ヴェルサイユの太陽

ルイ14世。人呼んで「太陽王」！

フランス絶対王政の権化とも言うべき存在。
「朕は国家なり」の言葉でも知られています。

『ヴェルサイユ宮殿』を作った男！
1638年に生まれ、1715年に亡くなった。

日本で言えば、江戸時代ど真ん中です。
江戸幕府の５代将軍、
『生類憐みの令』の徳川綱吉と
同じ頃の人（こちらは1646〜1709年）。
わずか四歳の時に国王に即位して以来、
在位は何と「72年」の長きにわたりました。

ただ、日本では漫画『ベルサイユのばら』の
影響もあってか、フランス革命の時の
「ルイ16世」や「マリー・アントワネット」
のほうが有名ですよね。しかし彼らのドラマも、
「太陽王」なくしてはありえなかった。

そこで本記事では、彼の生涯をまとめて
紹介していこう、と思います。
三つのテーマを決め、取捨選択して書きます。

◆なぜ「ヴェルサイユ宮殿」を作ったのか？
◆なぜ「太陽王」と呼ばれるのか？
◆なぜそこまで強かったのか？

では、順番に行きましょう。

≪なぜ「ヴェルサイユ宮殿」を作ったのか？≫

1682年に建てられた宮殿。
パリの南西、22キロほど離れたところ。
フランスが誇る、超有名観光スポットです。

…ここで一つ、疑問を挙げましょう。

「パリの中心地にあるんじゃないの？」

この宮殿は「権力」をあらわす建物。
江戸時代の日本で言えば「江戸城」ですよね。
パリのど真ん中に建てればいいのに。
そう思いませんか？

…実はこれには、ルイ14世の「トラウマ」が
影響している、とも言われています。

わずか四歳で即位したルイ14世です。
保育園で言えば、年少さん、年中さん。
政治などできません。保護者がいました。
実母アンヌと、マザランという宰相。

マザランは1602年の生まれですから、
ルイ14世よりも36歳も年上です。
先代のルイ13世、その腹心リシュリューの
信任を得て成り上がってきた男！
（ルイ13世・リシュリューと言えば
『三銃士』の重要キャラでもあります）

このマザラン、ルイ14世の実母と
「非常に仲が良かった」。
王様はルイ14世、まだ小さな子ども。
摂政は、その母親のアンヌ。
その補佐、母親と仲が良いマザラン。

この三者で政治を始めるわけですけれども、
貴族たちから反感を買ってしまう。
なぜなら、アンヌはスペイン出身、
マザランはイタリア出身だったから。
王様の威光を笠に着て、
外国出身者、よそものが威張っている…。

反乱が起きました。1648年～1653年。
「フロンドの乱」と呼ばれます。
折りしもヨーロッパでは
「三十年戦争」が終わった頃。
戦争にはお金がかかりますので、
重税を課されていた。不満もたまっていた。

1648年、当時10歳のルイ14世。
反乱軍はパリを包囲して、
彼の寝室まで侵入してきたそうです。
10歳、小学四年生くらいのルイ14世。
寝たふりをして難を逃れた、と言いますが、
めっちゃ怖かったんじゃないでしょうか？

翌年、彼らは危険なパリを一次退去して、
パリの郊外へと避難します。
いきなりの疎開！
殺される恐怖、空腹、寒さ、苦難…！

そうなんですよ、この時のトラウマが、
後にパリから離れた場所に宮殿をつくらせる
一因になったのでは、と言われているんです。

≪なぜ「太陽王」と呼ばれるのか？≫

力が無ければ、国王と言えども、やられる。
アンヌやマザランたちはそう考え、
とにかく「国王の力」を増やそうとします。

力を持つには、強い後ろ盾が必要。

マザランはスペイン王フェリペ四世の娘と
ルイ14世を婚約させていきます。
しかし実はこの時、若き国王は、
「マザランの姪」と恋仲になっていた…。

「俺はこの娘と結婚したいんだ！」

断固たる決意を見せるルイ14世に宰相は、

「国のためです、あきらめなさい！」

と無理やり説得、姪と別れさせました。
まあ、政略結婚ですね。
1660年、22歳の頃に結婚式が行われる。
それで安心したのか、
翌年1661年に、マザランは死去します。

口うるさい保護者がいなくなった。
ルイ14世は「これからは一人でやる！」と
宣言して、親政を開始していきます。

例えて言えば、これまでは
何人かの星が共同で政治をしていた。
これからは太陽系の如く一つの恒星が
他の惑星をぐるぐると回すようなもの。

太陽は一つ。唯一無二です。

ルイ14世は「バレエ」が大好きでよく踊る。
しかも名人だと言われていました。
「太陽王」という異名も、彼がバレエで
「太陽神アポロン」を演じたことから
つけられた、と言われています。

ただこれは外面的な話。心の中では、
「俺こそがこの世の太陽だ！」という自負が
あったのではないでしょうか？

◆「朕は国家なり」＝俺こそが国の太陽
◆「フランス文化は凄い」＝照らし続ける

それを体現したのが、ヴェルサイユ宮殿。
宮殿に入り、最初に見えるのは「太陽門」です。
太陽の冠を身に付ける絶対君主をイメージした
オブジェが、入る者を見下ろしています。

≪なぜそこまで強かったのか？≫

親政を開始したルイ14世は、
いきなり衝撃の人事を発動しました。
マザランの腹心だったフーケという大蔵卿を
クビにした。私腹を肥やした、という罪で。

代わりに、フーケのライバルであった
コルベールという男を財務総監に起用。
この人が実に有能でして、
戦争続きで破産寸前だった国家財政を、
税金と貿易をうまく運用、復活させます。

軍事面でもルーヴォワ侯という
優れた軍政家を見出し、起用していく。
貴族たちに頼らない、国王が直接任命する
「直属軍」を作り上げる！

外交面ではユーグ・ド・リオンヌという
凄腕の外交官を重用しました。
彼は複雑なヨーロッパの外交を
見事に斬り分け、フランスの国威を高める。
（ルイ14世の結婚話を成功に導いたのも
彼の功績だと言われています）

財政のコルベール！
軍事のルーヴォワ侯！
外交のリオンヌ！

どんなに強い国も、動かすのは人です。
そしていつの世も強いのは、人事権を持つ人。
優れた人材を手足の如く働かせたルイ14世は、
史上最高の力を手にしていきました。

最後にまとめます。

本記事ではルイ14世について
三つのテーマに絞って書いてみました。

…しかし太陽は、自然の恵みをもたらす半面、
その灼熱で人を焦がすこともある。
ルイ14世は、いわば「独裁者」。
にらまれたら政治生命が終わる。焦げる。
ヴェルサイユ宮殿は、臣下たちから陰で
『黄金の刑務所』とも呼ばれていたそうです。

宗教面でも、カトリックへの改宗を強制。
優秀な人材が国外に逃げ出すことになります。
度重なる外征によって、
周辺諸国は多大な被害をこうむりました。

※例えばドイツのハイデルベルクは
ルイ14世の侵略で壊滅的な打撃を受けています↓

次の次の国王、ルイ16世の時代の
「フランス革命」で、国王は処刑されます。
その遠因は、先々代の太陽王ルイ14世の
あまりに強すぎた光と熱にもあるようです。

さて、読者の皆様はどう思われましたか？
…皆様の組織では「太陽王」のような
灼熱の絶対君主は、いませんか？