テロワールと自分軸 ~秀吉と北政所~
1、テロワールとは?
ワインの世界で使われる用語、テロワール。
一言で言うと「ブドウ樹をとりまく環境すべて」です。
まずはこちらのブログ記事をご参照ください↓。
ワインは、どこで作られたワインなのかを、とても重要視しますよね。
フランスワイン、チリワイン、オーストラリアワインなど国の単位から、ブルゴーニュ地方、シャンパーニュ地方などの国内の地方単位、極端に小さく「畑単位」で区別する専門家もいるそうです。ブドウ樹は、それぞれの環境によって、できるブドウが異なります。そのため、ブドウを加工して作るワインも、それぞれの環境を重視しているということです。この環境そのものを、テロワールと言います。
しかし、すべてのブドウ品種が、テロワールを反映するわけではないようです。テロワールによって個性が変わりやすい品種と、個性が変わりにくい品種があるとのこと。先ほどの記事から引用します↓。
◆土地に応じて変わりやすい:自分を変化させる:ピノ・ノワールなど
◆土地に応じて変わりにくい:自分の個性がある:カベルネなど
この記事で紹介されている「サイドウェイズ」(日本版)はこちら↓。
この映画では、小日向文世さんと鈴木京香さんが恋人役を演じています。…というか、小日向さんと京香さんと言えば、大河ドラマ「真田丸」で「秀吉」と「北政所」で夫婦役を演じたお2人じゃないですか…↓!
ちなみに、元々は2004年の映画「サイドウェイ」です。これを日本版にリメイクしたのが「サイドウェイズ」なんですね↓。
今回は、このピノ・ノワール的な「自分を変化させる」タイプと、カベルネ的な「自分の個性がある」タイプのお話をしたいと思います。
2、ピノ・ノワールと秀吉
ピノ・ノワールは、土地の影響を受けやすい品種です。
世界各地で作られていますが、その土地の影響を受けやすい。そのため、単一品種でワインが作られることが多いそうです。記事から引用します↓。
◆ブドウの個性×土地の個性=ワインで表現
もちろん、ピノ・ノワール自身にも個性があります。しかし、その個性は柔軟であり、「郷に入っては郷に従え」ということを受け入れるのです。
記事によると、フランスでは若いうちはフレッシュでチャーミングでライト、熟成するうちに複雑で奥深くなるそうですが、カルフォルニアやニュージーランドで作ると、もっと色合いが濃くなり、香りや味わいが力強くなるそうです。自分の軸はありますが、土地や環境に合わせて持ち味を変える。それがピノ・ノワール。
私にはこの品種が、豊臣秀吉に思えてきました。
「人たらし」として有名な豊臣秀吉は、相当な苦労人で人間通です。最初は醜悪な容貌から転職を繰り返し、時には奴隷のような環境で働いていたと言います。人間扱いされない、屈辱的な場面も何度もあったでしょう。それが、織田信長という希代の名伯楽、唯我独尊の君主によって、才能を見出されて、どんどん出世していきます。ここでは信長の忠実な手足となってひたすら働くのです。そこで起こった「本能寺の変」。彼はここから天下人へ駆け足で昇りつめます。それぞれの人生のステージや環境に応じて、時にはチャーミングでライトに、時には力強く、猿面冠者のように変幻自在に変わる様は、まさにこのピノ・ノワールに重なります。
大河ドラマ「真田丸」では秀吉役を小日向文世さんが好演されています↓。
小日向さん自身も、役者としての振れ幅が大きい、まさにピノ・ノワールです。しかしながら、振れ幅が大きくても安定しているのは、「自分の軸」というものをしっかり持っているからなのでしょう。
以前の記事でも取り上げた「プロティアン」的な生き方で言うと、変幻自在で柔軟でありながら自分の軸は持っている、という感じです↓。
3、カベルネと北政所
これに対して、揺るがない自分、どんな環境でも私は私、を貫くのが、カベルネという品種です。
この記事によると、カベルネの一品種「カベルネ・ソーヴィニョン」は、どの産地・どの価格帯でも、品種の個性がしっかり感じられるとのことです。記事から引用します↓。
つまり、ピノ・ノワールに比べて、自分の個性をはっきりと出す、ということです。どんな環境に置かれても。
私にはこの品種が、北政所に思えてきました。
北政所。きたのまんどころ。ねね、おねとも。豊臣秀吉の正妻です。秀吉との間に子どもは生まれませんでしたが、非常に夫婦仲は良かったと言われています。愛知県、昔の尾張の出で、方言丸出し。それは秀吉の出世によって、近江(滋賀県)に行こうが大坂城(大阪城)に行こうが変わらなかったそうです。豊臣家のゴッドマザー。加藤清正や福島正則をはじめ、尾張出身の武将たちは、この北政所を慕い、頭が上がらなかったとのこと。それは、彼女の飾らない気さくさと尾張弁に代表される素のままの個性が、みんなに愛されていたからでしょう。秀吉も北政所の前では、素の自分に戻れたのではないでしょうか。この揺るがぬ個性が、カベルネに重なります。
大河ドラマ「真田丸」では北政所役を鈴木京香さんが好演されています↓。
自分を貫く。一見、不器用な生き方に見えるかもしれませんが、キャラがわかりやすいというのは人を安心させますので、一周回ってとても器用な生き方なのかもしれません。その個性の安定感を求めて、世界中でカベルネは栽培されています。
この自分の軸を持っているという点は、繰り返しになりますが「プロティアン」に必須です(変幻自在とは言えませんが…)。カツサンドでも、カツカレーでも、カツ丼でも、トンカツはトンカツのようなものです↓。
相手がどれだけいても「かかってこいや!」と言える強さ。圧倒的な個性と安定力。「千万人と雖も我往かん」という感じです。
4、キムタクと熟成
いかがでしたでしょうか?
今回の記事は、ワインの「テロワール」から、対照的なピノ・ノワールとカベルネに焦点を当てて、小日向文世さんと鈴木京香さん、そしてお二人が演じた秀吉と北政所を通して、自分軸というものを考えてみました。
俳優さんは「演じる」のがお仕事ですから、ピノ・ノワール的な「変幻自在」さが求められます。と同時に、キャラが立っていないと魅力が出てきませんから、カベルネ的な「個性」が求められます。ワインと同じように、齢を重ねて熟成されると、渋みや深い味わいも出てくるのかもしれません。
自分軸という観点から言うと、「プロティアン」的な生き方には、「変幻自在」と「個性」が同時に必要です。テロワール的な環境に振り回されて自分を見失ったり、逆に個性に固執しすぎて変化が全くできなくなったりすると、フットワークが失われ、人生のテイストが重くなります。
この記事の最後に、あの俳優さんについて書いて締めましょう。
そう、キムタクこと木村拓哉さんです。
今回の記事に即して言えば、個性重視のカベルネ的な俳優から、変幻自在のピノ・ノワール的な俳優に変わりつつある…と思われるかもしれませんが、この記事によると、そこまで単純な話ではないそうです↓。
「キムタクは何を演じてもキムタクだ」という誤解。受けの演技。人間そのものと演技そのもの。昨今のSMAPやジャニーズの波乱を経て、俳優としての木村拓哉さんがどのように今後熟成していくのか? そのようなことを考えさせる記事でした。私も誤解していました。とても参考になりましたので、良ければぜひ。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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