キャリア、という言葉はいかにも多義的で幻。
それもそのはず、日本ではなじみの薄い
言葉、概念だからこそ、
「カタカナ英語」のままで使われている。
なかなか、訳しづらいのです。
本記事では、この「キャリア」を
深掘りしていきます。
例えば「キャリア論」とか、
「自分らしいキャリアを積もう!」などの
本や記事を読むと、最初のあたりに
という項目があります。それもそのはず、
いちいち定義をしておかないと
読者が思う「キャリア」と
筆者が思う「キャリア」との間に
齟齬、誤解が生じやすいから。
まず、手っ取り早く
「キャリア」のワードで検索してみます。
goo国語辞書によりますと、以下の通り。
…いっぱい、ありますね。
careerとcarrierという英単語があり、
これがどっちも「キャリア(キャリヤ)」と
日本語では表記されるから、ややこしい。
careerと、carrierは、全くの、別物。
careerのほうが、いわゆる
「キャリアコンサルタント」などの時に
使われるほう。
ラテン語の「車道」が語源。
「馬車の轍(わだち)」が語源です!と
よくキャリア本ではドヤ顔で書かれています。
要するに、車が通った「道」を指します。
ここから過去~現在~未来と、
時間的な連なりを表す言葉になったそうです。
(その意味では、キャリアを「積む」という
表現は、英語世界ではないそうです)
これに対して、carrierのほうは、
carry(運ぶ)にerがついた形です。
英文法的に言うと、yをiに変えてer。
「運ぶもの、運ぶ人」です。
だから荷台とか保菌者とか電波関係とか、
そういう意味になる。
これが、混同されている。ごっちゃ。
だって、同じ「キャリア」表記ですから。
そもそも英語の発音も違います。
アクセントも、違います。
あえてカタカナで書いてみると…。
ですので、いわゆる
「キャリアコンサルタント」の
キャリアの意味で使いたいときは、
「カ『リ』ア コンサルタンツッ(無声音)」
と発音しないと、
「ああ、伝染病防止の専門家さんですね!」
「どの携帯のキャリアを選べばいいか
相談に乗ってくれる方ですか?」と
とらえられても、おかしくない。
そう思われる方も、
いらっしゃるかもしれません。
ですが、あえて提案してみたい。
「キャリア」というカタカナ英語、
運ぶ人じゃなくて、ラテン語で「轍」のほう、
career、日本語では、どう訳しますか?
ええ、問題です。
相談をする側が狭義の「仕事」の意味で
キャリアという言葉を使っているのに、
相談を受ける側が広義の「道」の意味で
キャリアという言葉を使っていたら、
すれ違いじゃないですか。
大事なことなのでもう一度、繰り返しますが、
キャリア、という言葉はいかにも多義的で幻。
だからこそ、もし「キャリア相談」などを
行う場合、または受ける場合には、
徹底的に「キャリア」の意味を
事前にお互いで確認し、納得しておくべき、
だと私は思うのです。
特に、お金が発生するのなら。
…ここまで、キャリアコンサルタントを
例に挙げましたが、キャリア〇〇は、
世の中にはたくさんいらっしゃいます。
それぞれを、日本語で無理やり訳してみます
(もちろん、それぞれの語も「多義的」ですが
あえて訳せば、というところです)
この四つに「轍」のほうの「キャリア」の
訳語を五つ列挙して、組み合わせてみます。
(国家公務員のほうは割愛します)
結果は、次の通り。
はい、四かける五で、
「二十通りの訳語」の完成。
さて、キャリアについて悩む人は、
どの意味で専門家に接するのか?
キャリアについて詳しい方は、
主にどの意味でクライアントに向かい合うのか?
…もちろん、「サポーター(支援)」や
「転職」「労働」「生きがい」など、
訳語を増やせば、もっとたくさんの
組み合わせになります。
その意味で言えば
「キャリア〇〇」の守備範囲、扱う範囲は
無限で、夢幻、なのです。
専門家以外の人は煙に巻かれやすい。
カタカナ英語のままであれば…。
まとめます。
キャリアというカタカナ英語は、多義的。
それにひっつく専門家も、たくさん。
だからこそ、すれ違いが生じやすい。
本記事ではそんなことを書きました。
多義的な呼び名ではなくて、
「生き様提案者」のように、
自分の得意なサービスを
明確に日本語で訳してみて、
「相談前」にお互いの相互理解を図っておく。
それが、「career」という概念を
欧米から直輸入した日本での
キャリアコンサルタントの
課題であるようにも思うのです。
誤解やすれ違いを、防ぐために…。
さて、読者の皆様は、いかがですか?
特に「キャリア」に悩む方や、
現職の「キャリア○○」の方は、
どう思われますか?
ご自身の求めるサービス、
提供するサービスは、
日本語で訳せば、どうなるでしょうか?
◆本記事のタイトルは司馬遼太郎さんの小説
『ペルシャの幻術師』から取りました。