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大学、冬の時代の生き残り戦略例
『地方私立大学の生き残り戦略』の立案!
私は最近「大学の起源」や「私大の創立」
などを投稿をしてきましたが、
「教育」「研究」「存在意義」だけでなく
「ビジネス」「経営」という生々しい側面も
大学は考えていかなければならない。
お金がなければ、閉校に追い込まれる…。
そこで本記事ではアクセンチュアという
総合コンサルティング会社の選考試験で、
グループディスカッションとして
出題されたケース問題を取り上げます。
(下にリンクを貼ります。
興味のある方は引用元記事をぜひ!)
(ここから引用)
『問題:地方私立大学の役員として、
大学側の立場から改革案を立案する。
現行法の変更などは行わないものとします。
大学の規模は、1学年300人程度。
ブランド力は低く、偏差値も低い、
地方にある「A大学」を想定しています。
なお、この問題において「生き残る」とは
長期的に収益を挙げ続けるものとします。』
(引用終わり)
…さあ、読者の皆様なら、どう考えて、
どんな経営戦略を進言しますか?
コンサルタントになった気分でぜひ!
以下は、その考え方の例です。
まず、そもそもの立場の確認。
今回は「文部科学省の役人」として
外部から第三者的に考えるのではない。
「大学の役員」として、
内部から経営当事者として考える。
「現状分析」から進めていきます。
≪ビジネスモデルの現状分析≫
大学経営はどのようなビジネスモデルで
成り立っているのか?
売上の大半は「授業料/入学金/受験料」。
◆授業料:100万円
◆入学金:30万円
◆受験料:3万円
仮にこのように想定した場合、
この3つのうち、どこで収益を取る?
もし受験料で授業料と同じ収益にするなら、
定員の33倍以上の受験者数が必要…。
これは、現実的ではありません。
「長期的に」「定員以上の学生」を確保し、
授業料によって収益を成り立たせる…。
その王道の方策をこそ考えていくべき。
≪ターゲットの確認≫
では、大学ビジネスの顧客とは誰か?
①高校生:メインターゲット(浪人生含む)
②留学生:海外から日本の大学に進学
③社会人:最近は社会人入学も多い?
④シニア:定年退職後に通信などで入学?
このうち、一番マーケットが大きいのは①。
不確定要素の多い②③④を先に考えるよりも
①を軸に、財政のめどが立ってから、
②③④の可能性も検討するのが現実的です。
≪ターゲットの競合≫
日本の高校生の大学進学率、約50%。
…彼らはなぜ大学に進学するのか?
…保護者はなぜ進学させるのでしょう?
進学理由を想像します。
「機会費用の損失/将来得られる利益」。
これを、天秤にかけている。
「4年分の学費と時間を払ってでも
進学する方がメリットが大きい」!
そう判断すれば進学する(させる)はず。
しかし「たとえ進学できたとしても
就職に有利にならない」と判断されたら、
専門学校や高卒就職を選択するはず…。
となれば、
「就職に有利になる教育内容や制度を
学内で整えて、送り出す」ことができれば、
「本来は専門学校や高卒就職を選択する層に
対してもアプローチが可能」になる。
…すなわち、ターゲットにできる!
≪大学同士の競合≫
もう少し「大学進学の目的」を分析します。
①大学教育、学歴、資格などを得ることで
よりよい「雇用機会」を獲得するため
②「研究者」になるための足掛かりのため
③「モラトリアム」の確保・社会勉強のため
この三つが、大学進学目的のメイン。
だが②研究者志望者はそんなに多くない。
東大や早慶ならともかく、ブランドもない。
③も、長引く不況で減ってきている。
となれば①の目的を叶える大学にすべき。
日本には「約800」の大学があります。
進学者はどんな基準で大学を選ぶのか?
①学費(高い/安い、国公立/私立)
②立地(都会/地方、地元か外部か)
③偏差値(高い/低い)
…この仮想問題で想定されている前提は、
『偏差値が低い地方の私立大学』です。
偏差値の高い都会の大学とは競合しない。
地方にある偏差値が低い私立大学、
そんな大学と「もろかぶりの競合」になる。
ならば、競合する他の大学よりも
より良い雇用機会を提供できて、かつ、
受験・入学しやすい制度を整備できれば、
入学者を確保できるのでは?
≪課題と課題解決≫
一番の課題は、メインターゲットの
「より良い雇用機会を得たい」という
ニーズを満たす教育・制度を整えること。
仮に学生が増えても、ニーズを満たさずに
卒業させては悪評が立つばかりです。
具体的にどうすれば?
…まず「就職実績を上げる」こと。
キャリア支援の充実、地元企業とのコネ作り、
インターン推奨、企業説明会の誘致。
実用的な教育をすれば就職しやすくなるから
語学やプログラミング教育も充実させる…。
このような施策が考えられます。
「入試・入学などの制度改革」については、
「4つのPの分析」から考えます。
①「P」roduct:教育内容は?
ビジネスに役立つ知識の提供をメインに
②「P」rice:学費、受験料、入学金は?
トータルで増加するなら、減額の可能
③「P」romotion:周知徹底は?
大規模なキャンペーンを実施して告知
④「P」lace:場所は?
共通試験を利用して全国で受験可能に
このような施策を行えばいい。
≪実際に打ち手を取捨選択≫
以上を踏まえて、打ち手を絞るとすれば?
以下は、その打ち手の例です。
◆特徴ある「ビジネス専門学部」を開設!
◆就職できる地方私立大学ブランド確立!
◆受験しやすいよう受験料や入学金減額!
◆まず学生を集め就職実績を上げていく!
◆留学やプログラミング等を必修化する!
◆ビジネス知識を徹底的に教育する学部!
◆以上をプレスリリースし知名度を向上!
≪実際にこういう大学はあるのか?≫
いかがでしょうか。仮想の問題なので
「絶対的な正解」はない問題です。
読者の皆様はどんな手法を考えましたか?
しかしそもそも、現実にこんな打ち手を
取っている大学はあるのか?
…それが、あるんですよ。
例えば「秋田国際教養大学」です。
一年間の留学が必須、授業も英語。
国際化を意識した教育のプログラム!
例えば「金沢工業大学」。
キャリア支援が充実している大学です。
「就職に強い大学」というブランド確立!
しかし、そんな成功例の一方で、
留学生をがんがん入学させて学費を稼いで、
不法就労の温床となっている大学もある…。
実際に登校している実態がない大学もある…。
約800校、その内実は、ピンキリなのです。
最後に、まとめましょう。
本記事では大学の生き残り戦略を考える
その道筋と回答例を紹介しました。
少子高齢化、人口減少社会の日本!
大学がどんどん潰れる冬の時代に突入する。
各地の大学は生き残るため、
どんな経営戦略を取るべきか?
ぜひ、読者の皆様も、
経営者視点で考えてみてはいかがでしょう?
※『上がりっぱの学費、増えっぱの大学』↓
『大学の起源 ~ウニベルシタスとギルド~』↓
合わせてぜひどうぞ!
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