【六十五日目】ゆらりゆられて
ぼくたちはゆらりゆられて生きていく。
一瞬の快不快をそのまま好き嫌いだと思ってしまって、口をつぐんでいる。
ボックスシートに座って、後ろ向きに列車が進んでいくとき、
どうしようもない虚無感に襲われる。
前進しているのに、後退しているみたいな感覚。
車窓には、緑が映ることの方が多いはずの国で、
どうしてぼくたちは毎日、うすぐらいグレイの世界を見ているの?
憂鬱さえ、ホップステップ飛び越えて、あっという間に明日。
ぽっ、と光を灯す。
秒針は忙しなく回る。
僕たちはゆらりゆられて生きていく。
2021/3/9/19:35 ヒサノエイ