#97. 絶望の先に希望がある
フランスでは、飼っている動物にどんな名前をつけても全く問題ないが、これにはひとつだけ例外があり、「ブタに『ナポレオン』と名づけること」だけは法律で禁止されているらしい。
かの有名なフランスの英雄、ナポレオン・ボナパルトに対する不敬罪にあたるという。
「わたしの辞書に『不可能』という文字はない」の言葉で有名なナポレオンだが、さすがに自分の名前でブタが呼ばれることだけは、「不可能」とせざるを得なかったようだ。
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名づけるとすれば「絶望的」、そんな 2020 年が明け、新たに 2021 年である。
きのうの記事にも書いたように、去年は実にすさまじい年で、英語でなにか狂っていたり、驚くべきこと、悲劇的なことが起こったときに、"That's so 2020"(それはとっても 2020 年的ですね)と言えば通じるくらいになっていた。
これから先、"That's so 2021" というフレーズがどんな意味を持つようになるのか、それはだれにもわからないけれど、
新しい年を迎えた今日、あるポッドキャストを聴いていたところ、「これこそ今年を象徴する言葉になってほしいな」と思えるとても綺麗な英単語を知ることができた。
(その単語が出てきた部分の抜粋)
二つ目に紹介された meliorism という単語、番組パーソナリティが言うには、
The belief that the world, or society, may be improved and suffering alleviated through rightly directed human effort.
世界(あるいは社会)がこの先より良いものとなり、正しい方向に向けられた人間の努力によって、苦しみもきっと和らいでいくと信じること。
という意味だそうだ。
日常で滅多に使うことのない単語だが、今年しばらく心に留めておきたい言葉である。
未来に向けての期待なくして毎日を送るのは難しい。いつかは止むとわかっているから土砂降りの雨も我慢できるし、いつかは明けるとわかっているから夜の孤独にも耐えられるのだ。
去年はたしかにいろんな意味で悲惨だったが、「今年こそきっと」という願いを込めて、この一年を過ごしていきたい。
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ちなみにさきほどのポッドキャストで、meliorism の前、いちばん最初に紹介されていた単語は respair というものだった。これはどういう意味かというと:
Fresh hope, or a recovery from despair.
新たなる希望、また絶望からの回帰。
14 世紀にたった 2 回きり使われたのが確認されているだけで、世界最大の英語辞書『オックスフォード英語辞典』に、かろうじて載っているような古語である。
「絶望」を表す対義語の despair はほとんどすべての辞書に載るくらい現代まで生き延びてきたのに、それを乗り越えた先で感じる「希望」の respair が廃れてしまったというのはなんとも悲しいことに思えるが、まだ完全に消え去ったわけではない。
ナポレオンはきっと、「辞書に『不可能』という文字がなければ、不可能なことなど存在しない」という意味であの言葉を残したのだろうが、
だとすれば、我々の辞書に respair という文字があるかぎり、わたしたちがいつかこの絶望から立ち直り、新たな希望を胸に抱ける未来はきっと、存在しているはずではないか?