マインドフルな脳科学：マインドフルネスはワーキングメモリを改善する!?
こう暑いと
脳もうまく働いてくれず，
大事なことをうっかり忘れてしまう今日この頃．
（私だけ??w）
そんな，
“うっかり八兵衛”の
（水戸黄門世代にしかわからないw）
“うっかり”に超関係する
『ワーキングメモリ』
について，
今回は脳科学的観点からメモ．
◆ストレスと認知機能の関係
課題が殺到したり，
不快な出来事に遭遇したり，
身体に痛みを感じたりすると
（＝ストレス）
脳内では，
側頭葉深部にある
扁桃体が活動し，
ネガティブ感情（不安・恐怖・怒り）が出現する．
さらに，
その扁桃体の活動信号が
神経線維連絡をしている
前頭前野に瞬時に伝わり，
社会生活に重要な認知機能が集約している
前頭前野の機能が低下してしまう．
（なおさら，感情コントロールは大事ですね）
では，
前頭前野では
どのような認知機能が営まれているのか??
◆前頭前野の認知機能
◎神経認知機能 neurocognition
・注意
・記憶
・ワーキングメモリ
・遂行機能（実行機能）など
◎社会認知機能（社会的認知）social cognition
・心の理論 （theory of mind：ToM）
・表情の感情認知
・EQ など
このように，
前頭前野は
思考や判断などの
高次精神機能に関与しており，
大脳の中で
最高次の立場に立つ
「統合系」としての役割を担う．
前置きが随分と長くなりましたが，
前頭前野の認知機能の１つである
ワーキングメモリについて，
◆ワーキングメモリ（Working Memory）
認知心理学者であるBaddeley（1986;1992）が提唱した概念．
作業記憶，作動記憶とも訳される．
中枢は前頭前野背外側部（DLPFC）
ワーキングメモリ：
意味のある情報を一時的に保持しながら，目的のためにその情報を統合・処理する機能のこと．
つまり，
”一時的に保存できる記憶の量”のこと．
さらにわかりやすく言うと，
”今，やらないといけないことの記憶”
みたいな．
◆ワーキングメモリと日常生活
対話や読解では,
言葉の意味を追いながら,
すでに聞いた内容や
読んだ内容を
心の中に保持しておく必要がある．
つまり，
ワーキングメモリがうまく働いているので，
会話も弾むし，
ドラマの展開に夢中になれる．
しかし，
ワーキングメモリがうまく働かなかったり，
容量が少ないと，
読書やテレビ，会話に集中できなくなる．
（たまに会話がかみ合わない人に遭遇したりしますが...）
◆マインドフルネスがワーキングメモリに及ぼす影響
Mrazekら(2013)の研究について，
以下にざっくり要約．
目的：2週間のマインドフルネストレーニングがマインドワンダリングを減らし，認知機能を改善するかどうかをランダム化比較試験（RCT）で検証．
方法：48名(男性14 名，女性34 名；20.83±2.05歳) をマインドフルネストレーニング群(26名)と 健康栄養学クラス群 (22名)に無作為化．
結果：マインドフルネストレーニング（45分を4回/週，2週間）は，読解能力とワーキングメモリを改善すると同時に，マインドワンダリング*の発生を減少させる．
結論：マインドフルネスは認知機能を改善するための効果的かつ効率的な技術である．
*マインドワンダリング(Mind-wandering)
意識が目の前の課題から注意が逸れて心ここにあらずの状態になり，目の前の作業とは無関係なことを考え始めてしまうこと．
ワーキングメモリは
学業・ビジネス，
プライベート，
あらゆる場面で必須の認知機能と思いますので，
興味深い研究報告です．
◆文献
1）Mrazek M, et al: Mindfulness Training Improves Working Memory Capacity and GRE Performance While Reducing Mind Wandering. Psychol Sci 24(5):776-81,2013.
https://doi.org/10.1177/0956797612459659
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