェルネス文脈での注目度も高くなっています。
完全個室でストレスフリーなソロサウナが登場したり、先述の「ととのう」の中身を深堀りして「瞑想」について模索したり、コミュニティの拡大とは逆行する形で内に向かう動きの活発化も進んでいます。
昔ながらの「型」は変わらず、捉え方や関わり方、情報流通のあり方が変化し続ける珍しいコミュニティ「サウナ」はこの先どのように変化していくのでしょうか。
マグ万平さんのサウナコミュニティに与えた影響まとめ
今月の人刊で紹介したマグ万平さんは、2019年5月からサウナ専門ラジオ番組『マグ万平ののちほどサウナで』(supported by イオンウォーター)をはじめています。
これまで整理してきた時系列での話題量を見る中で、彼の「サウナコミュニティ」における貢献ポイントは「既存サウナーのさらなる深い愛の構築」と「サウナコミュニティの拡張」にあると捉えています。
既存サウナーのさらなる深い愛の構築
『マグ万平ののちほどサウナで』は、全国のサウナ施設の紹介と各界のサウナ好きタレント・インフルエンサーとの対談を先駆けて行いました。
サウナコミュニティの拡張
また、著名人だけでなく、ソーシャル上では顕在化していないサウナ施設の人やサウナを中心に活動するクリエイター、サウナが好きな生活者をゲストに起用。既存のコアファンを大切にしたコンテンツづくりは、コミュニティ内外から好意的に受け取られたことは、ソーシャル上のコメント等からも明らかになっています。
彼の2021年上半期のエンゲージメント時系列推移を表したグラフを見てみましょう。
調査概要
・キーワード:「マグ万平」を含む記事・投稿
・データ取得期間:2021年1月1日〜2021年6月17日
・調査ツール:spiceboxのオリジナル・ソーシャルリスニングツール「SOCIAL ENGAGEMENT ANALYTICS(SEA)」
最も高いエンゲージメントを獲得しているのは、Hey! Say! JUMP(ジャニーズ)のメンバーが担当するNHKのラジオ番組『らじらー! サタデー』に出演した際の公式アカウントの投稿。
2番目に高いエンゲージメントを獲得した投稿は、同じくジャニーズの関ジャニ∞が出演するテレビ番組『関ジャニ∞クロニクルF』の告知投稿。
投稿に反応するユーザーを定性分析すると、ジャニーズファンが多く出現しました。こうしたアイドル番組への出演など、既存のサウナコミュニティだけでなく、新規サウナー創出活動のエンゲージメントも高く、コミュニティの拡張に寄与していることが伺えます。
今回はサウナコミュニティに着目して、情報の広がりや、コミュニティの発展に寄与したマグ万平さんについて紹介しました。今後もさらなる進化が予想されるサウナコミュニティの動向に注目していきたいと思います。
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(参考)サウナをテーマとする主なTV、ラジオ、ブログコンテンツ
2011年6月〜
2011年11月
サ道(本)発売
2014年〜
サ道『モーニング』掲載
2019年3月〜
2019年5月〜
2019年7月〜
サ道(テレビドラマ)スタート
2020年3月〜
2021年3月〜
2021年5月〜
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