しくじり商品研究室:棚型書店
今日もご覧いただきありがとうございます。
商品を企画する際に、ヒットに導くのは難しいのですが、反対に失敗要素を極力減らしていくことなら比較的実行しやすいです。
ここでは、失敗した商品の原因を知ることで、失敗要素を減らす参考になればと思います。
(トップ画像引用元:https://www.photo-ac.com/)
シェア型書店の例
シェア型書店は、利用者が書店の棚の一画を借りて本を販売する書店の形態です。棚主は書店の中の棚を借り、そこに本を並べ販売します。書店の中に間借りし、小さな書店を構えるようなイメージです。シェア型書店はメディアでも注目されましたが、今ひとつ盛り上がっているように感じられません。Googleトレンドでも、昨年の夏頃に検索数が伸びていますが、その後右肩上がり、という状況ではありません。比較的新しい仕組みなので、決して失敗とは言い切れないものではありますが、現状あまり広がっていない理由を考えてみました。
しくじり理由
シェア型書店の最大の課題は消費者、棚主、書店の三者で比較した際、書店以外のメリットが少ない点です。この点を三者それぞれの視点で見ていきます。
①消費者
普段、多くの方は本を買う時に、何らかの目的を持って買う方が多いかと思います。
誰かにおすすめの本を教えてもらうにしても、通常は「こんな本読みたいんだけど、オススメある~?」と先に好みや目的を提示した上で推薦を受けるでしょう。
一方で、シェア型書店は消費者の好みは関係なく、棚主のおすすめを提示しています。推薦の方向が真逆になっており、本探しが非効率になります。
もちろん、書店店頭での本との偶然の出会いや、書店を通じた推し本の共有、つながりは否定しませんが、前者は通常の書店でも起こりえますし、後者はSNSのコミュニティが代わりの場となります。
②棚主
シェア型書店の棚主になる方は、本が好きなのは当然として、副業として始める方もいるようです。まず、本好きの方にとって、自分の「推し本」を多くの人に知ってもらう機会が作れるのは、満足感が高く、ここはメリットの一つと言えます。
しかし、問題は利益にあります。シェア型書店で利益を上げている方は一部に留まるようです。
(https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220517/se1/00m/020/050000c)
①で挙げたように、消費者側がメリットを感じにくいので、当然と言えば当然かもしれません。
どんなに満足度が高くても、利益が上がらなければ、事業としては活き詰まります。つまり継続のハードルが高いわけです。この点で棚主にもメリットがあるとは言いにくいでしょう。
③書店
消費者、棚主に対して、書店においてはメリットが見られます。
まず、シェア型書店で貸している棚の管理は、基本的に棚主が行います。棚主が本の陳列や、POPの取り付け、さらには本の仕入れ=在庫管理まで行う必要があるのです。書店としては、棚主に貸している棚が多いほど、管理工数が減ります。
また、貸している棚の本の売行きに関係なく、安定して賃料を得ることが出来ます。
最近は減りましたが、シェア型書店という新しい書店スタイルはメディアでも取り上げられ、宣伝効果を持ちます。
このように、消費者、棚主にもメリットがないとは言わないものの、書店にメリットが寄った仕組みと言えるでしょう。
実際に商品を購入する消費者、商品を用意する棚主にとってメリットが少ないのであれば、なかなか広がらないでしょう。
シェア型書店の背景にあるもの
シェア型書店展開の背景にはAmazonなどのECサイトの台頭があげられます。これまでの本の販売が落ちていくことに対し、不動産業のように場所を貸すこと売上利益の安定を図ったのがシェア型書店のように思えます。これは一見して業態の転換を図ったようでいて、結局消費者から見ると書店で本を買うという大枠の流れは変わりません。結局、提供価値が大きく変わらずメリットも増えていないため、特定の小さな範囲では生き残っても、ネットECの波を打ち砕くほどにはならないのでしょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?