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90年代初頭に天国のドアが意味したこと 〜 ガンズ・アンド・ローゼス 「Knockin’ On The Heaven’s Door」(カバーバージョン)

中学生のころ、日本のロックになじみ始めてきていました。そうなってくると今度は本場のロックに興味が移ってきます。

今振り返れば1992年という時期はヘヴィメタル・ハードロックの最大の隆盛期であり、逆の視点から言えば徐々にシュリンクするジャンルの最後の花火の年でもありました。当時の若者はそんな時期に、この音楽に夢中になっていたのでした。

そんなある日、あるバンドがアルバムを出すという情報が入ります。しかも2枚同時発売というじゃないですか。

何処の世にも情報が早い少年たちはいるもので、いち早く2枚とも購入した友人がいたんですよ。彼からアルバムを借りたのが、このバンドとの出会いでしたね。

このバンドとは、ガンズ・アンド・ローゼス。
アルバムは「Use your Illusion」というタイトル。

2枚のアルバムは黄色と青に色分けされておりまして、黄色の方はやや攻撃的な構成、青はややメロディアスな楽曲が並ぶ構成。

どちらかというと、この青の方に惹きつけられまして、出会ったのが今回ご紹介する楽曲です。

Knockin’ On The Heaven‘s Door

カバー曲とは知らず聞きまくっていたのを覚えています。

当時は、湾岸戦争があったり、東欧の内戦があったりと、時代が大きく動いていた時期でした。ですので、歌詞を読んで、「ああ、湾岸戦争に行った兵隊の話かな」と思ってました。

湾岸戦争はベトナム以来、本格的にアメリカが主軸となって参戦した戦争で、パトリオットミサイルとか当時の最新兵器が空を飛び交う映像がやけに印象に残っています。日本は、バブル崩壊直前で、戦争開始時期はまだその影響もさほどなかったように思いますが、これをきっかけにして、音楽のシーンはだいぶ暗いものになっていってしまいました。

この曲はボブ・ディランのアルバム『ビリー・ザ・キッド』が初出であるように西部開拓史のガンマンの話。

「まさに、今、生命が燃え尽きんとするその刹那、彼の目には天国のドアが映っていた」

というストーリー。

でも、よく考えると、湾岸戦争の事だと思って聞いても、内容に大きなずれは無いですし、アメリカの南北戦争や、第2次世界大戦、ベトナム戦争のことを歌っていたとしても、齟齬がない内容。

ということは、この歌詞は普遍的であるということかなと思います。普遍的な時代を越えた見えないパワーをもった歌詞であり、曲なのだなと。。時代を越えた鎮魂歌にも聞こえます。

歌詞は非常に短いです。

ママ、このバッジを外してくれないかもう俺には必要ないあたりは暗くなってきて、何も見えなくなりつつある。天国のドアをたたいているような気分だ

Bob Dylan「天国のドア」一部意訳

シンプルであるがゆえに、わかりやすく、、伝わりやすい。普遍的な魅力のある楽曲だと思います。

そして、あの時代、どんどん音楽の音が、楽しみよりは、怒りになっていっていくのを目の当たりにして(ポップなバンドがどんどんヘヴィになっていくのを悲しんでいたりして)、なんとなく世界が暗くなっていくのを感じていました。

そういう意味では、「天国のドア」の暗喩として、以下のふうにも捉えられます。

90年代前半、「音を楽しむという意味の音楽」が本来の意味を失って、死にかけていた。

つまり天国のドアとは、「本来の音楽の意味」が失われていくときに「音楽」というもの(の魂)が見ていた最後の風景のことだったのかもしれないと感じるのです。


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